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「おもちゃじゃないもん!」

この間、本屋に行った。

私の見たい書籍コーナーは、児童書コーナーと隣接していた。

パパは私の隣でもくもくと選書。お子さんは、「パパー! これ買って! これ、役に立つよ!」とパパを必死に呼んでいる。

まだ幼稚園に行くか行かないかくらいのお年頃。

たぶんお家で「役に立つ」という言葉が、とても大事にされているのだろう。

と察せられるくらい、

お子さんは甲高い声で、「パパー! これ役に立つから!」と元気に買って買ってを猛アピール。「役に立つ」と。

パパはお子さんの買って買ってアピールの激しさに、「静かにね」と言って、仕方なくお子さんの待つところへ行く。

パパ「これ、おもちゃだよ」

お子さん「おもちゃじゃないもん! 役に立つもん!」

パパは付き合いきれませんと、また私の隣に戻ってきて、選書の続き。

お子さんはその本を諦めきれないのか、「パパ! これ、役に立つの!」と選書をしているパパのところにまで本を持ってやってきて、勝ってほしいアピール再開。

ちらりと見ると、ディズニープリンセスが描かれたキラキラ絵本。

おお……、おもちゃかも。

パパはため息をつきながら、「パパは本を選んでるから、待っててね」とお茶を濁す。

お子さんはむくれていたが、私は微笑ましくて、少し羨ましかった。

この子は、最終的にこの本を買ってもらえるかどうかは分からなくても、買ってほしいとアピールすることにためらいがない。

私はこのお子さんを見ていて、自分が子供だったころの、自分が買ってほしいものを、親にお願いするときのルールを思い出した。

我が家では、子どもの買ってほしいというお願いは、大概通らないと思っていないといけなかった。

しかも、あまりに「買って買って」と言うと、特大の雷が帰宅後に落ちる。出先では口をきいてもらえなくなり、完璧によその子扱いされた。置いてけぼりをくい、帰りの車の中や、家で恐ろしい勢いで叱られるのが常だった。

「あんな恥ずかしいことよくてきるね」

「もう二度と買い物に連れて行かない」

「あそこで置いてこればよかった」

「なんでついてくるの? ほしいもののところにいたらいいじゃない」

ある時、母に「本当に買ってほしいものがあった時は、一回しか言っちゃだめ」と言われた。

買ってほしい、今ほしい。

と思っても、「あれがほしいんだけど……」と、こっそり訴えるのが大事だと。

と言っても、買ってもらえるとは限らない。

小学生の頃、学校で爆発的に流行ったポケモンのCDがあった。

ポケモンの名前をひたすら並べただけの、呪文のような歌のCD。

出先でそのCDを発見した私は、ほしくてほしくて、目が釘付けになった。

売り場を通り過ぎる。

目の前をポケモンのCDが通り過ぎる。

よく勇気が出たなと思うし、よく両親が買う気になったなと思うのだが、このCDは奇跡的に買ってもらうことができた。

あの時はとても嬉しくて、今でもそのポケモンのCDの様子を覚えている。

子どものお願いというか、おねだりに、閉口する親御さんはどこででも見かける。

親御さんがどう対応するのか、お子さんはどう反応するのか、なんとなく行く末が気になって見てしまう。

今回の書店のパパのように、お子さんのように、子どもが「買って買って」のアピールを素直にできたほうが、なんだか健康的に思えてしまう。

「おもちゃじゃないもん!」

そうだね。

あなたがほしいものだもの。

役に立つよね。

【今日の英作文】
旅行は行くより計画がたのしい。
Trips' planning would rather is fun than going on.

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