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不思議な御堂 御堂に手をあわせてみた べつに何があったわけでもない ふと そうしたのだっ…
遠い空 古い時代の日記を読んでみた 変わりゆく世に生きることを 昔の人は 旅にたとえていた…
夏の闇 夏の森に ひそむものたち 彼らの声が聞こえる夕 最初は微かな囁き 枝葉をゆらす風と …
(雨がふりはじめると) 雨がふりはじめると 土の匂いがした ぼくは森の道を歩いていた 道は…
川の光 そのとき きみとぼくのあいだに 小さな流れがあった 川のような 光のような 銀色に…
きえた風船 そして すなおという字を書きながら 風船は 空の彼方へときえてしまった 都会の…
ゴール あと少し あともう少しで ゴールに着くのだ 焦りがある時は禁物 必ずといってよいほど 落し穴があるものですよ 冷めた老人の言葉に 冷ややかな受答えをしたっけ 落し穴どころか どんでん返しもよいほど はーそれから それからどうしましたか その手はとうに知ってるよ そんな態度で あえて余裕を見せたり 今や自分が老いの道へと進んでいく 焦りはしない いまさらだけど ひっくり返って怪我をしないように ゴールまであと わずか (森雪拾)
魚の夢 現実をみろと 先生は言った 夢子ではだめだと こわい顔をした 大人になったある日 居…
不在の街 白い空が広がり 街は眠たげである ここには 誰もいない気がした だれもが存在して…
魔法の庭 七色の変化する 魔法の庭に 秘められた物語を 今も紡ぎつづけている 芳しい光の下…
古い家の記憶 古い家の記憶は 病葉の庭に たたずむ影となる あれは 幻 夕暮れ近くの窓に わ…
かつて風が かつて風が 望みを失い 迷走していた頃のこと 雪のふりしきる町でのことだ 家々…
歳月 夜が来た 鬱蒼とした森の夜 鳥たちは眠り 樹木たちは密かにつぶやく 月夜である 少年の…
蔵の中 なつかしい故郷の家にいくと 欅の巨木のそばに古い蔵があって 白壁がところどころ削れて土が覗いていた 若い頃の祖父が勉強していたという 窓のない闇ばかりの空間で いったい何を学んでいたのだろう 一度だけ蔵の中に入ったことがあった 真っ暗と思い込んでいたのだが 灯り取りの窓があって 意外にも明るかったのを覚えている 光の射した床から 埃が舞い上がるのを眺めていたら 農家の若い三男の 密かな野望が 空へ空へと 立ち昇っていくのだった (森雪拾)