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子どもに残したい本③「おしっこちょっぴりもれたろう」著:ヨシタケシンスケ

みんな何かに困ってる。
それをわかってくれる人がいたら、嬉しい。
だから、ボクは仲間を探したい。

人間の根源的な願望が、コミカルに描かれたとっても優しい絵本です。

おしっこがちょっぴりもれてしまう、もれたろう君。お母さんに怒られるので困っています。
そして、同じ悩みを持つ人を探す旅に出ます。

「そとからみたら わかんないけど、みんな それぞれのひとにしか わかんない こまったことが あるんだな…。

そらは こんなに あおいのに、うみは こんなに ひろいのに、ぼくは ちょっぴりもれたろう。」
本文抜粋

みんな、それぞれに事情があって、でもそれって外からだとわからない。

外からだとわからないから、事情なんてないように思えてしまう。

そして「人より自分は困ってるんだ」なんて狭い思考に入ってしまう。

そんなときに、そっと諭してくれたのがこの絵本でした。

日々の暮らしで悩み事、困りごとは尽きません。

周りからしたら、そんな悩み…と思われることでも本人からしたら大問題なんです。

困りごと、悩み事があるとき、あなたはどんな行動をしますか?

友達に話を聞いてもらったり、本を読んで解決しようとしたり、ゲームやYouTubeに現実逃避もいいですよね。

もれたろう君は、仲間を探したんです。
「ひょっとして、あなたももれたろう?」と。

共感を求めたんです。

カウンセリング技法の超基礎であり、最大の治療効果(個人的意見)の「共感」。

ここで少し、共感について書きます

臨床心理学を専攻している人ならわかる、カウンセリング技法の共感。大学院の院内実習で、ひたすら練習させられました。

当時は共感=「うん、うん、わかります、辛いですね」のようなニュアンスの存在だと思っていたんです。

全然違うんです。

「うん、うん、あなたはそう感じてるんだね。私にも、一緒にその感覚、感じさせてね。失礼しますね。」なんです。

相手のなかで、共に感じるんです。

これは、知識や練習ではなかなか習得できないです。

個人的な意見ですが↓

本当に共感してもらった経験のある人じゃないと、人に共感するのは難しいと思います。
なぜなら、共感で癒やされるという感覚がわからないから。

わかってほしい」って人はよく言いますよね。

正直私、あの意味がよくわからなかったんです。私はあなたじゃないからわからんよ…(冷たい)って思ってました。

あの言葉の真意は「わかってほしい」じゃなくて「共感してほしい」なんですね。

つまり、こんなに悲しい。こんなに辛い。
「だから一緒に感じて欲しい」
という意味だったんだと最近気付きました。

もれたろう君を通して、臨床家としての技量について考えさせられました。

そして、大切な人が困っていたらそっと一緒に感じてあげられる、そんな人になりたいなと思わせてくれた絵本です。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。



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