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美容院の予約をしたくない
予約をすることが苦手だ。誰かとの約束のためにする予約ならいいのだけれど、自分自身のためにする予約は、昔からとても苦手だった。
ネット予約ならまだしも、電話だとなおさら億劫になる。とっとと掛けてしまえばいいのに、のろのろ無駄に時間をあけてしまうことが、わたしにはよくある。
行動的だと言われることもあるのだけれど、わたしは出不精だ。予定がなければ、平気で引きこもり続けられる。趣味がインドアものばかりなので、当たり前ともいえるのだけれど。
ただ、突然行動的になることがあって、そのときの行動力は、まるで別人のようだと思っている。思い立ったが吉日という言葉は、まるでわたしのためにあるのではないかと思うくらいだ。
思えば、父親が同じような人間だ。前夜に「明日ディズニーランドに行こう」と言いだして夜中に車を走らせたこともあったし、「西方面の行きつく先まで」という計画で大阪から結局広島まで行って日帰りできなくなり、宿泊先が見つからなくて慌てたこともあった。そういう無計画さが楽しかったのも、今のわたしに影響を与えているのだろうか。
予約さえしていれば、待ち時間は少なくなるし、宿泊先が見つからないなんていうトラブルやハプニングに見舞われることもない。
それにもかかわらず、予約をせずに気の向くまま行動したいのは、わたしは待ち時間を楽しみたいし、ハプニングにテンションが上がる人間だからかもしれない。
日常の時間は次々流れていき、やることやすべきことが押し寄せてばかりで、わたしはわたし本来のテンポで時間を過ごせていないと感じることが多い。ぽっかりと空いた待ち時間は、わたしに本来のテンポを思い出させてくれるし、ハプニングは予想外の出来事に対応する刺激を与えてくれる。
ひとりで行動するときは、逸脱が自由にできる過ごし方を好む人間なのかもしれない。そうした「いっちゃう? やっちゃう?」という勢いやノリを共有できる人と過ごすことも大好きなのだけれど。
なんてことをぼんやり考えながら、昨日は予約なしで行ける美容院のソファに腰掛け、本を開いて待ち時間を楽しんでいた。
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