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将来の夢

2023/10/25

イスタンブール4日目、チェックアウト当日。
ハザーが9:00までは宿に居ると言っていたので、挨拶をしに受付へ。

時間ギリギリだったので既に退勤したかも知れないと思ったが、彼は椅子に座って眠っていた。

昨日あれだけお世話をしてくれた後の夜勤だ、疲れて当然のはず。

しばらく見守っていると彼は目を覚まし、開口一番
「マサキ…!」
良かった、元気そうだ。足の調子も戻った様に見える。


「朝食はもう食べた?」

「いや、まだ食べてないよ」

「じゃあペストリーを買いに行こう」

彼に連れられ、ホステル近くの洋菓子店へ。

イスタンブールの店は何処もかしこも洒落ている。
陳列も色合わせから積み方まで、視覚で楽しませる様に工夫されている。

ハザーにオススメを選んでもらい、レジへ。
彼はもう当たり前の様に財布を取り出し、私の分まで払ってくれようとする。

「いやいや、払うよ」
トルコ紙幣を渡そうとするが、彼は受け取らない。

「昨日も君が払ってくれたんだから、ここは俺が…」



「マサキ!オレが払うって言ってるだろ!」


彼の目はしっかり笑っていたが、初めての強い口調だった。
さながら“もうわかったから!”といった風である。

その声で昨夜の疑問が解けた気がする。

『やっぱり、厚意には素直に甘えるべき。断るのは失礼なんだな』と。


ミートパイ

サクサクの生地とバターの風味
アッサリして食べやすく
それでいながら奥行きがある
クリームとバナナが乗った一口タルト

なんというか…
今まで各国で食べてきた物と明確に違うのは
トルコ料理は”引き算が上手”ということ

調和された、やり過ぎない味がとにかく洒落ている

これは少しだけバターを効かせたタルト生地に
極あっさりの生クリーム
それがバナナの甘さを引き立てている

全てに作り手の意図を感じる気がして
食べる毎に頬が緩む
他のお客さんの前で…
ターキッシュ・コーヒーまで淹れてもらい…
いや
ここは有難く厚意に預かろう


「マサキ!メタルを聴こう♪」

他のお客さんがいなくなったタイミングで、彼は仕事用のパソコンからデス・メタルを流す。

洒落たホステルの空気が一変する。

大丈夫なんだろうか…しかし、そんな事は気にしないでおこう。
彼と過ごす時間はもう残り僅かなのだ。


爽やかな朝の陽射し、穏やかな路地裏に響くブラストビート。

続いて
「これ知ってる?」
と、日本アニメのオープニング曲だという、そのタイトルを私に見せた。



【殺してやるばんざーい!】





ハザー…

その曲は知らないな…




気付くと時刻は14:00。
退勤時間を大幅に過ぎて尚、私と遊んでくれた彼を見送る。

メトロの駅まで歩く彼の足取りは重かった。
アルコールのせいではない。

ゆっくり、ゆっくりと進み、駅構内の写真展を見て回り、いよいよ改札口の前。


「また会おう」

「お元気で」


握手を交わし、改札を抜ける彼を見届ける。
そしてまた手を振り、惜しむ気持ちを振り払うかの様に背を向ける。


彼のおかげで
最高のイスタンブール滞在となった

感謝すると共に
ハザーが将来、漫画家になり
その作品を読む日を本当に楽しみにしている

ありがとうハザー!
また!


2023年3月から世界中を旅して周り、その時の出来事や感じた事を極力リアルタイムで綴っています。 なので今後どうなるかは私にもわかりません。 その様子を楽しんで頂けましたら幸いです。 サポートは旅の活動費にありがたく使用させて頂きます。 もし良ければ、宜しくお願いいたします。