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【短編】愚物のアイデンティティ

今日は皆さんにご報告が何もございません。かねてよりお付き合いさせていただいているnoteに書くことが一切合切ございません。出だしは以前書いたやつの流用。手抜き。能無し。こんな知恵の足らない私だけど、少しはセンスのいい知的なことだって呟いたりできるのよ!ってとこ披露したいものですが、脳がメルトしてて全くなにも思い浮かびません。

せめて風貌だけでも格好よくなりたい。張りぼてで良いから、メッキ貼りで良いから、なんかこう「あの人けっこうイケてない?」みたいなこと言われたい。私の見えないところで黄色いひそひそ話とかされたい。だから最近の私は、イケてる風格を纏う人間の振りをする、というのを日課として日々邁進しております。

たとえば昼下がりの休日。私はひとり、名の知れたイタリアンレストラン(サイゼリア)に赴いて、村上春樹などを読みながらワインを優雅に嗜んでみたりする。ふむ、これはなかなか洒落ている。そんな風に思って、毎週近所のサイゼリアに足繁く通うのだけれど、どうやら私のことなんて誰も眼中にない。私はページをめくり、頬杖をついて、その一挙一動の細部にまでこだわって、できるだけエレガントに、たまにはアンニュイな表情などもしてみるのだけれど、やっぱり誰も見ていない。周りにいるのは目ん玉ひん剥いてはしゃぎまわる子供達と、絶望的に面白くない話ばかり繰り返すマダム達。そうなるとなんだかばかばかしくなって、もういいや、って諦めてしまう。

そもそも格好つけようとしてサイゼリアに行くのが根本的に間違っているし、だいたい私見た目たいして格好よくないし、村上春樹だってたいして読まないし。ついあれもこれも注文してしまうし、ついデカンタワイン飲みすぎてしまうし、子供とマダムは果てしなく騒ぎ狂ってるし。やばいよやばいよサイゼリア。美味い、安い、早い、うるさい。これ即ちサイゼリア。初デートはもちろんサイゼリア。接待も当然サイゼリア。両家顔合わせや離婚調停打ち合わせも、まごうことなくサイゼリア。私の心にミラノ風ドリア。貴方の心にパルマ風スパゲティ(トマト味)。少しだけ疑問を挙げるなら、何故シーフードパエリアはメニューから消えてしまったのか。あの間違い探しはどうして異様に難解なのか。



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