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まるでモネの絵画、もののけ姫の世界〜秋田県能代市「風の松原」

秋田県能代市に「風の松原」という日本一大きい松林があります。ちょうど昨年の今ごろ、私たち夫婦は観光に訪れました。白神山地が近いこともあり、緑の色合い、雰囲気、まるで「もののけ姫」やフランスの印象派画家クロード・モネの世界のような美しさでした!

この松原は、すぐ隣に広がる日本海からの厳しい海風、砂、津波から、住民の命と暮らしを守るために、今から300年も前からコツコツ整備されてきた素晴らしい松林です。人命を守るためにつくられたこの松原。イージス艦を設置する場所として候補に挙がっていたとか。

自衛は大事ですが、歴史や役割を知れば、壊すことなどできないはず。今は自粛で観光に行けませんが、落ち着いたらぜひ一度行ってみて欲しいです!そんな想いから、今回は「風の松原」を写真と共にご紹介したいと思います。


1. 海風によって傾いた松

まずは「風の松原」の基礎知識について、少しお付き合いください。イージス艦を検討するくらいですから、ものすごく広大な松林です。能代市のホームページによれば、東西幅1km、南北総延長14km、面積は約760ha、東京ドーム163個分です。そして、この松林がつくられるまでのストーリーがすごいんです。

古くからこの地域は、海岸の砂が海風によって移動する飛砂(ひさ)によって、家屋や農地が埋没したり、川が塞がれたりして、大きな被害が出ることがありました。

今から350年前、江戸時代前期のことです。この地に住む長尾祐達(ながお ゆうたつ)というお医者さんが、砂防林をつくろうと提唱しました。そしてそれから40年後、海運業を営む越後屋太郎右エ門(えちごや たろうえもん)と、今でいう村長の役割をしていた村田久右エ門(むらた くえもん)が、なんと自費でクロマツを植えて育てました。ちなみにクロマツは、砂防のために使う代表的な木なのだそうです。

以降、この砂防林を自分のお金・時間・物資、犠牲にしてでもつくろうとした人たちにより、断片的に植林は続けられてきましたが、気象による災害や、住民が松を燃料に使ってしまったりで、一度は荒れてしまったそうです。

(松原をサイクリング中の夫↓)

江戸時代後期に入ったところで、栗田定之丞(くりた さだのじょう)というお役人が、研究・観察を重ね独自に植林法を生み出しました。彼は集落の人たちにも植林をお願いして回り(タダで手伝ってくれというので「さだのじょうで」はなく「タダのじょう」と呼ばれていたらしいです。いやそういうのいいから手伝って!!涙)村人の協力もあり、砂防林はつくり続けられ、35年後には76万本、その25年後には30万本と植栽した木は育ち、現在まで受け継がれています。

いやはや、壮大なストーリーです。現代でいえば、有志によって断片的に行っていたことが、行政が介入して事業となり、安定したというところでしょうか。「風の松原」という名前になったのは、1987年(昭和62年)のことだそうです。

この歴史を知ってから、海風で傾いた松を見ると感慨深いものがありますね。長い間、人命と暮らし、経済をも守ってきてくれたんだなぁと思うと、敬意すら感じられます。松林の中には、サイクリングロードがあります。自転車は、松原のすぐ隣にある「風の松原案内所」(サンウッド能代)で借りられますので、ぜひ散歩してみてください。

次はお待ちかね、モネの絵画、もののけ姫の世界のような景色をご覧ください。

2. シシガミ様が出てきそう!

松林を散策していて一番感動したのが、憩いの広場の近くにある水場です。ひと目見てこう叫びました。

シシガミ様が出てきそう!

シシガミ様って、「もののけ姫」に出てくるあのトナカイとマントヒヒを足したような生き物です。

ちなみに、シシガミ様がどいつかわからんという人は、この予告編動画にチラッと出てきます(↓)シシガミが住む森のことを英語で「Spirit of the forest」と表現されていますがカッコイイですね。

↓ 苔とかこんな感じです。まるでフランスの印象派、モネの絵のようです。もしよかったらPCの画面で見てみてください。(もしくはスマホ画面を横に)水面の美しさに心を奪われました。

3. 突如として現れる守り神、大森稲荷神社

松原の中には神社もあります。大森稲成神社です。能代市は林業、商業が盛んなので、商売の神様、山の神様を祀っているそうです。この神社も、飛砂により何度も修理されたそうです。砂の被害って、本当に大変なのですね。

ほとんど白神山地ですね!自分の中の野生が、健康を取り戻して喜ぶような生命力を感じました。都内にも広大で美しい林はいくつかありますが、生命力が全然違うというか、公園に生えている木でさえ、息吹を感じられるようでした。

それにしても、もののけ姫のような池にしろ、山の中の神社にしろ、オタクに刺さりそうな設定ですね。

4. 能代港と、はまなす画廊

松林を抜けると、能代港に出られます。ここからの海風が、砂を運んできたのですね。能代港には、おもしろい防波堤があります。「はまなす画廊」です。なんと全長1.2Km、200点以上の絵が描かれているのです。

↓ 展望台のそばには風車が

能代沖では、1983年(昭和58年)に大きな地震がありました。日本海中部沖地震といいます。当時、日本海側で発声した地震では最大級で、津波の大きさは10m以上だったそうです。津波による死者がほとんどでした。

私は、両親が秋田の出身なので、当時の様子を聞くと、立っていられないほどで、校庭がぐるぐる回ったといいます。バスの運転手は、子どもたちを乗せて、後ろから迫る津波から、全力で走らせて逃げたと聞きます。

港のそばには、今でも慰霊碑があります。

5. まとめ

「風の松原」がある能代駅は、ローカル電車を乗り継ぐと少し遠いですが、秋田駅から高速バスが出ているので、それに乗って行くとあっという間です。

港町の雰囲気が漂う小さな町です。商店街はシャッターが下りている店が多く、少し寂しい感じもありましたが、イオンのそばには、「金勇」(かねゆう)という名前の建築物が国の重要文化財にもなっている料亭もあり、観るものもけっこうあります。

私たちは、角館などほかの場所も観光してから、能代に向かったので、秋田空港を使いましたが、直接、能代に行く場合は、大舘能代空港もありますので、そちらも検討してみてください。

それでは、最後までお読みくださりありがとうございました。

参考サイト
風の松原(能代市役所ホームページ)
風と水の郷あきた(あきた森づくり活動サポートセンター総合情報サイト)
栗田定之丞
国登録有形文化財 旧料亭 金勇(かねゆう)

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