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2023年の30枚

話すことなく僕はしゃべり、聞くことなく耳を傾け
13年目、2023年の音楽。

レフトフィールドが主戦場。ポストクラシカル、アンビエントやドローンをよく聴きます。以下ダイジェスト。Songwhipのリンクから各種音楽配信サイトにも飛べます。


Tirzah - trip9love...??? (Domino)

天才肌Tirzahの新作。インダストリアルなビートとピアノのループに彼女の気怠いヴォーカルが重なる。ドラムパターンは全編に亘って同じものが使われているストイックなスタイルだが、あまりそうは感じさせないのは彼女の手腕だろう。歌詞も同じフレーズや韻のループでアーティスティック。ローファイな録音やヴォーカルエフェクトもセンスが冴え渡る。間違いなく今年ベストの一枚。
#Leftfield, #IndiePop | Songwhip


Kelela - Raven (Warp)

こちらも才能あふれるKelelaの新作。アルバム一枚を通して一切隙のない完成度。Tirzah と比べると明快でメインストリームなダンスサウンド。どちらも甲乙つけ難く素晴らしい。上半期の時点では間違いなくベストだった。
#Electronic, #Funk/Soul | Songwhip


Viitasen Piia - Outo tyttö [Single] (Self-released)

敬愛してやまないViitasen Piiaの新曲。Texicalli Recordsを離れクラウドファンディングで新作アルバムの制作費を調達するようだ。アルバムに期待を膨らませる疾走感あふれる一曲。アルバム発売は2024年3月、アルバムを携えたツアーは4月以降の模様。3月だったらフィンランド取材のついでに観に行けたのだけど…。
#Folk, #Pop | Songwhip


7038634357 - Neo Seven (BLANK FORMS EDITIONS)

寄せては返す波のようなミニマルアンビエント+ヴォーカル作品。ヴォーカルも波にさらわれて消えていきそう。ノイズも心地いい。Corneliusにはこういう路線を期待していたのだが。アーティスト名の7038634357は電話番号だとからしいが大丈夫なのか。
#Electronic, #Ambient | Songwhip


SSIEGE - Beautiful Age (YOUTH)

幽玄で美しいアンビエント・ドローン作品。
#Electronic, #Ambient | Songwhip


Laurel Halo - Atlas (Awe)

ジャンルレスな才能を発揮するLaurel Haloの新作。DJセットでキレキレのダンスミュージックを披露したかと思えば本作は180度方向の違う音響アンビエント〜クラシカル。文句なしの傑作。坂本龍一が生前最後に残したプレイリストの一番最後に彼女の曲がリストアップされていたのを記憶している方もいるだろう。
#Electronic, #Ambient, #ModernClassical, #Experimental | Songwhip


ABADIR - Ison (SVBKVLT)

上海のBass MusicレーベルSVBKVLTから3枚。カイロのヘリオポリスで育ったABADIRは、敬虔なキリスト教徒の両親に連れられ様々な教会を訪れていたという。コプト教会、シリア教会、マロン派、ギリシャ正教会、カトリック教会などさまざまな宗派の聖歌がサンプリングされている。聖歌が持つ宗教的、歴史的な側面はさほど重視せず、あくまで音の響きや神秘性に着目して新たに創り上げられた存在しない讃美歌。
#Electronic , #Experimental | Songwhip


Gooooose - Rudiments (SVBKVLT)

上海のエレクトロニック・プロデューサー、グーーーーースによるパーカッシブなダンスミュージック。ロックダウン下の上海、自宅に籠らざるをえなかった状況で身の回りにあるありふれたもの物を改めて注意深く観察して本作に結びつけたそうだ。
#Electronic, #IDM | Songwhip


mmph - Harvest (SVBKVLT)

韓国出身、現在はロスに拠点を置くサウンドデザイナー・作曲家Sae Heum Hanのmmph名義によるアルバム。自己免疫疾患の寝たきりの闘病生活の中、自身が育ったソウルの音楽への希求が本作の原動力になったようだ。東洋的な弦やボーカルの響きと先進的なリズムパターンの融合。
#Electronic , #Experimental | Songwhip


Tzusing - 绿帽 Green Hat (PAN)

マレーシア出身Tzusingによるアルバム。シンガポール、台湾、中国、アメリカで育ったTzusingは上海でDJとして音楽センスを磨き、金庸の無錫小説にインスピレーションを得た2017年作品『東方不敗』でデビュー。本作は唐の時代(西暦9世紀頃)、不貞の象徴となった緑の帽子の物語や、中国で現在も続く道徳的なダブルスタンダードについて切り込んでいる。
#Electronic, #Techno | Songwhip


Actress - LXXXVIII (Ninja Tune)

この手の音楽を好む人はみんな聴いてると思うので今更申し上げることはない。令和最新版低血圧フロアミュージック。
#Electronic, #Downtempo, #Leftfield | Songwhip


Marina Herlop - Nekkuja (PAN)

前作から一年のスパンで発表された。呪術的なボイスと南インドのカーナティック音楽やボイスパーカッション「コナッコル」へのリスペクトなど、前作を踏襲しつつもオリジナリティを増つつよりメロディックになった一枚。
#Electronic, #Abstract, #Avantgarde | Songwhip


Saint Abdullah & Eomac - Chasing Stateless (Planet Mu)

イラン系カナダ人兄弟ユニットSaint Abdullahとアイルランドに拠点を置くEomacによるアルバム。中東のリズムやメロディーの再構築、過剰なディストーションで歪められたドラムと街の喧騒のコラージュ。
#Electronic, #Experimental, #World | Songwhip


Lau Nau - Aphrilis (Fonal records)

フィンランド孤高のアーティストLau Nauの新作。一人多重録音のヴォーカルと優しいピアノ、弦楽のハーモニーが美しい。今年はアンビエント〜エクスペリメンタル志向の『5×4』とこちらのクラシカル〜ヴォーカル路線の『Aphrilis』の2枚が発表された。
#Electronic, #Folk, #Experimental | Songwhip


Paavoharju - Yön mustia kukkia (Fonal Records)

アルバムタイトルは『夜の黒い花』。Lauri AinalaとOlli Ainalaの二人の兄弟を中心に結成されたフィンランドのグループ。廃屋で発見された100年前のガラスネガの写真に触発されたダークなドリームフォーク。
#Electronic, #Folk, #Experimental | Songwhip


caterina barbieri - Myuthafoo (LIGHT-YEARS)

2019年の前作も素晴らしかったイタリアの作曲家caterina barbieriの新作アルバム。綿密に組み上げられた実験的でミニマルなシンセサイザーのメロディが酩酊を誘引する。
#Abstract, #Experimental | Songwhip


Bersarin Quartett - Systeme (Denovali)

ドイツ人作曲家Thomas Bückerによる通算5枚目のアルバム。Quartettとは名乗っているが空想上のカルテットの為の音楽である。以前のようなドラマチックなストリングス、ジャジーなベースラインに絡むアグレッシブな電子音の要素は殆ど削ぎ落とされているが、うねるような持続音、ここぞという時のメランコリックなピアノはより洗練され円熟味を増している。
#Electronic, #Ambient, #ModernClassical | Songwhip


Svitlana Nianio - Transilvania Smile, 1994 (Shukai)

ウクライナ・キーフの孤高の実験音楽家Світлана Охріменко/Svitlana Nianioの1994年作品。劇場舞踏用のサウンドトラックだったそうだがこれは掘り出し物。アコーディオンかオルガンか、なんともいえない不思議なコード進行とどういう構造をしているのかよく分からない変拍子。やはりワルツをやらせたら旧ソ連圏は強い。他の作品もぜひ聴いてほしい。
#Folk, #Neo-Classical, #Contemporary | Songwhip


Kai Schumacher - Tranceformer (Neue Meister)

超絶技巧のピアノ。過去のBrian EnoやSteve Reichのカバーからも分かる通り、アンビエントやミニマルミュージックに対する深いリスペクトを感じる。どことなくFrancesco Tristanoと共通する部分もあるなと思ったら本人も参加していた。
#Classical, #Contemporary, #Piano | Songwhip


Mette Henriette - Drifting (ECM)

ノルウェーのサックス奏者Mette Henrietteの新作。とめどなく流れるサックスの音色に身を委ねる。
#ContemporaryJazz | Songwhip


Kaiser Quartett - Empire (PIAS)

ドイツ・ハンブルグに拠点を置く現代弦楽四重奏団。過去にChilly Gonzalesとアルバム『Chambers』で共演。
#ModernClassical | Songwhip


Emil Friis & Patricio Fraile - The Expected Sounds of Minor Music (130701)

映画音楽家として活動するデンマークのEmil FriisとPatricio Fraileによるコンテンポラリー・クラシック・アルバム。小編成で音数も極限まで絞られた静謐な時間。
#ModernClassical | Songwhip


Julia Andersson - Dröm (Moderna Records)

フィンランド出身のピアニスト、Julia Anderssonのデビューアルバム。アルバムタイトルはスウェーデン語で「夢」や「幻想」の意。静かで幻想的なピアノピース。ソロピアノ作品のリリースには信頼のおけるModerna Recordsからのリリース。
#ModernClassical, #Piano | Songwhip


Colin Currie Group - Music for 18 Musicians (Colin Currie Records)

Colin Currieがスティーブ・ライヒの楽曲を演奏するために設立したグループ。2023年には日本では15年ぶりとなる『18人』の演奏も果たした。ライヒ本人と共演した『Clapping Music』や『Drumming』などの録音を経ていよいよライヒの傑作の一つ『18人の音楽家のための音楽』に臨んだ。言うまでもなく『18人』は1976年の初演から現在までSteve Reich EnsemblesやEnsemble Modernなどによる歴史的名録音がすでに存在するため、Erik Hallの『一人18人』のように奇を衒わなければならないくらいマンネリ化してしまっている(とはいえErik Hallの18人は近年では出色の出来だ)。現代音楽やミニマルミュージックのエッセンスは昨今の作曲技法に浸透しきっており、今やその意義や役目を終えつつある。そんな中でこのColin Currie Groupによる正統派『18人』である。演奏はゆったり丁寧、最新録音なだけあって音質もクリア、初めて聴く『18人』としてもおすすめできる。それにしてもライヒが来日した『18人』2008年の日本公演を観てから15年も経つのか…。
#ContemporaryClassical | Songwhip


⁠Sakura Tsuruta - C/O (STUDIO MULE)

バークリー音楽院出身Sakura Tsurutaによるダンスミュージック。Holly Herndonが好きな方などに。
#Electronic, #Techno, #House | Songwhip


Anyma - Genesys (Interscope)

Sevdalizaが一曲ヴォーカルとして参加。クソデカスクリーンを使ったライブ演出はSF感があるが音楽の方はやや凡庸。
#Electronic, #Techno, #House | Songwhip


Наадя - Решения (Self-released)

ロシア、ナージャ新作。ロシアの伝統的な音楽と現代的な音楽が結びついたサウンドに力強いヴォーカル。過去作もぜひ聴いてみてほしい。
#Electronic, #Pop | Songwhip


Spivak - You Win Again (Ecstatic)

キプロスのSSW。チルと覚醒の狭間、ベッドルームポップ。
#Electronic, #IndiePop, #Experimental | Songwhip


TESTSET - 1STST (Warner Music Japan)

昨年の1stEPに続いて発表されたTESTSETのフルアルバム。LEO今井の強烈な個性はやはり大きな武器。METAFIVEの解散は惜しいがそこから派生したTESTSET、先達のオマージュだけではなくオリジナリティの部分での進化に期待したい。
#Electronic, #Synthwave | Songwhip


坂本龍一 - 12 (commmons)

晩年2021年から2022年にかけて東京の仮住まいで日記を書くように録音されたスケッチから選曲されたもの。高橋幸宏氏を追うようにこの世を去ってしまったのはもう言葉もない。数々の素晴らしい音楽を世に残してくれたのは言うまでもないが、移り変わる時代や進化するテクノロジーの元で教授の新しい音楽をもっと聴いてみたかった。この先教授の新曲を聴くことができないという事実は本当に寂しい。辞世の言葉、「芸術は長く、人生は短し」は本当に至言だ。
#Electronic, #Ambient, #Classical, #Piano | Songwhip


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