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共通する”何か”

2023/11/7〜2023/11/8

朝食の買い出しから始まる一日。

といっても
毎日40円のフランスパン1つだけ

コンヤに来て感じる事は色々あるが、印象的なのは街の静けさだ。
店のアナウンスや呼び込み、信号に至るまでBGMが一切聴こえない。
といっても、街ではどこを見渡しても皆、紅茶を飲みながら談笑して楽しそうだ。

地方の中核でありながら、この街にはとても穏やかな時間が流れている。


街で遊ぶ子供達

笑えたらそれで十分

改めてそんな気にさせてくれる笑顔




翌朝。
宿の相部屋で外出の準備をしていると、スペイン人ルームメイトの持つ段ボールが見えた。
そこには「KONYA」の文字。
聞くと、ヒッチハイクでこの街に来て、今日も同じ様にしてカッパドキアへ行くのだという。

思えば私も韓国でヒッチハイクをしていた。
結果こそ情けなかったが、そこには温かい人達とのエピソードが生まれ、今も大事な思い出になっている。

そしてまた別のルームメイト、今度は同年代のトルコ人男性と話が弾む。

3年かけて世界一周しようとしていること
お金が少ないので毎日40円のパン生活

それを聞いた彼、ウトゥクさんは私を近所のカフェに誘ってくれた。

生野菜サラダとチーズパスタ
鶏肉とマッシュルームのクリーム煮

味付けを抑え、素材を際立たせている事がわかる
やはりトルコ料理はセンスが良い
私とウトゥクさん

申し訳なくも、また奢ってもらってしまった…
本当にありがたい…!

「日本では食事中に喋ってはいけないの?」

「いや、そんな事ないよ。昔はそうだったみたいだけど、今は皆コミュニケーションを楽しみながら食事しているよ」

英語がほとんど通じないトルコにおいて彼はそれが堪能で、私も久々の会話らしい会話につい、止まらなくなってしまう。

「場所を変えよう。ターキッシュ・コーヒーか紅茶、どっちが好き?」

そう聞いた彼は “どちらも好き” と答えた私に
「何言ってるんだ、オレが尋ねているんだから、君が決めないと」
と笑い、正直また奢ってくださる気持ちを察した私は比較的安価であろう紅茶を選んだ。

そして別のカフェにて、運ばれてきたのは意外にもターキッシュ・コーヒー。
私の遠慮に気付いたのか、ウトゥクさんがオーダーしてくれたようだ。
マスチックと呼ばれるガム(天然樹液)入りのそれは、少しの粘性と鼻から抜ける爽やかな香りがコーヒーの濃さと相まって、何とも優雅な味わい。
つくづく、トルコの味覚センスには脱帽させられる。

それだけではなく、なんとその後に紅茶まで…!

結局、どちらもご馳走になってしまった…。


「今日の予定は?」
「この後どこに行くの?」

「バスに乗って、シッレという郊外の地区に行こうかと」

それを聞いたウトゥクさんは

「よし、一緒に行こう」

と、今度はまさか自身の所有する車に私を乗せて、連れて行ってくれたのである。

「数時間後にオレはイズミルに向けて出発しなきゃならないから、帰りはごめん。バスで戻ってもらう事になる」

ちなみに、ここから西の大都市イズミルへは約560Km。そんな長距離運転の直前にも関わらず今、私に付き合ってくれている。

「ごめんだなんて…!行きを乗せてくれるだけで十分ありがたいよ!」

そんな会話をしつつ車で約30分。
目的地のシッレにある公園へ。

Sille Baraj Parkı


自分の呼吸が目立つほどの静寂。
風の音、小鳥のさえずりすら聞こえない。

景色を堪能し、年甲斐もなく遊具ではしゃぐ中、ウトゥクさんはコンヤという街、そしてトルコやイスラム教徒について色々と教えてくれた。

保守的なコンヤは、世俗に向かうトルコ国内において少し特殊な街。
故に人目につく飲酒は避けなければならないこと。

ラマダン中は日中ほとんどの店が閉まり、断食を行う為、中には空腹でイライラしてる人もいるから気をつけた方が良いこと。

トルコとギリシャの複雑な関係など。


結局、彼は最後まで私と一緒に付き合ってくれた後、車で中心地付近のバスターミナルまで送ってくれた。

「今日はありがとう。もしイズミルに来たら、また連絡してよ」

「こちらこそ、色々と本当にありがとう!もちろん、イズミルに行ったら必ず連絡するよ!」

そう言って握手をし、彼の車は再び発進。
私は見えなくなるまで手を振り、精一杯の気持ちを伝えた。

『イズミルか…』

これから私が向かう方向とは真逆だが、こんな御縁があったなら是非行ってみたい。


バスターミナル付近のトラム乗り場
トラムとは所謂、路面電車だ


時刻20:00。
宿で仮眠した後、既に暗くなった外階段の踊り場。
一人佇んでいると、何度か顔を合わせているトルコ人男性が。
ここは喫煙スペースにもなっているので、時折こうして会うのだ。
英語が苦手な彼だが写真が上手で、それを見ながら翻訳アプリで会話。
この宿を拠点に介護職として働き、ずっとコンヤに住む予定らしい。

と、今度は初めて会う男性。
香港人の彼、ホン君は対象的に仕事を辞めて行き先も期間も決めずにしばらく旅を続けるとの事。
明日にはコンヤを離れ、地中海沿岸の街アンタルヤに向かうみたいだ。



国籍も年齢も宗教感も違う者同士
しかし共通する“何か”で繋がる


それぞれのスタンス
それぞれの事情


安宿のドミトリーで交差しては離れていく


そこに旅情を感じながら
ぼんやりとオレンジ色に光る街灯を眺める


そろそろ今年も終わりが近づいてきた


どこで誰と
何をしながら年の瀬を迎えるのか


コンヤの街は相変わらず穏やかだ



2023年3月から世界中を旅して周り、その時の出来事や感じた事を極力リアルタイムで綴っています。 なので今後どうなるかは私にもわかりません。 その様子を楽しんで頂けましたら幸いです。 サポートは旅の活動費にありがたく使用させて頂きます。 もし良ければ、宜しくお願いいたします。