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令和3年の20枚

ゆっくりと世界は。2021年の音楽。
今年は久々に漫画を発表できたと思った矢先に胃に穴を開けて入院したりと慌しい一年でした。下はさっと流せるプレイリスト。

Visionist - A Call to Arms (MUTE)

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Visionistことロンドン出身のプロデューサーLouis Carnellによる3作目のアルバム。過去作の中では最も穏やかで聴きやすい。内省的ではあるが決して塞ぎ込まない芯の強さが感じられる。歌詞によって過去作にあったある種の抽象性が失われることに賛否はあるかもしれない。ファジーなノイズとヴォーカルの絶妙なバランス感、今一番求めている音だ。
#Avant-Garde, Experimental | bandcamp / Apple Music / Spotify

Nahawa Doumbia - Kanawa (Awesome Tapes From Africa)

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マリのワスル音楽を代表する女性歌手。マリの貧困と失業問題、それに起因する違法な越境による若者の流出といった国内事情に対する訴えを歌ったもの。とはいえ言葉も分からないし国の情勢も推し量ることはできないが、そういったメッセージ性を抜きにしてもワンコードで進行するギターとプリミティブなリズム、そして何より彼女の歌声のエネルギーにただただ圧倒される。
#Traditional | bandcamp / Apple Music / Spotify

Andy Stott - Never The Right Time (MODERN LOVE)

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ダブテクノの雄Andy Stott最新作。長くコラボしてきたAlison Skidmoreのヴォーカル曲が半数を占める。前作のフロア向けな感じとは打って変わってサウンドアート的なデザイン。
#Dub, Chill | Apple Music / Spotify

Eydís Evensen - Bylur (SONY CLASSICAL)

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アイスランドの新進気鋭のピアニスト。同じくアイスランド人でプロデュースを手がけたValgeir Sigurðssonの名にピンとくる方には説明不要だろう。Bylur=吹雪だそうだがアルバムを通して深いリバーブが効いているので不思議と暖かい。
#Classical, Piano | Apple Music / Spotify

Sebastian Plano - Save Me Not (MERCURY KX)

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アルゼンチン出身の作曲家。デビュー初期からポストクラシカルと電子音楽の融合を試みていたが、当時はÓlafur Arnalds等の影にやや隠れ気味だったかもしれない。円熟を重ねたメランコリックなピアノにチェロ、そして自身のボーカルが寄り添う。
#Classical, Piano | Apple Music / Spotify

食品まつり a.k.a foodman - Yasuragi Land (Hyperdub)

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以前からそのユニークなアーティスト名だけ見かけていて音源までは聴いたことはなかったが、Hyperdubからリリースということに惹かれて聴いてみたらこれが素晴らしい。生音エレクトロニカにありがちな嫌味がなく適度に力が抜けていてとても好印象だ。
#Electronic, Footwork | bandcamp / Apple Music / Spotify

Verona - Vaihtuvat Perspektiivit (Texicalli Records)

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ここはレーベル買い。フィンランドのTexicalli Records、発売は2020年。表題曲のVaihtuvat Perspektiivitが映像も含めてとても良い。スポークンワーズの前衛的な作り。
#SSW, Spoken Words, FInland | Apple Music / Spotify / YouTube

Proc Fiskal - Siren Spine Sysex (Hyperdub)

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ゲール語、アイルランド、イギリスのフォークミュージックのコラージュ。牧歌的な情景に収まることなく現代的なエディットにより新たな光を当てている。
#Electronic | bandcamp / Apple Music / Spotify

KMRU - Logue (Injazero Records)

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ナイロビ出身で現在はベルリンを拠点に活動している電子音楽家Joseph Kamaruによる、2017年〜2019年にbandcampで発表した楽曲をまとめたコンピレーション。アンビエントなんてアフリカの人間がやるものではないという固定観念に真正面から立ち向かっている。アンビエントとアフリカンミュージックの交差を超えたスペーシーなサウンド。
#IDM, Ambient | bandcamp / Apple Music / Spotify

Native Soul - Teenage Dreams (Awesome Tapes From Africa)

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独特のLog Drumが特徴的なAmapianoの意欲作。素朴なパーカッション主体の伝統的なアフリカンミュージックと現代的な打ち込みのビートの相性が悪いわけない。ずっと聴いていられる奇妙な没入感がある。
#Amapiano, House | bandcamp / Apple Music / Spotify

Arca - kiCK ii-iiiii (XL Recordings)

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2020年発表の「kiCK i」に続く5部作。まさか一年で4枚出るとは思わなかった。曲数が膨大な分デモ曲のような印象を受ける曲も多少あるが、それはそれでArcaの制作に対するアプローチを垣間見ることができるようで興味深い。
#Avant-Garde, Experimental | Apple Music / Spotify

Dalhous - The Composite Moods Collection Vol. 2: Point Blank Range (Denovali Records)

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多少の変化はあるが気が付くとアルバム一周している。暗いインダストリアル調の家具の音楽。
#Industrial, Ambient | bandcamp / Apple Music / Spotify


Tim Hecker - The North Water (Original Score) (Invada Records)

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1850年代の北極捕鯨探検がテーマの日本未公開のTVドラマのサントラ。全体を通して陰鬱なのはいつも通りのTim Heckerといった感じだがサントラという性格上明確なリズムがあって聴きやすい。
#Soundtrack, Ambient | bandcamp / Apple Music / Spotify


Mariana Semkina - Disillusioned

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ロシアのチェンバーロックデュオiamthemorningの女性ボーカルのソロ2作目のEP。美しい一人多重録音のコーラスに引き込まれる。コロナ禍に加え、このきな臭い情勢の中拠点をロシアから英国に移すのがどれほど大変なのかは分からないが、変わらず歌声を届けて欲しい。
#SSW, Vocal | bandcamp / Apple Music / Spotify


Hania Rani & Dobrawa Czocher - Inner Symphonies (Deutsche Grammophon)

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ピアニストHania RaniとチェリストDobrawa Czocherのポーランドデュオ。以前にもこの二人でアルバムを発表しているが今作はドイツグラモフォンから。DGがこんな才能を見過ごすわけがない。
#Classical | Apple Music / Spotify

Poppy Ackroyd - Pause (One Little Independent Records)

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Poppy Ackroydの新作。以前はプリペアドピアノや打ち込みを多用していたが、今作はシンプルなピアノ一本で通している。
#Classical, Piano | bandcamp / Apple Music / Spotify

Otto A. Totland - Companion (Sonic Pieces)

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ハンドメイドのパッケージが美しいSonic PiecesからOtto A. Totlandの新作。静謐で芯が通っているけどどこか寂しいピアノの旋律。
#Classical, Piano | bandcamp / Apple Music / Spotify

LTO - Daear (Denovali Records)

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膨れ上がるシネマティックなサウンドスケープ。
#Experimental, Ambient | bandcamp / Apple Music / Spotify

Naaljos Ljom - S.T. (Motvind Records)

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ノルウェーの伝統的な民族音楽と現代的なダンスミュージックの融合、だそうなのだがマイナー調なのも手伝ってアラビア音楽のようにも聴こえる。
#Traditional | bandcamp / Apple Music / Spotify

佐野元春 - THE COMPLETE ALBUM COLLECTION 1980-2004

デビュー40周年を記念しEPICレーベル期のオリジナルアルバム、ライブアルバム、企画盤などを一挙収録した29枚組CDボックスセット。ロスレス・ハイレゾ音源のサブスクサービス全盛期に旧態依然とした高額ボックスセットを出すことの功罪についてはひとまず置いておくとして、目玉は初CD化の「THE BARN LIVE '98」、「THE SUN」のTed Jensenリマスタリング、そしてこれまでリマスタリングされる機会のなかったライブアルバム「THE GOLDEN RING」、「Slow Songs」収録のオーケストラバージョン2曲、「MOTO SINGLES 1980-1989」収録の「水の中のグラジオラス」あたりか。個人的には発売から20年を経た「20th Anniversary Edition」と「GRASS」が全曲リマスターされたのも嬉しい。
変に色付けしない素直なリマスタリングで、特に旧盤の発売以来初めてリマスタリングされたものに関しては一段クリアになった印象でとても好ましい。1stから「Stones snd eggs」までのスタジオ盤についてはこれまでもTed Jensenや前田康二氏によって何度もリマスターされていてすでに十分な音質に仕上がっているので、音質面で改めて驚くことはないように思う。これ以上の音質を望むなら前田氏が手がけたハイレゾ音源がすでにMoraで配信されている。
過去のアルバムが絶えずリマスターされるだけでも十分恵まれているのは承知の上だが、2022年3月に発売予定の「NIAGARA TRIANGLE Vol.2」40周年記念版に収録されるヘッドホンコンサートの音源をはじめとして、未収録の音源はまだまだ沢山あるので、そちらもなんとかして補完していただきたい次第。

次点

時間切れで一言添えられなかったけどメモ。お馴染みの面々かもしれない。
Yves Tumor - The Asymptotical World - EP
65daysofstatic - Available Data
Rival Consoles - Overflow
Loscil - Clara
Alva Noto - HYbr:ID I
Paraadiso - Unison
Lyra Pramuk - Delta

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