思い込めるほど、信頼してる

私は料理が大の苦手です。食べることは好きなのに、作ることにはまったく興味がないのです。

けれど、人間はおなかがすく生き物です。食べなければ生きていけない。よって、料理しなくても食べられるものに愛を見出すようになるわけです。

ヨーグルト。料理に使う人もいるだろうけど、基本的に買ってきさえすれば食べられる。ふたをあけて、小さなカップのものはそのまま、大きなものはお皿に移して。果物を入れたり、青汁の粉末を入れたり、ちょっと凍らせてみたり、アレンジだって簡単なもの。
グッダグダに疲れて仕事から帰ってきて、寝る気力しか残っていなかったあの日々。あの日々、帰宅してからカップのヨーグルトをほおばることが楽しみだった。冷蔵庫から取り出して、すぐに食べてしまえるヨーグルトは、着替える元気すらないほど疲れていた私の強い味方でした。


あれはいつのことだったか。プレーンのヨーグルトをたっぷりしたサイズで買ってきた私は、このままだと甘くないので砂糖を入れて美味しく食べようと決意した。お皿にヨーグルトを移して、砂糖をがばっと入れる。つやつやと白いヨーグルトがお皿の中でふるふる震え、きらきらした結晶を吸い込んでいった。
ああ、なんて美味しそうなんだろう。舌の上で踊る甘い瞬間を妄想しながら、私はヨーグルトをスプーンでひとくちすくって口の中へ放り込みました。

あまりのことに、脳の処理が追いつかない。

私の口の中で暴れる、この衝撃は何なのだ。

それは私の知っている、私の想像したヨーグルトではありませんでした。甘さを待ち構えていた舌は戸惑いを通り越して泣いている。いったいぜんたい、これはどうしたことだ。
なんでこんなに不味いんだ!

はたと私は気づきました。

これ、砂糖じゃない。塩だ。

まさかこの世の中に、本当に砂糖と塩を間違える人間がいるなんて。しかもそれが自分だなんて。あれはフィクションの世界のたとえ話じゃなかったのか?

ここで料理が得意な人や機転がきく人なら、この塩入りヨーグルトを有効に再利用することができたのでしょう。しかし私にはその余裕が一切なかった。砂糖だと思い込んでいたものが塩だった、そのショックがこんなに大きく、こんなに頭の切り替えができないものだとは…。甘いヨーグルトを楽しみにしていただけに、すぐに頭が事態を納得できなかったようです。しかも塩と砂糖を間違えるとかいう、アホとしか言いようのない単純ミスが原因ですからね(泣)。

あまりの情けなさと悔しさに涙目になりながらも、私は根性でヨーグルトを完食することにしました。私は貧乏だった。今はもっと貧乏だけどその頃も貧乏だった。そしてとにかくおなかがすいていた。もったいなくて捨てる気にはなれませんでした。どんな味だったのかはもはや思い出せません…。

それ以来、できるだけプレーンではないヨーグルトを選ぶか、プレーンの場合は果物など「間違えようがないもの」を入れるようになりました。人間は喉元過ぎるといろいろ忘れるもの。またやらかさないとも限らないからです…。とほほ。


そんなこともあったけど、私はやっぱりヨーグルトが好きです。これからの季節は、ちょっと凍らせて、ちょっとしゃりしゃりっとして食べてみたいものです。さわやかさがすうっと、舌の上で踊ってくれるのでしょう。


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