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ICT技術を活用した都有地のモニタリング

UPGRADE with TOKYO 第27回(テーマ「ICT技術を活用した都有地のモニタリング」)を開催しました

東京都が抱えるさまざまな課題の解決に向け、これまでにない製品・サービスをスタートアップ企業が紹介するピッチイベント「UPGRADE with TOKYO」が開催されました。第27回目となる今回のテーマは「ICT技術を活用した都有地のモニタリング」。ディープラーニングやDX関連の企業など5社がピッチに臨み、異業種連携によって社会課題の解決を進めている一般社団法人MIKATAプロフェッショナルズが優勝しました。また、JR東日本スタートアップ発ベンチャーのCalTa(カルタ)株式会社が審査員特別賞を受賞しました。

土地の状況を迅速に把握することが、被害を最小限にとどめる

東京都財務局は、行政目的の利用が終了した土地等の財産を管理しています。対象は都内全域ですが、その中には山間部や急こう配の傾斜地も含まれています。こうしたエリアで自然災害による被害を最小限にとどめるには、土地の異常を早期かつ的確に把握することが必要です。
しかし、定期巡回や住民による情報提供だけでは、微妙な変化や異常を事前に把握するのは困難です。実際、甚大な被害をもたらした「令和元年 東日本台風」では、管理する土地で法面が崩壊し、隣接した道路に土砂が流れ込み、車両の通行を阻害しました。
こうした事態を未然に防ぐため、ICT(情報通信技術)を活用した、状況監視や危険性の分析といったサービスを幅広く募集し、迅速に状況を把握でき、早期運用が可能な技術の提案に期待しました。

■第27回優勝社:エントリーNo.3 社団法人MIKATAプロフェッショナルズ 
杭を活用して遠隔監視

優勝したMIKATAプロフェッショナルズが提案したのは、杭を活用して遠隔監視を行うシステムです。杭は通信デバイスとセンサー、バッテリーが一体化。地面に刺すだけで加速度センサーが地面の変動を感知し地滑りの予兆を警告するほか、複数のセンサー杭を設置することでエリアを面としてとらえ遠隔監視します。パソコンやモバイル画面の地図上に杭の場所を一括表示。異常発生時には色が変わって警告します。これまでに10自治体の現場で実用化。貯水池やトンネル工事に伴う斜面影響のモニタリングなどに活用されています。

携帯が届かない山間の奥地でも通信が可能

通信がなく遠隔監視を行えない場所でも対応できるオプションも用意しています。その一つが可搬型の衛星通信基地局。また、通信杭がリレー式に無線でつながり、携帯が届かない山間の奥地でも通信を可能にします。


業種を超えた連携によって誕生した遠隔監視の技術が、優勝の決め手となりました。

「どの企業が優勝してもそん色なかった」という声が相次いだように、他社も高度な提案を行いました。

■エントリーNo.1 Ultimatrust株式会社
データを圧縮することで高画質化

Ultimatrust(アルティマトラスト)株式会社は、監視カメラの映像やIoT機器の情報、天気などの外部データを収集、分析、予測する「Wisbrain Platform(ウィズプレイン・プラットフォーム)」システムを通じてサービスを展開しています。画質が粗く視認性に問題点があるといった課題を、データの圧縮により高画質化し克服しました。

■エントリーNo.2 CalTa株式会社
動画をアップロードするだけで自動的に3Dモデルを生成

CalTa株式会社が提案したのは、デジタルツイン基盤を活用した効率的な防災システムです。動画をアップロードするだけで自動的に3Dモデルを生成し、動画や写真などの各データを時系列管理する「TRANCITY」というサービスを適用。降雨情報を落とし込んで気象災害データに応じて変位データの取得頻度を最適化し、時間軸でのモニタリングを行います。

■エントリーNo.4 株式会社Ridge-i
人工衛星データと監視カメラを活用した土砂崩れ検知AI

株式会社Ridge-i(リッジアイ)は、人工衛星データと監視カメラを活用した土砂崩れ検知AIを提案しました。人工衛星データで土砂崩れを定期的に観測し、災害になる前の小規模な土砂崩れを検知。検知後にカメラなどを設置すれば、常時モニタリングも可能です。また、独自のディープラーニング技術によって、自動化・判読が簡単に行えるようになりました。

■エントリーNo.5 株式会社リアルグローブ
ソーシャル監視で都民と情報を共有

株式会社リアルグローブが紹介したのは、定点カメラなどからの取得情報を、地図上にリアルタイムで集約し共有化するプラットフォーム「Hec-Eye(ヘック アイ)」を活用したサービスです。都民への情報共有ではソーシャル監視という仕組みを提案。大雨などで斜面に異常値を検知した場合にカメラ映像をライブ配信、リアルタイムで都民が確認するシステムです。

今回のテーマは都有地のモニタリングが対象でしたが、各社の提案は、防災対策などさまざまな領域に貢献するとみられる技術ばかりでした。


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