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写真集が好きだ!印刷物が好きだ!紙とインクが好きだ!アナログが好きだ!

皆さんは、電子書籍元年という言葉をご存知でしょうか。

 今から11年前、「2010年」という年が、“電子書籍元年” と呼ばれています。

この年に、スマートフォンをはじめ、「iPad」や「Sony Reader」と言った電子書籍が観覧可能な端末が多く発売され、更に電子書籍を販売するネットストアなど、電子書籍を利用する上でのインフラ整備が完成した年だったと言われています。

まぁ元年と言われたものの、僕個人の肌感覚では電子書籍のユーザーはじわりじわり増えてきて、ここ数年で漸く世の中に浸透してきた印象があります。

実際に市場の利用者数はどうだったかは分からんですし、エビデンスを僕は持っていないですけどね…。笑

これも体感ですが、日頃から本を読み、本を愛する人は、本の内容と同じくらいページを捲る時間や、「紙」そのモノが好きだったりすることが、多い気がします。

タイトルに反して電子媒体の話をしてしまったのですが、写真集が好きで、印刷物が好きで、インクの匂いや紙の触り心地が好きで、アナログなものが好きで、なんなら収集癖まであって、本を所有したい気持ちは人並み以上の僕だとしても、電子書籍は利用しています。

今すぐ読みたい、早く情報が欲しい本があれば、電子書籍でサッと読んでしまいます。

漫画などは家に本が溜まらなくて良いですよね、逆にどうしても所有して読み返したい漫画や本などは電子書籍で読んだ後、書籍版を買って本棚に貯蔵します。

ただ、写真集はそうはいきません。

電子版の写真集は市場にはあまり出ていないのです。

何故なのだろう?と僕なりに考えてみました。


なんでアート系の写真集って電子書籍化され難いのん?

 まず、西洋の写真を額装して飾るタブロー(仏: tableau)の形式に対して、日本の写真界は昔から写真集を重要視してきた歴史があります。

   ※タブローは本来、宗教画などに多くある「壁画」対して、キャンパスに描き壁に飾りかける「絵画」という意味であり、しばしば曖昧な使用のされ方をする事もあります。

そもそも、西洋では重厚な絵画の歴史がありますね。

立派な洋館には主人の肖像画が飾られているイメージがありませんか?

西洋では古くから芸術は「宗教画」や、貴族など権力者の「肖像画」としての利用が主でした。

そして19世紀、写真が誕生し間もない頃、写真は絵画にとって変わる形で進化をしてきました。

故に、西洋では写真を額装をして壁に飾る事が当たり前の事なのです。

現在でもプリントの売買が盛んで、作家が作ったプリント(オリジナルプリント)や、その他アートピースなどを所有し、壁に飾る事がステータスでもあります。

    ※「オリジナルプリント」は、作家がプリンターに依頼する形も含む。

海外から多くの文化を輸入している日本でも、あまり根付いていない(或いは大衆化されていない)文化だと言えるでしょう。

西洋における写真展の目的は、オリジナルプリントを販売する場であり、写真集は「商品カタログ」の意味合いが強いと言われています。

僕を含め、日本の写真好きの方々は写真集を「商品カタログ」のような見方はされない方が多い印象がありますね。

それは多分、日本人が元来、書物の類が好きな民族だと言われている事と関係があるのではないか?と考えています。

日本の写真界における「写真集」は商品カタログではなく、

「写真集」という表現方法の一つ、写真集そのものが「アートピース」である。

という見方が強い印象があります。

日本の写真界では古くから写真作品のコンセプトに合わせ紙や印刷方法、体裁(デザイン)などに拘って写真集を制作する作家が多い事が特徴だと言えます。

特に、1960〜70年代の写真集は作りが凝っていて、細江英公が三島由紀夫を撮影した『薔薇刑 細江英公写真集』集英社 1963年や、鈴木清の自費出版写真集『流れの歌』(1972年)などが有名です。

当時、欧米ではニュー・トポグラフィクスやニューカラーの時代ですね。

写真好きな方の中では、オリジナルプリントの売り買いや、飾る事よりも、写真集を買う経験の方が身近なのではないでしょうか?

実際に僕も、僕の周りの写真好きな方も、そう言った傾向が強いように思います。

オリジナルプリントは、印刷物とはまた違う魅力があるので、日本でも欧米のようにもっと大衆の中でオリジナルプリントを売り買いする事が当たり前になったらいいな〜とは思うんですけどね。笑

著名な作家のオリジナルプリントは高価なので、懐に余裕が無いと厳しいですね。

そんな潤沢な資産を持ち合わせない方の強い味方!

それが「写真集」です!と、言うこともできますね〜!(怒られそう…笑)

電子書籍に芸術系の写真集が少ない理由をまとめると、


・日本の「写真集」は表現方法の一つであり、それ自体が「アートピース」として扱われているから。

   ※写真集を手にとってページを捲る、表紙に貼られた布や、紙の手触りに、インクの香り、と言った五感を使って作品を鑑賞するという事が重要視されているのかも知れません。

・日本人にとって書物は身近でいて、需要が高いから。

・日本では部屋に写真を飾ること、強いては写真(プリント)の売り買いという文化、概念が大衆化されていないから。

といった事が言えるのではないでしょうか?


写真集ってどうやって作るの?

写真集はオリジナルプリントよりも気軽に手にできる写真集と言えど、20世紀を経て積み上がった素晴らしい印刷技術により、オリジナルプリントに引けを取らないクオリティーの印刷物として仕上がっているものばかりです。笑

印刷技術や銀塩フィルムもそうなんですけれど、最近のアナログ製品は、19世紀、20世紀、21世紀と、非常に長い時間をかけて積み上げてきた技術が煮詰まっている状況であり、その集大成を今体感できることに価値を感じています。

ブックオフで買い漁った古い写真集や印刷物を見ていると、印刷技術が如何に試行錯誤され、クオリティが向上してきたか、実感しますね。

ところで、写真集はどうやって作られるかご存知ですか?

一冊の写真集を制作するのには多くの人が関わってきます。


まずは、写真作品を作る、「作家」:作品を制作します。

森山大道、荒木経惟(アラーキー)、佐内正文、川内倫子など。
それと、デザイナーさん

※デザイナーさんが出版社の方なのかフリーなのかは恐らくそれぞれでしょう。

写真集を販売をする、「出版社」:マーケティングを行います。

青幻舎、赤々舎、蒼穹舎、ナナロク社、リトルモア、筑摩書房など。

海外だとドイツのSTEIDL(シュタイデル)が有名ですね。

実際に印刷し製本する、「印刷会社」:印刷・製本など、書籍を制作します。

サンエムカラー、日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社など。


作家+デザイナーと、出版社と、印刷会社の共同作業なんですね〜。

基本的には出版社への売り込みが多いんですかね〜、また何かしら写真の賞を受賞してそのまま出版へ流れるとか、時には出版社の人に作家の作品が目に止まって写真集出版に漕ぎ着けたりする事もあるそうな。

また、出版社を介さず、作家が個人的に出版社に印刷を依頼し、自身で売り込んでいく自費出版をする人もいらっしゃいます。(自費出版といえば写真家の鈴木 清さんが有名ですね。)

あと、アートギャラリーが出版するパターンもあります。

20世紀は自費出版で世に出た写真集が多くありますが、印刷部数が少ないので市場ではプレミア価格になる事が多いです。

今、欧米や日本でもZINE(手作りの簡易的な印刷物)やダミーブック(自主制作の印刷物)と呼ばれる、印刷会社を介さず家庭のプリンターで印刷した本、或いは中の印刷だけ印刷会社に頼んで、製本は自身でやる、と言った手製で小ロットの本も多く出回っています。

印刷会社で出来ない、或いは、体裁が複雑で制作にコストがかかりすぎる印刷物を手製で制作する方も増えてきているんですね〜。

きっと有名になったらきっとプレミア写真集になるんでしょうね〜。笑

写真集の制作に関わる現場の貴重な映像がYoutubeで上がっていたので、

ぜひ、ご覧になってみて下さい。

最近のYoutubeって良いですよね、最高です。

なかなか現場の映像って個人で見る事ができないのですが、公開していただいていて感謝感謝であります。

こちらは、株式会社東京印書館という印刷会社にてプリンティング・ディレクターを務めていらっしゃる高栁昇さんが公開されているチャンネルです。

作家とデザイナーの要望を聞き、どう印刷するか設計する、印刷における非常に大切なお仕事をなさっておられます。

動画を拝見するとよくわかりますよね、どのインクをどれだけで刷るか〜とか非常に細かな打ち合わせを経て、印刷物は仕上がります。

Youtubeはメディアとして非常に優秀な媒体ですね。

メディアといえば、書籍、定期刊行物(雑誌)、ムック、テレビ、ラジオ、新聞、インターネットなど様々ある昨今ですが、今はYoutubeやSNSなどソーシャルメディアで個人が発信する情報から、必要な情報を得ることも重要な時代になりました。

そして、情報の幅も大きく広がったように思います。

メディアによって速報性や信憑性などの特徴があるのですが、それはまた別の機会にお話しできればと思います。

お付き合いありがとうございました。








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