大人の便秘対策決定版・2018
人生を楽しむには、当たり前ですが健康であることが必要です。そのためには、しっかり食べて、ぐっすり眠り、元気よく体を動かして、すっきり出すことが欠かせません。うんちをお腹の中にずっと溜め込んだ状態では、憂鬱でテンションも上がらないですよね。
「便秘は女性の病気」と考えている人も多いかもしれませんが、
厚生労働省の国民生活基礎調査によると、50代までは女性に多いですが、60歳を超えると男女ともに増えて男女差がなくなっていき、80歳以上では男性の方が多くなっています。
(日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会編「慢性便秘症診療ガイドライン2017」より、データ出典:厚生労働省平成25年「国民生活基礎調査」)
便秘は男性にとっても身近な病気だったのですね。
ちなみに若い世代で女性に便秘が多いのは、月経時の女性ホルモンの作用によって大腸の動きが抑制される傾向があるのが理由のひとつです。さらに、妊娠中は胎児を守るために大腸が圧迫され、便秘になりやすくなります。
便秘の悩みを少しでも減らすために、今回は慢性便秘症ガイドライン作成の中心メンバーである横浜市立大学大学院医学研究科主任教授の中島淳先生にお話をお聞きし、大人の便秘対策をまとめてみました。
■便秘対策その1:しっかり食べなきゃ、いいうんちはでない!
いいうんちの約80%は水分ですが、しっかり食べなきゃ、いいうんちは作れないのです。偏った食生活では、うんちのもととなる食物繊維が摂取できないので、バランスよく食べることも大切です。
「ダイエットしなくちゃ!」と言って食事を減らしてしまうと、便秘になるリスクも高まります。
■便秘対策その2:いいうんちは、良い睡眠から!
大腸の働きをつかさどっているのは、副交感神経です。副交感神経はリラックス状態のときに優位になります。ということは、リラックスして眠っているときも大腸は働いているのです。
便秘の予防もしくは改善には、睡眠が大事!ということがご理解いただけるかと思います。実際、睡眠不足や不眠症の人は、便秘がちの方が多いそうです。
■便秘対策その3:運動の後のリラックスが重要!
「便秘には運動が効果的」という話を聞いたことがあると思います。私もその話は聞いたことがあり、中島先生の話を聞くまでは、「体を動かすことで腸も動くから排便にいいんだろうなぁ」ぐらいに思っていたのですが、それは正しい理解ではありませんでした。
なぜ、運動が便秘に効果的かというと、運動をしているときは自律神経の中でも交感神経が優位になります。心臓を元気よく動かし、血液をがんがん循環させている状態です。運動後は、その反動で穏やかなリラックスモードになります。つまり、副交感神経のスイッチが入り、排泄機能の働きにつながるのです。「交感神経から副交感神経へのリレーを促進するため、排便には運動がよい」というのが正しい理解です。
■便秘対策その4:排便姿勢は前かがみ35度がベスト!
「おしりのリハビリ!バイオフィードバック療法とは?(以前の記事)」で説明したとおり、私たちの直腸は恥骨直腸筋に引っ張られて「くの字」に曲がっています。もう一度、その図を見てください。
うんちをするときは、恥骨直腸筋が緩むことで、直腸と肛門がまっすぐになり、うんちが出やすくなっているのです。
ということは、ロダンの考える人、もしくは蹲踞(そんきょ)のように前傾姿勢をとることで、直腸と肛門がまっすぐに近づくのです。
言い換えると、この前傾姿勢がうんちをするには、もってこいの姿勢なのです。中島先生によると、前かがみ35度がベストのようです!
ちなみに、直腸がくの字の状態でうんちをすると、本来は一本で出るはずのうんちが分割されてしまい、半分は腸の方に戻ってしまうこともあるそうです。これを専門用語では「分割排便」、中島先生は「泣き別れ」とも呼んでいました(笑)
こうなってしまっては、残便感があってすっきりしませんよね。
和式便器であれば自ずと前傾姿勢になりますが、今どきはほとんどの家庭が洋式便器だと思います。その場合は、足置き台などを活用することで前傾姿勢をつくりだすことができるので、ぜひやってみてください。
もちろん、洋式便座に座って足が宙ぶらりんなるようでは力が入らないのでよくありません。子どもの足が床につかずにブラブラしているようでしたら、足置き台をつけてあげてくださいね。
■便秘対策その5:癖になってしまう薬には注意を!
とあるドラッグストアのウェブサイトで「便秘薬」を検索してみると、なんと156商品がリストアップされました(汗)
こんなにたくさんあると、どの薬を選べばよいか悩んでしまいますよね。
ここでは、便秘薬の正しい使い方を説明します。
まず、便秘薬には大きくわけて2種類があります。それは、「緩下剤」と「刺激性下剤」です。
緩下剤は、簡単に言うとうんちを軟らかくして出やすくする薬です。
一方、刺激性下剤は、その名のとおり腸を刺激して強制的にうんちを出す薬です。
ここからが大切なポイントです。刺激性下剤には、薬剤耐性、精神的依存性、習慣性があるため、毎日使ってはいけません。薬の説明書にもそのように書いてあるはずです。薬剤耐性とは、使い続けていると、薬が効きにくくなってしまう性質のことを言います。
つまり、うんちが出ないのが嫌だからといって毎日服用していると、最初は1錠で効いていたものが3錠でないと効かなくなり、つづいて5錠、6錠、7錠というようにエスカレートしてしまうのです。中島先生のところに来る患者さんの中には、1日に数十錠も服用している方もめずらしくないそうです。恐ろしいことですよね。
たとえば4~5日に1回にするなど、必要なときにオンデマンドで服用するのに適してているのが刺激性下剤です。
緩下剤のほうは即効性がない代わりに薬剤耐性もありません。普段は緩下剤を服用してうんちを軟らかくするようにつとめながら、必要に応じて刺激性下剤を使うのが良いそうです。
また、うんちが硬くて出ないときは、浣腸も効果的です。いずれの薬も投与量や副作用などがありますので、詳しくは専門医に相談してください。
■便秘対策その6:便意を見逃すな!
意外とないがしろにされがちなのが「便意」です。みなさんは、うんちがしたくなったら、ちゃんとトイレに行っていますか? そもそも便意をしっかりと認識していますか?
便意は、うんちが直腸に移動したときに起こります。普段、直腸はからっぽです。
では、いつ直腸にうんちが送り込まれるかというと、それは大蠕動(だいぜんどう)が起きたときです。大蠕動というのは、大腸でつくられたうんちが伝播性収縮によって、ぐぐ~っと押し出されて肛門近くの直腸に送り込まれることを言います。
この大蠕動は、人によっても異なりますが、1日に1~3回ぐらい起きます。空っぽの胃に食べ物が入ると、それに反射して腸が動くので、特に朝ご飯を食べた後に起きやすいと言われています。
便意は、1日1~3回という数少ない大切なお知らせです。無視し続けると便意は無くなってしまうこともあるのです。ぜひ身体感覚を研ぎ澄まして、便意をキャッチしてください。
■便秘対策その7:こんなうんちは注意信号!
実際に便秘になってしまう前に、体が発信する注意信号を受けとめて対策したいですよね。
うんちに表れる便秘の注意信号には、大きく3つあります。
1つ目は、うんちの回数が減ることです。「うんちは週に何回以下だと便秘と言えるか」で説明したとおり、うんちの回数は1週間に3回以上が良いです。
言い換えると、少々乱暴ですが、「2日に1回はセーフだけど、3日に1回は要注意!」ということです。4~5日溜め込むと大腸に水分を吸収されてしまい、うんちは硬くなりさらに出しにくくなります。
2つ目は、うんちの硬さです。とはいっても、触って確かめるなんてことは無理ですよね。そこで「あなたのうんちは7つに分類できる」を思い出してください。
この分類でいうと、便秘の可能性があるのは、1番~3番です。表面がひび割れた硬いうんち、もしくはウサギのうんちみたいにコロコロしたものが出たら要注意です。
3つ目は、うんちを出し切る時間です。するっと出るいいうんちだと、便座に座って、「よしするぞ」と思ってからうんちを出し切るまでに要する時間は長くても50秒前後です。
ですから、うんちをするのに3分とか5分かかってしまう場合は要注意です。ちなみに、ネコ、サル、ゾウ、カバなどの動物は、約12秒だそうです!動物にとってうんちをする行為は、もっとも無防備であり、命の危険にさらされるので急いで出す必要があるのです。
■便秘対策その8:便秘になったら病院へ!
もし便秘になったら、もちろんこれまで書いてきたような対策は取れますが、薬を何か月も服用しているのに改善しないような場合は、専門医に相談することをおすすめします。
大腸がんやパーキンソン病など、大きな病気が隠れていることもあります。
病院の検査としては、問診、血液検査、検便、CTなどが行われます。特に若い方であれば、早めのチェックが大切です。何もなければ安心ですし、もし病気があれば早期に治療することができます!
とにかく、便秘を甘く見てはいけません。あなたの体からの大切なメッセージですから。
以上、8つが便秘対策のポイントです。
私たちの体は、適応能力があります。暑いときは汗をだして体温コントロールしますよね。この適応は、便秘にも当てはまります。
便秘になって出口が詰まると、腸はできるだけ動かないように努力します。言い換えると、動かない腸に適応していくのです。腸が動かないと、今度は食欲がなくなります。食欲がなくなって栄養が不足すると、筋肉が細って弱ります。
まさに、悪循環です!
「便秘なんて、ほうっておけばそのうち治るよね」なんて思っていたら大間違いです。
しつこいようですが、うんちは身体からのメッセージで、うんちをすることは生きるために不可欠です。うんちをするときの「快」は生得的なもので、食べることと同じくらい大切な機能です。快眠、快食、快便という言葉もありますよね。快便を壊すこと、つまり便秘になることは、身体全体に悪影響を及ぼすことにつながると思います。
そういった意味で、ぜひうんちチェックをしてほしいですし、もしうんちの調子が悪いときは身体をケアしていただきたいです。
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