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【牛島薫子のそんな資格取ってドーするの番外編①「社会福祉士」】

【牛島薫子のそんな資格取ってドーするの番外編①「社会福祉士」】

 僕の母が60歳になって社会福祉士の資格を取ることができました(この記事を書いたのは2年前です)。これは福祉系資格の中では最難関の国家資格で、福祉系大学の大学生が卒業と同時に取得することを目標とする資格でもあります。
 母は高卒なので受験資格が無かったのですが、4年以上の相談業務(介護支援専門員)をやって、1年間の一般養成所(専門学校、または短大)のスクーリング授業を受け、やっと受験資格を得て2年勉強し、なんとか合格した模様です。
 1度落ちて、2回目でギリギリの点数で受かっていますが、60歳なら受かっただけですごいでしょう。平均合格率は20%程度らしいですが、60代の合格率は0.7%だったそうです。司法試験より低いぞ。
 そんなこんなで母は晴れて社会福祉士となった訳ですが、その道のりが長かった。長かったけど、高卒無資格未経験でこの資格を取れるというのは息子が言うのもなんですが、かなりスゴいので、参考になるかわかりませんが、そのお話を少ししておこうかと思います。

 母は50歳過ぎくらいに親類が経営している介護福祉施設で働き始めます。高卒無資格未経験だったので、先ずは初任者研修を取って介護福祉士を目指すルートを取りました。
 その年齢なので、若い人よりも夜勤でかなりダメージを受け、また人間関係もかなりめんどうだったようで毎日辞めたかったみたいですが、せめて介護福祉士を取得しようと努めます。
 介護福祉士の試験は難しくはないと言われてはいますが、やはり働きながら勉強すると言うのは難しいらしく合格率は70%くらいです。母もたいへんだったようですが、簿記1級を取得するくらい地頭がいい人なので高得点でパスします。しかし介護福祉士を続けるのは年齢的に肉体的に無理だと悟り、介護支援専門員(通称:ケアマネジャー)の資格を取ることを目指します。

 都市圏なら話は違うかも知れませんが、地方のさらに地方みたいな地域ですと介護支援専門員はかなり貴重な資格です。定年後も求人はありますし、実際に70代で働いている人も知っています。
 そして相談者・利用者のお宅へ訪問に行くという程度の肉体(あるいは強度の精神的)労働はありますが、基本的には事務仕事で、相談件数を持てば持つほど事務手当が加算され、逆にパートで2、3時間働くという働き方もあるなど、稼ごうと思えば稼げ、自由にしたいと思えば自由にできるという資格です。場末の地方においては人生設計を変えられるような一発逆転の資格と言っても過言ではないもので、多くの介護福祉士さんがこの資格を取得しようとがんばります。
 しかしこの試験の難度は介護福祉士の比ではなく、合格率も毎回20%を切るなど、話はそう簡単ではありません。

 この話をするかはどうかかなり迷ったのですが、おそらく事実と思われるので批判を覚悟で話しますと、介護支援専門員の試験問題は母の試験相談に乗るために僕も一通り解きましたが、ちゃんと勉強すればちゃんと通るように思われました。
 しかしこれほど合格率が低く地方では貴重な資格というのは、なんというか地方格差があるなぁという印象です。
 要するに、高卒無資格未経験の方の多くは試験にそもそも慣れていなかったり、勉強の仕方というものがよくわかっていなかったり、どうやって問題を解くのかという効率的な方法を知らなかったりする訳です。
 バカにしている訳ではなく、たぶん事実で、そしてそういう方たちが受験者の大半を占めるので、きっちり勉強方法や試験対策などを教えるスクールもしくは塾みたいなところが(地方に)あれば合格率は激増するんじゃないかと思ったくらいです。
 僕も母がどう勉強しているのか気になって色々と見ましたが、たとえば問題集に答えを直書きしちゃったり、たくさんの問題集を買うだけ買って手につかなかったり、ぶ厚い参考書を読むだけで満足しちゃったり、いわゆる非効率な勉強をしていました。
 どうやって勉強したらいいのかわからないという感じで、僕が参考書を読んだら問題集をノートに取ってやって同じ領域の勉強は最低でも3周しなさいよ、と教えただけで模擬試験の点数が50点くらい上がって即合格圏内になっていたので、つまりそういうことなんだと思います。
 大人になってからちゃんと勉強の仕方を教える教室を開いたら、意外に儲かるかも知れませんね(資格の専門学校があるよ、という話は地方においては通用しないんですよ)(インターネット通信で講義を受ければよいのでは?→あなたはIT強者の部類に入ります)。

 それで、一発で合格して介護支援専門員になって年収が爆上がりし、働き方も自由になったんですが、就職した先がクソの掃き溜めみたいなところで、まぁ色々とたいへんだったようです。
 しかし働き先もたくさんあって選び放題でしたから、自由に渡り歩いていました。迷う必要なし。嫌だと思ったら「じゃ、ここ辞めて他の所に行きますんで」が通用する世界です(狭い業界なので悪い噂は勝手に独り歩きしちゃいますけどね)。働く先に困らないというのはすごくいいですね。
 そんな折、母の妹が社会福祉士を取りたいと言い出します。

 社会福祉士は冒頭でお話しましたが、福祉系資格では最高峰の国家資格です。年収自体はとても高いという訳ではありませんが、福祉系大学の学生は最終的にそれを目指しますし、地方だと完全に人不足でどこも高待遇で迎え入れてくれます。
 母はせっかくなので、その最高峰に挑むことにしました。
 まぁ、たいへんだったらしいです。
 僕も特に医療分野や心理分野などを教えましたが、普通に難しかったです。僕自身が専門の心理分野でもすぐに答えがでないような問題もあったり、一筋縄では行きませんでした。
 母の周囲でも社会福祉士を受験する人は結構いて情報交換を密にしていましたが、結局、母は一回目の試験では全く合格点に届きませんでした。周囲の人も全員落ちてしまったようです。
 二回目はもう鬼気迫るほど勉強したようで、そこまでしてもギリギリの点数でなんとか受かった、という感じだったようです。福祉系国家資格の最高峰はさすがだなぁと思いました。

 現在も母は介護支援専門員の仕事をしていますが、社会福祉士を取ったことで転職先の幅が広がりました。
 働き先は福祉系だけにとどまらず、教育関係もあるのですが、行政の方で密かに情報共有しているのか、それまで年齢制限があった求人が母が社会福祉士を取って数か月ですぐに年齢制限がなくなり「母が」すぐにでも就職できるようになっていました。
 収入自体は高くありませんが、教育委員会とか公立病院とか、かなり安定した先で働くこともできるようです。

 高卒無資格未経験で50歳、というと世間一般の認識では「終わって」いると感じられます。そんなことないよ!輝ける職場もあるんだよ!なんて声もありますが、キツい肉体労働や酷い人間関係で凝縮され、低収入で安定しない仕事ばかりというのは現実です。
 しかし、僕の母のように、最初はたいへんだったようですが、きちんと自分のキャリアを考え、努力すれば拓ける道は絶対にあります。
 様々な「副業」が世間では生まれていますが、個人的にはしっかり資格を取って安定した職場で働くことの方が、副業でたくさん儲けようとする方より楽だし簡単だと思うんですけどね。
 副業を考えるよりしっかり資格の勉強をして、そもそもの基本給を底上げしていきましょう。

まとめ

高卒無資格未経験でも道は拓ける。

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