「~という前提」で進む世界

ちょっと実験の話をしてみましょう.理科,化学,生物学,物理学,地学,工学,熱力学,量子力学,機械工学,数学...色んな学問では簡単なものから複雑な実験が行われて行きます.実際に行うことができない規模の実験になると物理エンジンを用いたシミュレーションやスパコンの演算を用いてシミュレーションを行うこともあるでしょう.

いつかの物理学かの実験で,「空気抵抗を〇〇,重力を○○として計測すること」という条件下で実験をやったことがあります.内容は覚えてませんが,座学で習った公式などを現実世界で成り立つことを確認してみよう,という趣旨でした.
実験の班ではそれぞれ違った結果が出ます.理想的な結果から教授も想定していない結果まで.何が要因となってその結果が出てきたのかを考察してレポート提出をする.仮置きの条件やその他の外乱が原因で実験手順自体は間違っていなかった,という趣旨のレポートを出して再提出を食らった覚えがありますが,そんなこともあります.

数学の証明問題では「~~を……と仮定して考えてみる」という解き方があります.中学で習う仮定法ですよね.仮定として置いた条件で証明できるかどうかを確かめる作業です.


世の中で起きうることを本当に証明する・検証するにはありとあらゆる"事実"が必要になります.いかなるものも外乱になる中で理論上の結果と実際の結果を合わせに行くのはものすごく大変なことだと,大学時代に学びました.世の中そんな単純にはいかないし上手くできてはいない,と.


さて,社会に出ると仮定や条件ではない別の言葉が出てきます.

『前提』というワード.

そしてその『前提』をもとに会議や仕事が進んでいきます.

さぁ,その『前提』というのはどれくらい正しいのでしょうか?



今日はそんなお話.



***
相手の心や考え方なんてのはすべてわからない.何かの話を進める時には同じ目線に立って話していくとスムーズだ.
会社では,この時の「同じ目線」に立つ行為が『前提』となっている.

今後の業務について.予想について.戦略を立てるにあたって.そんな話をする時に,まずは『前提』を合わせておく.そうすると,スタート地点はみんな同じだから議論としてはものすごく運びやすい.


だけども実際はそうなのだろうか?


『前提』の根拠はどこにも書かれていないし,なんなら他の外乱を考慮しているわけでもなさそう.ただ『前提』を踏まえて聞くと筋は通っているし納得できそうな内容だけれども,どことなく,とりあえず「数年後には何とかなってる」で終わらせそうな雰囲気が出ている.

たしかに先のことはわからないし,今のことも少ししかわからない.そんな中考えだした『前提』通りに物事は進むのだろうか……
そしてその結果について誰かが考察してレポートをするのだろうか……


『前提』の正しさもわからない状況で物事が進んでいく世界にいることに改めて気づいた.
「一寸先は闇」とはまさにこういうことなのだろう.みんな責められたくないし,独りにはなりたくない.責任を背負う覚悟は相当な実力者しか持てない.だから,みんなで寄せ集まっておしくらまんじゅうをしながら前に進んでいるんだろう.舵取りは誰かに任せて,自分たちはおしくらまんじゅうをして『前提』に納得し合いながら言われた方向うに進むのだろう.

何が正しいのかもわからない世界.その海で浮かぶ船はいったいどこに向かうのだろう.『前提』というレールを敷かれ,流れた先には滝か渦か.

実験の時みたく,そもそもの前提条件から疑ってみても良いはずなんだけど,きっとそんなに世界は待ってくれないんだろうなぁ.


結局は誰が納得して責任を持つか.それに尽きてしまう気がした3日目.

理論や理想論では物事は進まない,そんなことはわかっている.けれども,今自分たちが立っている足元は本当に盤石なのかい?あの時の感覚が麻痺してやいないかい?

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