極まる強運
2023/11/16
早朝5:30起床。
まだ薄暗い道を丘の上へと歩く。
わざわざ丘を上ったのは、より見晴らしの良い場所から熱気球を見る為。
それともう一つ、日の出を見たかったのだ。
しかし頂上では思いがけない景色が。
どうやらこの日も気球は飛ばないみたいだ。
丘の頂上へ来る人はほとんどいない。
皆どこからか事前に情報を得ているらしい。
だが、そのおかげで素晴らしい景色をゆっくりと堪能できた。
もう気球を見なくても良いと思えるくらいの絶景だった。
気温は一桁。冷たい風を2時間近く受けた体は相当に冷えていたので、一旦宿へと戻る。
そしてシャワーを浴び、一息ついた頃にメッセージが。
ヤッコからだ!
コンヤで部屋を共にし
自転車でカッパドキアへ向かった彼と
ヒッチハイクで辿り着いた私は
200km以上先のこの街ギョレメで
再び旅路が重なったのだ
そして彼の寝泊まりしているキャンプ場で
「夕方に会おう」
とメッセージを返した
時刻11:00。
約束の時間までややしばらくあるので、再び外出して隣町のウチヒサールまで散歩。
何やら有名な城があるらしい。
時刻15:00。
流石に初日の豪華な部屋は続くわけもなく、ドミトリーのベッドで少し休んで、そろそろヤッコの待つキャンプ場に行こうかと思った矢先
「Where are you from?」
隣から不意に声を掛けられ、日本と答えると
「サンセットを見に行かない?」
と意外で唐突な提案をされた。
彼の名はサンといい、端正な顔立ちの若い香港人。
「これから友達と会うんだけど、その後で良い?」
と返すと彼は頷き、一緒に宿を出た。
しかし
外はまさかの大雨
ついさっきまでは気持ち良く晴れていたのが一転、嵐となり急遽、自分のレインコートをサンに渡して2km離れたキャンプ場へ。
ヤッコは相変わらず、といっても数日前にも会っていたのだから当然だが、元気そうで何より。
サンセットを見た後にまた合流して、3人で食事をする事になった。
明日、ヤッコは再び自転車でこの街を離れるという。
別れ際、彼は私にカッパドキアの奇岩をモチーフにした小さな置物を買ってくれた。
そして再会を約束し、止まぬ雨に濡れながら私とサンは宿へ。
それから2時間くらいだろうか。
シャワーを浴びてベッドで寛いでいたのだが、異変に気付き一瞬息が止まる。
スマホが無い…!
ポケット、バッグ、ベッドの下…。
どこにも見当たらない…!
やっちまった…!
おそらく先程のレストランか、どこかの道端に落としたのだろう。
そう直感し、サンに事情を伝えて1人外に飛び出す。
時刻は既に22:00過ぎ。
街の灯りがあるとはいえ、雨で濡れた路面はそれに反射してよく見えない。
私のスマホカバーは黒なので尚更だ。
ましてや数時間前の事、観光客で溢れる道端にずっと落ちて残っているわけがない。
それでも
簡単に諦めるわけにはいかない…!
寒空の下、丘の上や街中、キャンプ場周辺まで心臓をバクバクさせながら探す。
レストランは既に営業を終えていた。
いやぁ…
これ絶対に取られてるわ…
散々歩き回って、冷静になる。
頼みの綱は既に閉まっていたレストランだが、今夜はもうどうしようもないので明日に賭け、宿近くのスーパーマーケットへ。
そこで一応、ダメ元で聞いてみる。
「スマートフォンを落としてしまったんですが、心当たりはありませんか?」
するとオーナーは訝しげな目で私を見つめ、自分のスマートフォンから画像を見せる。
まさか…
私のスマートフォンを拾った人が
フェイスブックで持ち主(私)を探している…!
日本を出国する際
たまたまスマートフォンに入れておいた
友人の名刺
その日本語を見て
「落とした人は日本人かもしれない」
とSNSで呼び掛けてくれていたのだ…!
オーナーは私が本当に持ち主なのか少し疑う様子だったが、信用してくれたようで拾ったSNS投稿者に連絡を取ってくれた。
そしてすぐに拾ってくれた方が到着。
私を見つけてスマートフォンを取り出す。
「これだよね?」
違うっ……!
「いえ、これは私の物ではありません…!」
そう答えると拾い主はニコッと笑い
「冗談、これは私の物だ」
と言って、ポケットからもう一つのスマートフォンを取り出す。
「はい!これですっ…!!」
それにしても
日本人への信用にはいつも驚かされる
そして我ながら
強運…!
2023年3月から世界中を旅して周り、その時の出来事や感じた事を極力リアルタイムで綴っています。 なので今後どうなるかは私にもわかりません。 その様子を楽しんで頂けましたら幸いです。 サポートは旅の活動費にありがたく使用させて頂きます。 もし良ければ、宜しくお願いいたします。