#短編小説
ものすごくみじかい話 ばくだんいわ
ばくだんいわ的な、自爆するタイプのモンスターが近所を歩いていたので、
「自爆するために生まれたというのは、人生が虚しくならないかい」と尋ねると、モンスターは鼻で笑って、
「人生なんて、畢竟、長い自爆みたいなもんさ」と格好をつけた。
でもそれが一周回って本当に格好良く思えてきたので、なるほど。
おれも自爆してみようかな。
ものすごくみじかい話 無人島白米
無人島に友達といっしょに漂着してしまった。こんな食べ物もないところでは死んでしまうしかないのではないか、と悲嘆していると友達が、
「じつはおれ、ほかほかの白米を無限に生み出すことのできる能力を持っているんだ」と手のひらからほかほかの白米を出してくれる。
さっそく実食。とてもうまい。
「ごはんをおかずにごはんが食べられるレベル」と褒めたたえると、
「そう言ってくれてうれしいよ」とはにかん
ものすごくみじかい話 古い家の猫
友達が数ヶ月家を空けるというのでその間猫の世話をしていてくれたら、家(古い一軒家だ)は勝手に使っていいよ、というのでありがたく住まわせてもらうことに。
友達の猫はてれ屋さんなのでなかなかわたしの前に姿を現さないけれども、餌を置いておくとなくなるし水もぺちゃぺちゃ舐める音がするし、なによりあちこちに真っ黒な抜け毛の塊がどっさりできてるから、たぶんどこかにはいるんだろうなと思う。
でも、
ものすごくみじかい話 匙を投げる大会
匙を投げる大会に出ている友達の応援に行くと、
「おれがこの匙を投げることで、この世界に魔物の大群が押し寄せてきてしまうかもしれないんだ」と言いながら匙を投げていた。
さすがだなあと感心していると、空に大きな黒い穴がぽかりと開いて、そこから魔物の大群がわんさか押し寄せてくる。大会どころではない。
みんなでわーっと言いながら逃げ惑っていると、当の匙を投げた本人が「ほらね」みたいな顔で苦笑い
ものすごくみじかい話 一年に一度しか
今日は一年に一度しか目を覚まさない恋人が起きる日なので、朝からうきうきしながら準備をしていたのだけれども、いつまでたっても恋人は目を覚まさないし、これはもしや寝坊なのだろうかと思っていると、やっぱり寝坊らしかった。
一年間寝ていても眠いものは眠いのだろう。いつまでも目を開けない恋人を見つめていて、次に目を覚ますのはいつなんだろうなと思っていると、わたしもなんだか眠くなってきたので、一緒に寝て