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読書日記

図書館から借りた本のうちの1冊を読み終えたけど、あまり私の好みではなかった。

継続的に本を読んでいると「ちっとも刺さらない本」に出会うことがある。傾向としては、どうも「筆の早い」かんじのする作家さんは苦手なようだ。多作なかたや作品によって作風がガラリと変わるかたもすこしあやしい。

作家さんの筆の早さを調べて読んでいるわけじゃないので実際のところはわからないのだけど、読んでいるとなんとなく「筆がはやそうだなぁ」とかんじるときがある。描写や人物の感情がテンプレートに沿っているようにかんじるというか。

全体のストーリーよりも一文一文が粒だっているかのほうが気になるので「一日机の前に座っていて2行しか進みませんでした」みたいな作家さんを好きになりがち。

さて、図書館から借りたもう一冊は宇野千代さんの『一ぺんに春風が吹いて来た』。こちらはまだ読み終わっていないけど、やはり私の好みだと思う。

同居人(旦那ではない)が亡くなったときの戒名についての記述が印象に残っている。

私はこの戒名をとても早く覚えた。しかし、意味のよく分からぬ字がある。辞書を引いて見てもよく分からぬ。分からないままに、自分勝手に解釈して、日に何十回も、お経の代りに読んでゐる中に、何となく意味が分かったやうな気がしてゐる。

『一ぺんに春風が吹いて来た』宇野千代

この一連の記述がすべて新鮮だった。戒名を覚えることも、意味を解釈することも、日に何十回も唱えることも、私はこれまで生きてきて一度もそうするものだと考えたことがない。

それでもここの文章がすきだなと思う。故人との親しさと、宇野千代さんの積極性と、この時代の価値観とがぎっしり詰まっている。

今年はあと何冊読めるかなぁ。


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