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オスカー・ワイルドの入口①「サロメ」


(ややネタバレ)
オスカー・ワイルドは、ディケンズやエリオットらの後の世代、19世紀末を代表する作家です。

耽美主義、デカダンス、芸術のための芸術・・・これらの呼称からワイルドは「とっつきにくそう?」と敬遠されがちな面もありますが、「サロメ」は比較的読みやすい作品です。

文庫で60ページほどの戯曲なので、ストレスも少なく読了できるでしょう。聖書の挿話が土台となっていますが、元の話の知識は必須ではありません。
ただ、アクが強く濃密な内容なので、好き嫌いがはっきり分かれるかも知れません。

主な登場人物は、ユダヤの副王ヘロデとその妻ヘロデヤ(まぎらわしい・・・)。そしてヘロデヤの連れ子である妖艶な娘サロメと、預言者ヨカナーン(及びその生首)です。
 
サロメの実父(母ヘロデアの元夫)は、ヘロデ副王の兄です。粗暴で好色なヘロデ副王はこの兄を殺害し、妻と娘を手に入れたのでした。

 筋はざっくりと「妖しい美女サロメが、なぜか預言者ヨカナーンの生首を激しく欲しがる話」です。

「ヨカナーン、ヨカナーン」と連呼するサロメの錯乱、彼女への欲情を露わにするヘロデ、終始激しいヒステリー状態のヘロデヤ。
重く濁った混沌が渦巻き、物語は狂気の激流となって一気に加速します。そして最後の場面、全てを断ち切るヘロデの一撃が強烈です。

好みに合う人は、倫理を超えた妙味を堪能することができるでしょうが、苦手な人にとっては醜悪な猟奇ものでしかないかも知れません。
また、悲劇ととるか喜劇と感じるか、ここも分かれるところでしょう。
⇒「獄中記」に続く


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