中高一貫校を追い出された話②

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https://note.com/utacong/n/ne01445dc0351

そんなこんなであれよあれよと小学校卒業を迎え、唐突に訪れた竹馬の友との別れをほぼ一方的に惜しみ、およそ学力レベルの見合っていない、某中高一貫女子校の門を叩くことになった。

(導入部分なので誇張と脚色を存分に使わせてもらうならば)地獄の日々の幕開けである。

嵌められて担がれてノリで入学した学校だったため、下調べも何もあったものではなかった。取り急ぎ学力で大きなビハインドがあることくらいは自覚していたのだが、他にも色々見合っていないことが入学初日から発覚した。

まず、挨拶が、「ごきげんよう」

ごきげんよう、て。

ちょんととがった顎にすっと通った鼻筋、小さな顔の半分を占める大きな瞳、その瞳の中には数多の星がきらんきらんと輝き、瞳を縁取るまつ毛は上下共々バッサバッサ!な金髪縦ロール系女子達が交わすのならまだしも……黒髪おさげメガネが半数を占める女…子…の集団が交わすごきげんようの破壊力たるや。

そして例に漏れず黒髪センター分けメガネ猿だった私は、自身の口から解き放たれるごきげんようの声色に言ってるそばから眩暈がした。否、戦慄した。

カトリック系の学校だったことも入学してから知った。朝礼時、給食時、下校時、他にも細やかなタイミングで都度都度お祈りを捧げなければならない。十字を切り、手をそっと胸の前で組み、祈りを捧げ、アーメンする。思い返せば悪い時間ではなかったと思うのだが、しかし無宗教な人生を送ってきた私にとってはこれも一朝一夕にこなせるようなものではなかった。

他にも今思い返すととてもシュールだなと思う文化として、スモックの着用があった。スモックとは主に幼稚園児が着用している、洋服の上に着る遊び着のようなもので、クレヨンしんちゃんなんかでも着ていたと思う。

幼稚園児を象徴するスモックを華の女子中高生が登校してから下校するまで何の疑いもなく着せられていた。柄はピンストライプ、カラーは淡いピンクと薄いブルーの二色から選べ、各自が朝の気分で好きな色を羽織る。

ピンクなんてダサい青一択だ、と青を選べばイケてるグループの子達(学年に少数ながら存在していた)は揃ってピンクを着ており、それがどうにもオシャレに見えて、少しでも近づきたくて翌日はピンクを着てみるのだが、自信満々に覗いた鏡にはこの世で一番ピンクが似合わないのではと思われる黒髪センター分けメガネ猿が映っていてやはり戦慄した。

イケてる子たちは、ボタンをすべて外し、肩で風を切りスモックをなびかせ闊歩してみたり、襟抜き気味に着てみたり、腰に巻いてみたり、腕を通さず羽織ってみたりとそれは多彩なバリエーションでスモックを着こなしており、またそれがものすごく素敵に見えた。羨望の眼差しを送りつづけた。

今となってみれば羽織るくらいなら脱げばいいのだが、それをしないくらいには行儀の良いお嬢様たちの集まりだったのだと思う。

だいぶスモック脱線をしてしまったが、このように文化の違いを突き付けられた場面は枚挙にいとまがない。しかしそれでも住めば都、特に気の合う友人に多く恵まれたこともあり、日々の学校生活はそれなりに楽しいと思えるものになっていった。

話が合い、趣味が合い、なんでも分かり合えるとすら思っていた友人たちとわたしの間にはしかし、唯一にして最大、且つ致命的な相違点があった。それが、学力だった。

そもそもの学力に開きがったにも関わらず、わたしは努力を怠っていた。友人たちが予習復習に励む間、わたしはというとあろうことかインターネットにどっぷり浸かっていた。時代が時代、インターネットも走りのころで、そこには広大な未知の世界が広がっていた。

SNSもブログもない時代、やりとりの主流はメール、チャット、掲示板。懐かしのiMacを起動しダイアルアップ接続、HTMLを駆使して個人ホームページを作り、そこに趣味の合う顔も知らない仲間が昼夜集い、チャット上で深夜まで文字の会話を交わす(この趣味はデジモンだったわけだが、これはまたどこかで触れたい)。これがわたしにとってすごく楽しかった。勉強なんてそっちのけだった。

両親もそれはそれは口を酸っぱくして勉強するよう促したが、わたしは聞き入れなかった。業を煮やした両親がパソコンを隠せば、わたしはインターネットカフェに赴いた。当時のインターネットカフェはパソコンとインスタントコーヒーが置いてあるだけの会議室のような空間で女子中学生が出入りするような場所ではなかったのでこれは本当に異常な行為だったと思う。

結果、友人たちとわたしの学力の差は、もう手の施しようがないくらいに大きく大きく開いてしまっていた。


…脱線に脱線を重ねてしまったので、明日に続きます。明日で終わります。短くまとめるリハビリも並行したいです。

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