sue

やたらと大人びた長女(現在12歳)とやたらと赤ちゃんぽい長男(現在6歳:発達障害ダーク…

sue

やたらと大人びた長女(現在12歳)とやたらと赤ちゃんぽい長男(現在6歳:発達障害ダークグレー)を子育て中。 読んだ本や見た映画の感想など。日常の事も。おしゃべりが好きです。お気軽にコメントください。お返事します。

最近の記事

読書レビュー)宮部みゆき「曼殊沙華」

(2008年 角川書店「三島屋変調百物語事始め「おそろし」に収録) 彼岸花の季節。 彼岸花(曼珠沙華)をみるといつも思い出す短編小説がある。 宮部みゆきの三島屋変調百物語事始の中に収められた「曼珠沙華」という作品で、人の罪の意識を曼殊沙華の中に浮かぶ「顔」という怪異を通して描いた物語だ。 舞台は江戸時代。両親を失った子供達の長兄は懸命に働いて愛情深く弟妹を育てていた。しかし兄は激情家な所もあり、些細なきっかけで人を殺めてしまい流刑に処される。優しかった兄は弟妹に

    • 採血が怖いときに。

      実は私は採血が怖い。 下の子を妊娠中、熱中症患者が多発していた7年前の8月、炎天下を歩いて病院に行ったのが悪かったのか、妊婦検診の採血後に気分が悪くなり、心臓が痛いほどドキドキしてシャッターが下りたように目の前が暗くなって、椅子から滑り落ちてしまった。よくあることなのか看護師さん達は「あらあら、ベットに行きましょうねぇ」という感じで妊婦の私を軽々と支え起こして介抱してくれて事なきをえたのだけど。 でも、私は普段は頑丈で採血で気分悪くなった経験なんかないからびっくりした。そ

      • 「強く生きろよ」が悔しくて。

        朝のコーヒー飲みながら新聞をななめ読みでしてたら、新聞下段の広告スペースに制服姿のかわいい女の子の写真が目に止まりました。新聞社主催の「あなたの心にとどいた大切な言葉」という中高生向けの作文コンテストのお知らせのようです。 私だったら何を書くかなぁ。みなさんあります?心に届いてずっと残っている言葉。私はあります。 中学卒業式終了後、担任の男の先生は生徒のひとりひとりと握手したんです。私と握手した時、先生は言いました。「強く生きろよ」。私はじわぁと涙が出てきました。悔しくて

        • 「もう彼によって私の人生が脅かされることはない。」

          前回に投稿した「82年生まれ、キム・ジヨン」の読書レポートの内容に関連して、個人的な体験を記録しておこうかな、と思う。 あまり気持ちのいい話でもないかもしれないが、私も同じ感情を経験したことがある、という人がいるに違いないと思うから。 母の死後、私は実父のことが強烈な重荷だった。父は愛情深い人でもあったが、人間関係、家計、規律や習慣などのバランスをとりながら日常を組み立てる、という文化的生活維持の技術に決定的に欠け、母なる役割の女性がいなければ破綻しないぎりぎり程度の生活し

        読書レビュー)宮部みゆき「曼殊沙華」

          読書のレポート)「82年生まれ、キム・ジヨン」 2018 チョ・ナムジュ (著), 斎藤 真理子 (翻訳)

          ~女性達の内面にさえも深く根付いた差別が故に~ 描かれた差別は読者を驚かせるような話ではなく、誰もが見聞きしたことのある、おそらく世界中でありふれたものばかりだ。この小説が女性達の人生の描く目的が、社会構造的または文化的に女性がいかに差別を受けてきたか、という糾弾であることは明らかなのだが、強烈な差別なエピソードが挿入されて、怒りの共感を呼ぶようには書かれていない。決してどこかで目にした批判のような男性嫌悪を呼び起こすものでもない。 「82年生まれ、キム・ジヨン」は昨年か

          読書のレポート)「82年生まれ、キム・ジヨン」 2018 チョ・ナムジュ (著), 斎藤 真理子 (翻訳)

          映画鑑賞の記録 「美女と野獣」  〜物語の始まりは孤独〜

          「美女と野獣」 (原題:BEAUTY AND THE BEAST)2017年 主演:エマ・ワトソン ダン・スティーヴンス 監督:ビル・コンドン 私はディズニーの「美女と野獣」は脚本も音楽もとても良くできていると感心するし、アニメもミュージカルもエンターテイメントとして大好きだ。ディズニー的ハッピーエンドが好みなわけじゃない。ただ、「自分みたいなものが愛されるわけない・・・でも、もしかしたら・・・」という野獣の葛藤は私が思春期に持っていたものと同じものだ。私は自分は醜く他人

          映画鑑賞の記録 「美女と野獣」  〜物語の始まりは孤独〜

          読書レポート) 粟田隆子 「ぼそぼそ声のフェミニズム」作品社 2019

          フェミニズムの論客としては著者のプロフィールの意外性が群を抜いている。 彼女は現在パートタイムで働き、生活費の足りない部分を生活保護で補っているという。フェミニストといえば、高学歴で頭の回転が早く、舌鋒鋭い大学の先生やジャーナリスト、というイメージが一般的かと思うが、そのイメージを思い切り裏切っている。その著者の属性の珍しさもあってこの本はとても売れており、現在(2020年4月)大手の通販サイトでは品切れになっている。 高校は不登校を経験し、不登校の最中に女性センターの市

          読書レポート) 粟田隆子 「ぼそぼそ声のフェミニズム」作品社 2019

          映画鑑賞の記録 「クレイマー、クレイマー」~親子愛とは別のこと~

          「クレイマー、クレイマー」(原題: Kramer vs. Kramer)1979年 出演:ダスティン・ホフマン , メリル・ストリープ 監督: ロバート・ベントン 昔見たことある映画だからストーリーを知っているよ、って思っていた映画を改めて見たら結末が記憶と違っていた!という経験 がある人いませんか? 私の「クレイマー、クレイマー」はまさにそれでした。最初に見たのは20年ぐらい前だったような気がします。結末の記憶違いのみならず、当時の私の映画の理解も現在の私の理解とは全

          映画鑑賞の記録 「クレイマー、クレイマー」~親子愛とは別のこと~

          私が年賀状をやめるまで

          あけましておめでとうございます。 本年もよろしくお願いいたします。 我が家に来る年賀状の数が一番多いのは娘です。学校関係の友達から数十枚頂きます。多くが、また遊ぼうね!!今年も仲良くしようね!!という文字の踊る可愛いものです。 それに引き換え我々夫婦宛ての年賀状は二人合わせても10枚に足りません。手書きの言葉のついているものはそのうち2枚ぐらいです。かつて100枚を超える年賀状のやり取りもあったのですが。 我々が年賀状を頂かなくなったのには明らかな理由があって、10年ほ

          私が年賀状をやめるまで

          読書レポート「個性」津村記久子:大事な人の目に私という実体が映らない

          津村記久子さんの短編集「浮遊霊ブラジル」に収録されている「個性」がとてもよかった。川端康成文学賞受賞作品の「給水塔と亀」もよかったが、私が一番ドキリとしたのは「個性」だった。 個性とか、私が私であること、というテーマは、もうすっかり手垢のついた素材かと思ったら、なんとまぁ、あっさりすっきり、ユニークに、快刀乱麻に課題をぶった切った作品。そうきたかぁと思う。しかしそうそう、そういうことよね、とも思う。 就職活動を前に世間の常識とか目線に怯えて自らの外見的個性を押しつぶしてし

          読書レポート「個性」津村記久子:大事な人の目に私という実体が映らない

          酔っぱらいに敬意を

          年末が近づいてくると思い出す二つの思い出がある。 ** 娘6歳、息子0歳の時は、息子をベビーカーにのせて母子でよく電車でお出かけした。電車の移動は大変だけど、幼い子を連れていると「かわいいなぁ」「何年生?」「何カ月?」と声をかけられることも多い。(逆に泣いていると「うるっさいなぁ!」とか言われることもあるが、気にしない気にしない。) あの日、12月のクリスマスイルミネーションが華やかだったのをよく覚えている。 駅の改札内でエレベーターを待っていると、青年がベビーカーを

          酔っぱらいに敬意を

          たったそれっぽっちのことではない。うちの子にとっては。

          先週末は息子の保育所の生活発表会なるものだった。 半年前の夏祭りでの歌とダンスの披露の際、息子(発達に凸凹が指摘され医師の診断順番待ち中)はいつもと違う雰囲気に狼狽のあまり舞台上でひとり踊りだし、規定の歌とダンスを拒否して舞台袖に逃げてた。(客席から丸見えだし・・・)さてどうなることやら。 ①縦割り遊び 年長さんが年中年少さんをリードしながら音楽に合わせて電車になる、などのゆるい遊びを披露するもの。息子の場合、どっちが年長さんなんだか・・・、という気配ではあったが、かつて

          たったそれっぽっちのことではない。うちの子にとっては。

          ご飯ぬいたからって教育的効果はない。

          相変わらず私と12歳の娘は喧嘩ばかりしている。 一週間前の喧嘩はこんな感じ。 母:「そんな言い草は許せません。顔見てご飯たべたくない。晩御飯は食べないでよろしい。二階に上がりなさい。」 娘:「はぁ???なら二階で食べるから。ご飯食べさせないなんて親としての役割をどう考えてるん?だいたいご飯抜いたからって私が反省するわけではないねんで?」 分かる人にはわかると思うが、「ご飯ぬいたからって教育的効果はない。」それはその通りであり、娘はこの手の罰が、ある側面において親の力の誇

          ご飯ぬいたからって教育的効果はない。

          映画鑑賞の記録 「ラヴェンダーの咲く庭で」

          「ラヴェンダーの咲く庭で」(2004年 原題:Ladies In Lavender) 監督/脚本 チャールズ ダンス イギリスの田舎を舞台に二人の老姉妹に起こったひと夏の出来事を描いた映画。 海辺に暮らす老姉妹は難破した船から投げ出されたらしい外国人の青年を助ける。言葉は通じなかったが、彼を介抱し共に暮らすことは老姉妹には楽しいことだった。しかし、老姉妹のうちの妹にとっては青年の存在は友人や家族ではなかった。憧れをもってみつめる恋の対象だった。その恋はあまりにも不釣り合い

          映画鑑賞の記録 「ラヴェンダーの咲く庭で」

          優しさとは技術

          優しさとは技術 息子には発達の凸凹がある。まだ5歳なのでその程度や内容がはっきりしないのだが、どんな障害にしろ重度というわけではなさそうだ。ただ言葉の発達は明らかに独特で、独自の文法や単語の意味付でもって話すので、保育所ではお友達に「何いってるのかわからへん・・・。」とよく言われてしまっている。 ただし、息子は保育所の適切なサポートに支えられて奇跡的なほどに自己肯定感に溢れ、穏やかで朗らかだ。 保育所では年相応に喧嘩もしてくる。いっときは唾を吐くとか砂をかけるとかの乱暴

          優しさとは技術

          映画鑑賞の記録 「彼らが本気で編むときは」(2017年) 荻上直子監督、生田斗真主演

          LGBTや育児放棄などの要素からアメリカ映画「チョコレートドーナツ」(2012年 原題:ANY DAY NOW 監督:トラヴィス・ファイン)と比較するレビューもいくつか見たが、確かに比べるとこちらにはドラマチックさがないのだけれど、私はとても好きな映画だった。 登場人物のの「怒り」「悲しみ」の処理方法が内向的で、それが歯がゆく腹が立つという人もいるかもしれないけど、それはそれでありかもとも思う。好きになれなくて切り捨てたものだけれど、それを悼んで供養するというシーンがある。

          映画鑑賞の記録 「彼らが本気で編むときは」(2017年) 荻上直子監督、生田斗真主演