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詩ことばの森(183)「不在の街」

不在の街

白い空が広がり
街は眠たげである

ここには 誰もいない気がした
だれもが存在しているが
それが むしろ不在に感じてしまう

きっと空のせいだ と思った
今日の空は なんて重いのだろう

僕は崖の道を上って行った
いつか 遠い夏の日に
同じことを考えたのを ふと思い出した

その日も やはり
重い空だったにちがいない

白い空が広がり
眠たげな街のなかで
いったい 僕は存在しているのだろうか

(森雪拾)

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