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前回からの続き。

晒し首にされる人物の、正に首から上の顔写真だ。
どこにでもいるスーツ姿の一般人男性の姿が映し出される。

確実に恣意的な意図を持って、画面に映る写真以外の背景は排気ガスを彷仏させるどす黒い黒のグラデーションがウネウネと動いている。まるでその写真から悪いウィルスが放出されているかのような見事な演出エフェクト。
ここに国民の仮想敵、いや真の悪役が誕生した瞬間だ。

この日のこのワイドショーの視聴率は10%だった。歯に着せぬ物言いが人気を博しているこの番組の視聴率は、このネット時代に中々の数字を出した。
ネット動画なら10秒で完結するニュースを、尺にうまく収まる形で話を広げながら、そのメディアの長年培われた完成された手法によって、国民の憎悪増幅マシーンとして、その感情を言語化する役割としてそこにいる元俳優コメンテーターの合いの手に添えられる形で、このリーク情報の第一次拡散が始まった。
テレビの視聴率1%はおおよそ100万人と数えられている。視聴率10%だったので、
およそ1,000万人の国民が目にしたことになる。

そして当然このネット時代。
平日毎日届けているこのワイドショーは1時間番組だったが、ネット民が1時間黙って見ているわけもなく。要所要所動画として数字が見込める極端な表現部分を中心に切り取られ、コンパクトに編集され、動画サイトにアップされ、この手のニュースは一瞬で膨大な数のいいねと登録数を稼ぎ出すひと時のネタとなる。
ちなみにこの時の番組は、このリーク情報を扱った15分枠が1分の動画にまとめられ、ついた再生回数は200万再生。
ここまで1,000万人+200万再生で、合計1,200万人が目にしたことになる。

動画サイトにはもれなくオススメ動画が必ず目につくところに設置されている。
世界的に猛威を奮ったこのウィルスの魔の手が伸びたのは日本国内だけではない。死者の数だけで言えばケタ違いに多かった国もあった。それだけこのウィルスに対する恐怖も深ければ、怒りの度合いもまたケタ違いだ。オススメ動画の中にはタイトルが英語で表記され、これまたコンパクトに、日本のワイドショーの絵を借りて英語音声と英語字幕がご丁寧に備え付けられ、数十秒の動画として再生回数を量産していた。いくつかの動画作成者が配信したその合計数、およそ1000万再生。
ここまで合計2,200万人が目にしたことになる。

このSNS時代。この動画は他のSNSでも瞬く間に広がり、リツイート、リポストと、各SNSごとの"そのままシェア機能"がさらなる拡散を生み出す。
投稿ごとに何万、何10万と再生される動画。
世界で主要な各SNS上位5つだけに絞って数えても、其々平均1,000万作成x5はどんなに少なく見積もっても人の目に触れたと言って良さそうだ。
ここまで概算合計7,200万人。(日本語と英語のみ。その他の言語での拡散は未算出)
既に日本の人口で言えば、2人に1人以上が目にしたことになる。

番組が放送されてからここに至るまで、僅か1日足らずの出来事だ。


次回に続く。

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