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✈️ 足るを知る 5年ぶり、11回目のフィンランド旅行は不便でも豊かでした

フィンランドのテキスタイルメーカーに提案した企画が通り、2022 年~ 2023 年にかけてフィンランド在住のクリエーター 18 人にオンラインでインタビューをして コラム にまとめました。

残念ながら連載は終わってしまいましたが、いずれ取材でお世話になった方々に直接ありがとうを伝えてまわる旅が出来たらいいなと思い、コラムのお仕事やヒンメリ関連のお話しをしていただいたお金を「いつかのためのフィンランド貯金」していました。


その貯金を全額崩して、この夏、コロナパンデミック以来5年ぶりにフィンランドに行ってきました。12 日間のフィンランド旅行は毎日がまるでカルピスの原液を飲むような濃ゆい日々でした。フィンランドの西で東で、街で森で、たくさんの人たちに会い、創造性に触れました。

カンテレ奏者のハンナさん。夏の終わりの音楽祭は戦争遺跡の洞窟で開催されました。
画家のヴィーヴィさん。自然と生き物をモチーフに創作活動なさっています。
カレリア地方の人々にとってはソウルフードのカレリアパイ〈 karjalanpiirakka 〉。ベテランの職人さんたちから作り方を教わりました。
木工職人のアウリスさんの作品にはカレリア産の白樺材ヴィサコイヴが使われています。
デザイナーのカトリーナさん。ヨエンスーのスタジオにお招きいただきました。
ヒンメリストのエイヤさんのご自宅にお招きいただき、コスキ夫妻と寝食を共にするなかで多くのことを学ばせていただきました。
ダンサーで作家のハンナさんには、一夜漬けのドンパン節を披露しました(笑)
デザイナーのマイヤさんのSATOと、ハンナさんの著書 『Äitini, tyttäreni』を自分へのお土産にしました。
コラムを書かせていただいたLapuan Kankurit さんの本社では工場見学をさせていただきました。

インターネットを使うとたいていのことは調べることができるし、事実、18 本のコラムはZoomやメールでやりとりしながら完成させることができました。それでも今回改めて目の当たりにした創作は、頭のなかで想像していたよりも大きく、また、素材に直に触れることでその繊細さや力強さに驚かされました。全員にお会いすることは叶いませんでしたが、この先も来年、再来年とこの旅を続けることができるように頑張ります。

ヘルシンキからヴァーサまでは、途中セイナヨキに寄り道をして電車で向かいました。


今回の旅では、ロシアとの国境に近い町と、対岸にスウェーデンを望む町へ、それぞれ足を延ばすことができました。スウェーデンとロシアにはさまれるフィンランドは、この二つの大国に支配された歴史をもちます。日本でもその土地ならではの風土があるように、フィンランドでも、言葉には簡単に表わすことのできない、その土地ならではの気質のようなものをわずかですが肌に感じることができました。スウェーデンに近い沿岸地域には、スウェーデン系フィンランド人と呼ばれ、スウェーデン語を母語とする人々が暮らしています。学校では第二外国語としてフィンランド語を勉強するので、ましてや教職に就いている人であればなおのこと、フィンランド語を話せないわけがないのですが、中には頑なにスウェーデン語と英語でコミュニケーションを図ろうとする人もいました。フィンランド語は元々は農民の言葉で、一方でスウェーデン語を話す人々は裕福な立場の家庭が多かったようです。

ロシアと国境を接するイロマンツィにも足を運びました。


対照的にロシアとの国境に近い北カレリア地方は、度重なる戦争によって何度も国境線を引き直され、ついにはその土地を奪われてしまった歴史をもちます。10年ぐらい前に訪れた際は街中でロシア語を頻繁に耳にしたのですが、今回はたったの一度きり、それも囁くような小さな声でまわりから隠れるように電話している姿がせつなく、印象に残りました。

今回で 11 回目のフィンランド渡航は、久しぶりの遠出ということもあってか、もしくは、私が多少なりとも社会に揉まれて磨かれたからなのか、今まで以上に得るものが多い旅になりました。

最終日の夜は南部のヘルシンキでもオーロラが見えたそうです。地方から戻って、パッキングに力尽きカーテンを開けっぱなしで寝たので、もしかしたら頭上でオーロラが躍動していたのかなと思うとなんて貴重なタイミングに居合わせることができたのだろうと嬉しくなります。



今回はカメラを持っていて、写真をたくさん撮ってきました。その中から1枚、お気に入りの景色をこの投稿の最後に添えます。二十平米に満たない夏小屋から望むオーシャンビュー、電気はかろうじて通っているものの、水道はなく、トイレももちろんナチュラル仕様。友人に教わりながら採ったキノコを調理してランチにいただきました。その美味しかったこと!本当のフィンランドを垣間見ることができたように思います。

エイヤさんとカリさんの夏小屋は不便でも豊かでした。


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