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唐揚げ4/4【Vの庭先で肉食を】

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カラアゲを見つめる。
ヴィ連が、僕たちが、命がけで戦ってきた肉食という行為をあっさりと見せつけられてしまった。
戦友が命を捨てて守ったものを、という悔しさ。
たったこれだけのことのために、という可笑しさ。
ヴィ連は動物の命を守るために人の命を犠牲にするけど、この人たちは動物の命を食らうために人の命を犠牲にしている。
どっちが正しいのか分からない。
でも、
「ねえ、ひとつ聞いていい?」
「どうぞ」
「さっきの、イタダキマスってどういう意味?」
「あれか。日本という国の食事前の挨拶でね。動物か否かを問わず食材となった命とそれに関わった命に感謝を捧げるという意味だ」
「…」
何が正しいのか分からない。何も正しくないのかもしれない。
でも、少なくともイタダキマスと言ったときのアリサカからは、命に対する誠実さが感じられたんだ。
「イタダキマス」
カラアゲを受け取り恐る恐る齧る。
美味しい。
肉を咀嚼しながら、この肉に関わったたくさんの命を思い出していた。
思い出して、食べながらボロボロと泣いていた。


「ありがとう、アリサカ」
「礼を言うようなことじゃない。私は君の世界を破壊したんだ」
アリサカは複雑な表情で答える。本当にそう思っているのだろう。
「ううん。それは自分で選んだことだから。選択肢を、ありがとう」
「…そういう礼なら受け取ろう。ところで、行く当てはあるのかな?」
「ない…。ええと、」
「うん」
「僕をこの部隊に入れてくれないだろうか。一応、前の部隊じゃ一番強かったし、それに」
「いいよ」
ふう、と安堵の息を吐いたのはヴェクター。
「ただ1人最後まで生き残っていた君の実力は分かってたからね。自分から言うかだけが試験だったんだ。よかったよかった」
「さて、そうと決まれば歓迎パーティだな!ヴェクター!唐揚げは!?」
「山盛りです」
「よし!じゃあ、えーと」
「シグ」
「シグ!君に仲間を紹介しよう!」
唐揚げと一緒に天幕の外へ連れ出される。
空は、透き通るような青だった。

(終わり)

#小説 #逆噴射プラクティス #Vの庭先で肉食を #唐揚げ

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