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詩ことばの森(187)「川の光」

川の光

そのとき きみとぼくのあいだに
小さな流れがあった

川のような 光のような
銀色に耀いている 
透明ななにか

そのなにかを ぼくらは 
つかもうと必死だったのだ

ぼくらには できると信じていた
おごりとも 野心とも
あとでは いくらでも
言葉にできることだった

でも ぼくらは 
怖れていたに ちがいない
言葉にしてしまえば
それは まるで 砂糖菓子
すぐに 溶けてしまうのだから

小さな 甘い 感傷にすぎないことを
最初から 感じていたのだろう

小さな 川のような光
それは 銀色に耀いていて
たしかに ぼくらは 幸福だった

(森雪拾)

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