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詩ことばの森(179)「歳月」

歳月

夜が来た
鬱蒼とした森の夜
鳥たちは眠り
樹木たちは密かにつぶやく
月夜である

少年の本は
頁を折り曲げられたまま
もうずいぶん開かれずにいた
彼の時間は速やかに過ぎていく
夜の訪れさえ忘れているほどに

月が輝きを増す
青い池にうつる自らの姿を
見つけ出した時には
老いたる者の影が
忘れていた夢を紡ぎだそうとしている

(森雪拾)


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