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【書評】サッカー戦術本「戦術脳を鍛える最先端トレーニングの教科書」の解説と所感 Vol.2

溢れ返った情報に目が眩み、どれを選択すれば良いのか分からなくなる

選択したとしても、それが緻密に、詳細に記してなかったとすれば、また暗闇に手を伸ばさないといけない

昨今、書店のサッカー本コーナーでも、現場でも溢れ返ってる言葉がある

「戦術的ピリオダイゼーション」

しかし、上記のトレーニング理論を完璧且つ具体的に説明できる人はどれくらいいるのだろうか?

本書では「戦術的ピリオダイゼーション」を具体的に、分かりやすく落とし込んでいる

他の書籍では見れない、具体的なトレーニング方法や、チーム原則まで細かく記されているのだ

Vol.2では実際のトレーニングメニュー構築の考え方を解説していく

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モルフォサイクルとは

戦術的ピリオダイゼーションでは「モルフォサイクル」と呼ばれる1週間のトレーニング負荷調整のルーティンがある

試合から試合の間が7日間だった場合の例を挙げていく

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それでは、曜日毎のトレーニングにフォーカスして解説していく

月曜日:完全オフ

試合の次の日は基本的にオフとなり、心身のリフレッシュを図る

火曜日:アクティブリカバリー

■トレーニングされる原則:特になし

■〈フィジカル〉強度→低い、持久力→低い、スピード→低い

■〈トレーニング構成〉レスト→とても長い、時間→60分

■選手の数・フィールドサイズ→特になし

■複雑性→ 低い

■戦術的疲労度→低い

オフ明けの火曜日はフィジカル強度や負荷を低レベルに設定することが重要である

瞬間的な強度・持久的な耐久度、瞬間的なプレースピードのいずれにせよ負荷を下げたメニューを心がける

この日のトレーニングの目的は、試合での疲労やダメージを身体的にも精神的にも回復させることである

ここで留意することは、身体的に負荷を下げたメニューだとしても、精神的に負荷が高いメニューは、選手の回復度が低くなってしまうということだ

コーチングでは、選手を急かしたり、ミスを咎めたりせず、リラックスした状態でプレーできるような声かけが必要である

【具体的なオーガナイズ】

○トレーニング時間は60分

○1セッションの時間は60〜120秒、プレー:レスト比→1:1

○リフティング、ボール回し、サッカーテニス

水曜日:パワー

■トレーニングされる原則:準原則/準々原則

■〈フィジカル〉強度→とても高い、持久力→低い、スピード→やや高い

■〈トレーニング構成〉レスト→長い、時間→90分

■選手の数・フィールドサイズ→1〜5人で狭いフィールド

■複雑性→ 低い

■戦術的疲労度→やや高い

試合から72時間近く経過しているため回復しつつあるが、精神的には完全に回復しきれてないことを考慮する必要がある

そのため複雑性は低くし、エキセントリック収縮の割合が多く起こる、ターンやジャンプ、シュートなど、瞬間的な強度が高いアクションのフィジカル要素を入れる

またゲームモデルの中の準原則/準々原則といったものがフォーカスされるのである

【具体的なオーガナイズ】

○トレーニング時間は90分

○1セッションの時間は45~120秒、プレー:レスト比→1:1〜1;2

○1セッションに参加する選手は2〜5名

○特定の準原則/準々原則にフォーカスした局所的なシチュエーショントレーニング

木曜日:持久力

■トレーニングされる原則:主原則

■〈フィジカル〉強度→高い、持久力→やや高い、スピード→低い

■〈トレーニング構成〉レスト→やや長い、時間→90分

■選手の数・フィールドサイズ→人数多く広いフィールド

■複雑性→ 高い

■戦術的疲労度→高い

1週間のサイクルの中で最も負荷の高いトレーニングの日になる

ここでの負荷とはトレーニングを終えた時に感じる疲労感つまり「戦術的疲労」のことである

また身体的にも複雑性の観点でも最も負荷が高いのは実際の試合なので、それに近いトレーニングを行う必要がある

1セッションあたりの時間は1週間のトレーニングの中で最も長くなり、人数もフィールドサイズも多くなる

また実際の試合に近付けるため、レスト時間は短く設定すると良い

○トレーニング時間は90分

○1セッションの時間は5〜15分、プレー:レスト比→3:1〜4:1

○1セッションに参加する選手は8〜11名

○特定の局面全体に焦点を当てたシチュエーショントレーニング

金曜日:スピード

■トレーニングされる原則:準原則/準々原則

■〈フィジカル〉強度→やや高い、持久力→低い、スピード→高い

■〈トレーニング構成〉レスト→長い、時間→75分

■選手の数・フィールドサイズ→1〜5人で狭いフィールドor8〜10人で広いフィールド

■複雑性→ 低い

■戦術的疲労度→やや高い

金曜日は負荷の高い木曜日のトレーニングから週末の試合へ向かうリカバリーとしての特徴もある

なので、戦術的疲労は抑えながら木曜日にでた課題や、今週のテーマについてシンプルなトレーニングを行う

この日にフォーカスされるスピードについては「プレースピード」と解釈される

そしてそれは選手の「判断→実行」のスピードを指す

と言っても難しいと思うので、本書では例を挙げている

例1)直線的なカウンターやアップダウンなどの動きが多く要求されるゲームモデルを採用するチームであれば、選手の物理的なスピードをが求められるトレーニングが必要
例2)トランジションのテンポが早くない、ゲームコントロールに重きを置くゲームモデルを採用しているチームでは、狭いスペースで判断スピードを上げるトレーニングが必要

則ち、チームのゲームモデルによって重視されるスピードが変わり、トレーニングも違ってくるのである

ただ注意するべきことは、ここでの「スピード」は水曜日にフォーカスする「パワー」とは全く違うということだ

つまり、ターンやジャンプなどエキセントリックな筋収縮の割合や、タックルなどの関節や腱への負担がかかるアクションは少なくする必要がある

○トレーニング時間は75分

○1セッションの時間は45〜90秒、プレー:レスト比→1:2〜1:4

○フォーカスするテーマが成功しやすい状況(フリーマンを入れるなど)を作り、その代わりに制限時間や競争形式を導入

土曜日:アクティベーション

■トレーニングされる原則:なし/セットプレーなど

■〈フィジカル〉強度→低い、持久力→低い、スピード→低い

■〈トレーニング構成〉レスト→長い、時間→60分

■選手の数・フィールドサイズ→特になし

■複雑性→ 低い

■戦術的疲労度→やや高い

土曜日のトレーニングは、翌日の試合に向けて心身のコンディションを調整することが目的である

負荷の観点からも、火曜日と同じように肉体的負荷を全て低いレベルに設定する中で、翌日の試合に向けて確認したいポイントをトレーニングする形となる

また、通常のトレーニングでは可能な限りメニューは被らず多様なものにするが、土曜日は逆に脳への刺激を極力避け、心身ともにリラックスしてトレーニングをすることが望ましい

○セットプレーなどの確認すべきプレーのトレーニング

○短い時間のミニゲーム

○ボール回しなどの基本的なエクササイズ

以上がモルフォサイクルでのトレーニングの考え方になる

サッカーの原則に傾けるのではなく、ましてやフィジカルコンディションに特化するのではなく、それぞれの融合を考えたトレーニングになる




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