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兎がほざく

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ショート•エッセイ、140字以内。毎日投稿、どこまで続く?
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2023年10月の記事一覧

兎がほざく941

兎がほざく941

学生の時に本の中で見た、フランスの香水の町グラースの老調香師の風貌を時々思い出します。

毎日香りだけを相手にする男の人生の芳香が写真に漂います。

彼の調合した作品は世界の男女の私生活の機微に一役買うのです。

そして香水瓶に彼の名前が記されることはないのです。

平和よ、この立体は丸いのか四角いのか? 【兎がほざく 番外】

平和よ、この立体は丸いのか四角いのか? 【兎がほざく 番外】

問題をひとつの立体にたとえると、前から見れば円形でも、横から見れば四角形ということがあります。
おたがいの立っている場所によって見える形がちがいます。
そうするとお互いの意見がどうしてもかみ合わなくなります。
さらに実際の問題は、立っている場所によって二通りではなくて何通りにも見えることがあります。
しかも時間によって変化してゆくとすると、さらに見える様相は複雑です。

今起こっている国際紛争は、

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兎がほざく940

兎がほざく940

自分がもののけの仲間らしいと気づいてからいろんなことが腑に落ちました。

お店に入って着席してもだいぶんしばらく店員さんの声がかからない、とか。

一生懸命話していることが全く相手に聞こえていない、とか。

いっそ力の限り化けてやろうと思います。

Bakeratta!

兎がほざく939

兎がほざく939

もののけは純粋です。
自分の情念だけに忠実です。

自分の情念を人に知ってほしいから化けて出ます。
その意味では人に対する希望を失っていないのです。

買収もされません。

生きている人でこんなに純粋な人がいればきっとのけものでしょう。

もののけ、のけもの、ここにも。

兎がほざく938

兎がほざく938

舞踏会の手帖というフランス映画があります。

手帖は舞踏の相手の名前や住所を書くものです。

老齢の女性が数十年前の手帖にある相手を訪ね歩いて相手それぞれの流転を知ります。

今は悪事を手掛ける男が往時を思い出す瞬間の表情。

人の魅力は結果にあるのではないのです。

兎がほざく937

兎がほざく937

商人には商人の生活があるように先生には先生の生活があります。

みんなお互いさまですからぼくは生活の実態には敬意を払ってそっとしておきます。

家元制も師弟制度も生活の必要でしょう。

ぼくは世間ずれのせいで表も裏もわかっています。
それでカマトトを決めています。

兎がほざく936

兎がほざく936

経験や考えを言葉にする時に超える一線。

経験や考えそのものとは全く別物の音や字の連なりが生まれます。

言葉に代わるというより化けるという方がしっくり来ます。

この化けるところに人にとってだいじな秘密がありそうです。

化ける前と化けた後。
その間の意欲と発声。

兎がほざく935

兎がほざく935

空気の薄い高原に暮らす人がいるように、人とのつながりの少ない環境で暮らす人があってもいいのです。

つながりの数と濃さとはまた別物です。

一度しか会えなかった人との短い時間が一生の思い出になることもあります。

たぶんどういう出会いだったのかがだいじなのです。

兎がほざく934

兎がほざく934

人の身体は右左で異なっています。

心臓は片方に一つです。

どちらが主でもう一方が従だという人もいますが、主従でなくただ異なるという言い方が合っていると思います。

左右異なるからこそ拍手も成り立つのです。

そして自分と他者とは左と右のようなものなのでしょう。

兎がほざく933

兎がほざく933

ものを書くというのは手紙を書くということです。

手紙を書くのはたぶん手紙がほしいという気持ちもあるのです。

傷つくような手紙が届くこともあるのはわかっています。

でも言葉の往復そのものがだいじなのです。

手紙のやり取りは言葉自身にとっての生き甲斐のはずです。

兎がほざく932

兎がほざく932

歳を重ねると自分の心のバイオリズムのようなものが少しだけわかります。

絶望というものを窮め尽くせるほどぼくは元気がないのでいつか絶望にも疲れるのです。

その疲れは一瞬の諦めをもたらします。

そして諦めを通り過ぎるとまたじたばた動き出すのです。

明日は明日の風。

兎がほざく931

兎がほざく931

黒と白とどちらが好きか?

砂糖は黒砂糖の方が好きです。
コーヒーはいつもブラックを飲みます。
胡麻も黒の方がいいです。
靴は持っているのは黒ばかりです。

なんとなく自分は白の方が好きだと思っていましたが具体的には黒の方ばかり挙がります。

けっこう意外です。

兎がほざく930

兎がほざく930

ウリやスイカはナイフとフォークとで切り分けて食べると汁が散りません。

でもその様子はその大ぶりの果物に似合わないです。

そもそも汁が散ると困るような身なりで食べようとするのがおかしいのです。

こういうことは昆虫たちが知らないで済んでいる人間の苦労なのです。

兎がほざく929

兎がほざく929

ほしい本の探しやすい場所。

通販は書名や著者名がわからない本はあまり探しやすくないです。

神保町の国文専門の古書店はその分野の本を探しやすいです。

ネットやSNSでその場所にたどり着きさえすれば、という店がほしいです。

画廊のように作者に書棚を貸す店でもいいです。