禍話リライト「川案山子」【怪談手帖】
諸事情で実家との縁を切って久しいというDさんは、ほんの数年前までひどく捨て鉢な生活をしていた。
そんな時代の彼が、安さだけが取り柄のような、とある川沿いの集合住宅に住んでいた頃のことだ。
深夜に起きた仲間内の厄介事からようやくの思いで抜け出した彼は、隣の区から歩きとおして夜明け前に家へ帰ってきた。
心身ともに擦り切れて、道路横の欄干に肘を掛ける。
帰宅前に一息つきながら、彼はその川を眺めていた。
普段ろくに見やることのない、名前も憶えていないような川だった。
なにかそれなり