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パーソンズ美術大学留学記 Week7 #073

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毎日学んだことをメモしているツイートを引用しながら、2021年10月11日~10月15日(Week7)を振り返ってみます。

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Design-Led Research(Maps & Mapping Systems編)

今週のテーマは「Maps & Mapping Systems」でした。「Challenge Mapping」「Ecosystem」「Theory of Change」「Stock & Flow, Causal Loop Diagramming」などのデザインツールを学びました(詳細は後日)。

これらのツールを使う目的は、現時点で把握している情報をもとに「レバレッジ・ポイント(問題の急所)」の糸口を探るためです。刑事・探偵ドラマの主人公が脳内でこれまでの登場人物の発言や街で見かけた何気ない光景から容疑者を特定するようなイメージが私には浮かんでいます。

デザイン思考では、こうしたデザイン思考を補助するツールがあるので、ノンデザイナーであっても、またデザイナー自身が行き詰った時でも前に進むことができます。

個人的には、データを集める段階で使うデザインツールは好きなのですが、アイデアを思いつく段階で使うデザインツールはまだ私に馴染みません。というのも、集団であーだこーだ言い合って考えるよりも、一人でアイデアを深めたり、自分の直観に頼るスタイルが好みだからです。おそらく私の内向性やHSP気質に由来していると思います。

でも、これらのデザインツールは「使わなければならない」という縛りではなく、思考を補助するためのものです。必要なら使えばいいし、必要ないなら使わなくてもいい。自分に合うと感じるデザインツールが何個かあれば十分なのだと思っています。


Ecosystem of Hate

「社会の現状を把握することがデザインの第一歩」ということで、社会問題を深掘りする授業もあります。取り上げる社会問題は、たとえば"Death of Despair"という問題。「絶望感」が死をもたらすという現実についてです。日本も働きすぎや過労死が問題になったり若者の死因の第一位が自死であったりと、日本でも考えるべき問題です。

また、「なぜ陰謀論は支持されるのか」という問題を取り上げたりもします。一度陰謀論にハマってしまうと、それを裏付ける情報ばかりが得られるのがネットの特徴。何が「正しい」情報で何が「誤まった」情報なのかは、突き詰めていくと個人の価値観次第になってしまいます。

どちらの社会問題も社会に対する嫌悪や不信、憎しみが根底にはあります。どうすればデザイナーはこの憎しみの連鎖を断ち切れるのか。これまで通りの社会の価値観に基づいてデザインを続ければ、この社会システムに変化はなく憎しみの連鎖を加速させることになります。一方、この憎しみの連鎖のレバレッジ・ポイントを特定して断ち切ることもできます。そんな分水嶺的な役割をデザイナーは担っているのではないかという「自意識」を持つように言われている気がします。

デザイナーがデザインする時、そのデザインされたモノは憎悪を促進するものになっていないかを問うべきなのかもしれません。デザイナーが持つ無意識の偏見や差別意識はデザインを通して世界に広がっていきます。デザイナーは聖人君子であるべきだとまでは言いませんが、自分のデザインは自分の価値観が具現化されているということは覚えておくべきでしょう。


Transition Design

デザインの頭に何か単語をくっつけることで、何についてのデザインかを表します。たとえば、「グラフィックデザイン」「プロダクトデザイン」「UIデザイン」などは、目に見えるモノを美しくて使いやすいものにすることなどを目指してデザインします。また、「サービスデザイン」や「UXデザイン」といった、目に見える実体以外のモノ(コト)をデザインすることもあります。

そんな中、"Transition Design""Speculative Design"といったデザインもあるようです。ざっくり言うと、「未来のデザイン」。未来の「当たり前」を思い描き、その一部を「プロトタイプ(またはプロ'ボ'タイプ)」で現在に出現させてみる。すると、現在の人々が思い描く未来像に変化が起こり、より良い未来がデザインできる(かもしれない)という試みです。

こうしたデザインが生まれた背景には"Anthropocene" "Capitalocene"といった概念があります。日本語では「人新世(ひとしんせいorじんしんせい)」と言うようです。産業革命や資本主義により、地質学的にも地球に大きな影響を及びしたここ数百年の人類。このまま行くと、人類は滅亡してしまうのではないかという危機が迫っていると科学的に証明されています。だから、最近はSDGsだったりパリ協定だったりと世界各国でポスト資本主義を模索しています。サステナビリティはどんな分野でも欠かせないキーワードになっています。

ただし、今の人類は産業革命以降の文明や資本主義の中でしか生きていないので、資本主義以外のシステムを考えることは至難の業なのです。そんな私たちが「ポスト資本主義」を考えるには、資本主義を前提とする過去の延長線上ではない、何か別のあるべき未来をデザインする必要があるのではないかという理念のもと、"Transition Design"は「現在」から「理想の未来」への移行をデザインするのです。


まとめ

段々と忙しくなってきました。クラスメートも目に見えて疲れてきています。この忙しさを乗り切るために、三食を維持して、睡眠時間を確保するようにしています。無理せず過ごしていきます。それでは、また来週!


おまけ:お気に入りの英語表現

We will see.

「いずれわかるよ」といったニュアンス。デザイン思考では「このまま突き進んで良い結果が得られるのか」と先行きが不安になることが多々ありますが、その場で考えても先のことはわかりません。そんな時に言う言葉です。

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