織りなすために、丁寧にほどく
これまでに2度、精神科・心療内科の門を叩いたことがある。
1度目は学生時代、2度目は昨年のこと。どちらも継続して通院できず、今に至る。
継続できなかったのは、通院が面倒だったから、ではない。単に合わなかったからだ。合わなかったのは医師であり、またそのときに処方された薬だった。
そもそもの前提として誤解していたのは、「病院はあくまでも病院であり、患者の話を聴くことがメインではない」ことだった。書いた問診票を見ながら診察をし、適していると思われる薬を処方する。対処療法が病院の役目であり、根本的な治療を行うところではなかったのだ。
「行くべき場所は、カウンセリングか、カウンセリングを受けられる病院なんだと思うよ」と友人に言われ、なるほどそうだったのか、と思ったのは少し前のこと。「この辺ならここの病院がカウンセリングも対応してるよ」と育児相談を持ちかけた保健師に教えてもらったけれど、スムーズに予約が取れるわけではなく、すっかり腰が重くなってしまった。
オンラインカウンセリングサービスを提供している「cotree」という企業がある。知ったのは今年に入ってからのこと。わたし自身のためではなく、精神的にかなり不安定になっていた夫のために相談先を調べていて見つけたのがきっかけだった。
自らの利用の検討に加え、「カウンセリングへのハードルが下がるのでは?」と興味を抱いて数ヶ月。フォローしていたTwitterで知ったイベントに、今日参加してきた。
すでに利用したことがある人、セカンドオピニオン先として検討している人、カウンセリングの周知に努めたい人。さまざまな人が参加していた。
話してくれた臨床心理士さん曰く、カウンセリングは「全人類に受けてみてほしい」ものなのだそう。何も悩みや苦しみの相談だけがカウンセリングの目的ではなく、次の一歩を踏み出すとき、思考整理のサポートにもなるものだから、と。
カウンセリング=悩み相談=ネガティブ=心の弱い人のためのもの
……みたいな認識を持ち、抵抗感を抱いていたり無関係だと決めつけていたりする人に知ってほしいなと思った。
自分の軸や思考力がある人ほど他者の力を借りずに物事を考えられるから、不要だと考えているのではないかと思う。だけど、「あくまでも自分の脳はひとつだけ」なのだ。いくら柔軟な思考回路を誇っていたとしても、脳内に出てこないものは考えつかない。カウンセリングは、新しい酸素の役割も果たせるのだ。
意外というか、これまで気づいていなかったのは、「基本的に、臨床心理士は自己開示を大っぴらにしていない」こと。その機関にどんなカウンセラーがいて、それはどういう人なのか、発信していないケースが一般的なのだそうだ。cotreeは簡単なプロフィールを掲載して指名する判断基準のひとつにしているけれど、これは珍しいことらしい。
依頼者からの依存の防止や公私混同リスクの回避など、開示しない理由はきちんとある。それでも、「発信」「自己開示」の世界にいるわたしは、個人で仕事を受けることもあろう臨床心理士の多くが対外的な自己開示をあえてしないことに、小さな驚きを感じた。
あらためてサービス内容を知ってみて、「いいな」と思ったのは「パートナー・プログラム」。LINEやメールのやり取りをするように、テキストベースで話を聴いてもらえるものだ。
わたしは口下手ではないけれど、クリアにできていない多くのものが絡み合い混ざり合い、何をどこからほどけばいいのかわからない状態になっている。
そんな状態でいきなり45分なり1時間なりといった限られた時間で話しましょうとなっても、どこからどうすればいいのかわからなくなってしまうだろう。(※cotreeは45分間5000円でオンライン通話カウンセリングが受けられる)
ごちゃ混ぜになっている初期段階ほど、文字で伝える意義が大きいように感じた。
個人的に利用する際は、はじめにパートナープログラムを利用し、そこで相性がよさそうなカウンセラーに出会えたら通話に移行というスタイルがよさそうだなあと思っている。幸い、文章で自己開示をすることに抵抗感がないタイプだし。
そもそも、話すより書く方が素直に感情を露わにできる人もいるだろう。自分の適性に合わせた方法が選べるのもメリットだと思う。
ちなみに、巷で「カウンセラーガチャ」とも言われることがあるらしい「合わなかった」案件。cotreeでは事前に合いそうなカウンセラーを何人か挙げてもらえる上に、満足できなかったときに使える満足保証サービスが用意されている。ありがたく、安心にもつながるものだ。
悩みがある人はもちろん、悩みではないけれど思考の整理をしたい人にとっても、もっとカウンセリングが身近なものになったらいいなと思う。わたしはこれまでプロに話を聴いてもらったことがないに等しいから、これを機に利用してみようと思う。
……ただ、せっかくなら今後プロフィールに添えられる予定らしい、カウンセラーの動画を見てからにしてみたいなあという思いも少しある。肩書きやプロフィールより、フィーリング重視の人間なので。
思考の溝にはまってどん詰まりになってしまっている人や、固定概念にがんじがらめになって自らつらい方に進んでしまっている人、悩みがもつれて絡んで自力でほどけなくなっている人。
カウンセラーは、そうした人と一緒に考え、解きほどく手伝いをしてくれるパートナーなのだ。
cotree:https://cotree.jp/
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