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【詩】そして、みんないなくなった

入場口で立ち尽くす
ぽっかり抜け落ちたこころの隙間から
都合のいい理由だけをじいっと見つめて
さびれ果てた遊園地に想いを馳せる

ちんまりとした静寂
誰もがゆとりある日々を求めていた
この落ちぶれた時代の片隅で
愛だとか夢だとか語らいながら
誰もが自由で大げさな何かを求めていた

美しいもの
素晴らしいもの
価値あるもの
なんかいい感じのもの

そんな金太郎飴のような理想を振り返り
沈黙する飛行塔を眺めて
断絶された景色をただ嘆くだけの愚かさよ

耳をすませは聴こえてくる
壊れて誤再生するスピーカーの
音声の割れた迷子のお知らせ

誰もいない遊園地
途方に暮れる迷子の影は
忘れ去られた日々の面影なのかそれとも
取り残された現実の残影なのか

我々の世代はきっと
こころの底からかなしいと思うことは
出来ないのかもしれない

あの飛行塔のてっぺんで
目ん玉をひん剥いて騒ぎまくり
手を振って笑いあったあの頃

あの頃は本当になにもかもが楽しくて
なにもかもが嬉しくて
そしてなにもかもが間違っていた



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