道案内

今日も、アーシュラ・K・ル＝グウィン『文体の舵をとれ』を読んで、文章の練習。

【方向性や癖をつけて語る
AとBの会話だけで物語る
地の文なし。説明もいれない】

A ちょっと、ごめんなさいね。T駅に行きたいのだけど、どう行ったらいいのか困ってるの。
B T駅ですか？
A この地下鉄から降りたらすぐって話だったのに、見えてこないし、ここはT駅じゃないでしょう？
B そう、ですけど。
A じゃあ、あの案内はなんだったのかしら。
B ええと、近いには近いんですけど、歩くには遠いかも……。この道をちょっと歩くと右手に銀行があるんです。その銀行の角を右に曲がってまっすぐ行くとT駅には行けます。
A 近くはないのかしら？
B 15分くらい歩かないと……。
A ええ？！　この暑さの中を15分も歩くの？
B 地下鉄でここまで来たんですか？
A そうよ。
B あのう、もう一度同じ方面の地下鉄に乗ると、一駅ですけど。
A なんなの、それは！　この駅で降りて、徒歩3分ってあるから、ここで降りたのに！　また電車代を払って地下鉄乗れって言うの？
B はあ。
A 15分なんて！　この案内、嘘八百だわ！　もし、地下鉄に乗るとどれくらいかかるの？
B だいたい2、3分くらいだと思います。
A まったく！　バカにしてるのね！　何が徒歩3分よ！
B その案内は、本当にT駅なんですか？
A ええ！　ほら！
B 確かにT駅って書いてありますね。
A そうよ。
B でも、あのう。この案内、ここから地下鉄で3分って書いてあります……。
A え？
B ほら、ここに。地下鉄で3分って。
A あらやだ！　私遠くからきてるから、土地勘がなくて！
B そう、そういう時もありますよね。
A そう、そうなのよ。
B ええ、そうでしょうね。
A そうなのよ。じゃあ、ここの駅でまた地下鉄に乗ればいいのね。3分。
B ええ。T行きっていう電車に乗れば一駅ですよ。
A あなたが親切な方で助かったわ！
B はあ、まあ、良かったです。
A ありがとう。
B はあ。お役に立てて何よりです。
A まったく人騒がせねぇ。この案内！

*

Aはあわてんぼうで、自分のミスをあくまで認めないスタンスの人（中年以降の女性）を、BはAの勢いにのまれてはいるけど、自分のペースを崩さないタイプの人を想定してみた。

私はかなりの方向音痴なのに、知らない人によく道を聞かれたりする。こんな人には会ったことはないけど、面倒くさそう。。。

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