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【第2夜・お膳立ての妖精】くすぶり人間と3人の尻叩き


こちらの記事は、星見当番さんの以下の記事から、インスパイアされたものです。
ぜひお読みください。

【前回までのあらすじ】子どもの頃は作文が大好きな上に得意だったのに、日々の仕事と生活に追われて、何も書くことなく長い月日が経ってしまった、人呼んで、くすぶり人間。心の奥底に書くことへの野心がくすぶっている己に無自覚な人間である。くすぶり人間は仕事に疲れてだらだらネットサーフィンをしている際に、はたと、自分の野心に気づく。そして、そんなくすぶり人間の目の前を以前から応援していた、ツタンカーメンの装束を着た白い妖精、星見当番さんのツイートが流れていく。そのツイートを目にした途端、「3人の尻叩き妖精」を送り込むと宣言するお嬢様言葉が、聞こえたのだ。

第1夜の尻叩き妖精(複数いるけど1人)は「優先順位の妖精」だった。優先順位の妖精は「お前の尻込みリストに『いちばん無理』から『いちばんマシ』まで順位をつけろ。そうしたら初手では『いちばん無理』と『二番目に無理』を免除する」と言って消えてしまったのだという。

【くすぶり人間の尻込みリスト】
その1 仕事以外で文章を書く
その2 創作についてのSNSをやる
その3 ブログをやる
その4 創作していることを家族や友達に言う
その5 創作物に感想をもらう
その6 小説のテーマや資料を探す
その7 小説を書く
その8 完成した原稿を出版社に送る 応募する
番外編 仲間を増やすために音声コンテンツなどをする


【第2夜の尻叩き・書くためのお膳立てをしよう】
第2夜にやってきた尻叩き妖精は、白と黒、ツートンカラーに分かれたロングヘアの妙齢の女性だった。涼しげな眼差しで、片方の腕に「お膳立て」とプリントした黄色い腕章をつけている。彼女は丁寧に頭をさげて「尻叩き妖精協会から来ました。私はお膳立ての妖精です」と名乗った。そして彼女はどこからともなくタブレットを取り出した。

「本日は「その2 創作についてのSNSをやる」
「その3 ブログをやる」
「その4 創作していることを家族や友達に言う」「その5 創作物に感想をもらう」
「その6 小説のテーマや資料を探す 」の5項目について、お尻叩きのご依頼と聞いております」
玲瓏とした声で読み上げられると、自分の情けなさがよりくっきりと浮かび上がるような気がして、くすぶり人間は、目を閉じた。

「目を開けてください」
「…恥ずかしくて…」
「あなたは格好つけすぎるところがありますね…」
お膳立ての妖精は軽くため息をついた。
「もしかして、そのタブレットで、叩くんですか?」
「違います。そのようなことは致しません」
お膳立ての妖精はキッパリと言った。
くすぶり人間は少しほっとした。タブレットは硬そうだったので。
「先にあげたリストの5項目について、一緒に検討してみましょう。

【その2 創作についてのSNSをやる】→【創作を、SNSで何度も繰り返す】

「まず、その2について考えましょう」
「はい」
「そもそも、あなたはSNS廃人になるタイプの人間ですよね?情報をいくらでも収集していたいタイプでしょう」
「はあ…まあ」
「なら、どうして創作についてのSNSをやるが、尻込みリストに入っているのですか?」
「…SNSやることに関しては尻込みは実はないですね。嫌になったらすぐアカウント消したりはしますけど。ただ創作に関するというのがハードルが高いです」
「それについてもう少し詳しく」
「ええと、まず創作を完成しきれないというのが1番です。うん。オチまで書き切ることができない感じです。アイデアは割と出てくるんですけど」
お膳立ての妖精はタブレットに何かを入力しており、まるで聞いていないように見える。くすぶり人間は不安になって口を閉じた。
「聞いていますよ。続けてください」お膳立ての妖精はタブレットから目をあげてくすぶり人間を射るような眼差しで見やった。
「ええと、オチまで書ききれないというのが1番なんですけど、あんまりにもしょぼいものを書いて世の中に出すのがつらいというな…こんなもの書いてて何の意味があるのだ…というか。おすすめ商品紹介みたいなら意味のあるものならまだしも、駄文の創作とか何の意味があるのかと思って…」
「つまり、その2は「創作についてのSNSをする」よりも「創作を、SNSで何度も繰り返す」としたほうがよいのでは?」
「あ、そうか」
「特にオチまで書ききれないということですから、書き出したら、必ずオチまで書き切ることを、繰り返した方が良いと思われます。何でも成功体験は大事です」
「ごもっとも」
「またそれなりの量をある程度の時間で書けるようになる必要がありますよね?」
「そこも悩んでいるところです。時間をかけても量が書けません」
「たった今、調べましたところ、出版業界などでは、400字詰め原稿用紙の枚数で換算することが多いようです。ですから、1単位は400字詰め原稿用紙1枚とすると良いのではないでしょうか。ちなみに、8万字、400字詰め原稿用紙200枚から300枚ほどから、長編小説と呼ばれるようですよ」
くすぶり人間は表情をなくし、肩を落とした。
「そんな量、書ける気がしない」
「もちろん、今はそうでしょうね。だって書いてないんですから。これは筋トレと同じと考えます。やっていくうちにできる量、可動域が増えるタイプのものです。今、どれくらいなら書けるんですか?」
「400字詰め原稿用紙、1、2枚分位は何でも書けると思います」
「それが最低書ける枚数ということですね。それではその2倍、400字詰め原稿用紙4枚分1,600文字は書けるようになりましょう。それが普通になればさらに数字を増やすのです」
「どうして書ける量じゃないんですか?」
「今やれる量だと達成感も少ないし、すぐ飽きてしまいますよ、多分。あなた飽きっぽいでしょう。やれるかやれないかギリギリの量の方が、興味が持続するのではないでしょうか」
「ごもっともです」
「『毎日1,600文字の文章でオチまで書くことにする』と決まれば、それに相応しいSNSは自ずと決まってくると思いますよ」

【その3 ブログをやる】


「【その2 創作についてのSNSをやる】を、検討し直し、【その2 創作を、SNSで何度も繰り返す】にし直すと、このその3とほぼ、同じことになりますね。ですから、その3はその2を詳しくして具体的なものに変えましょう。【その3 毎日、1,600文字を書く】」
「うう…できる気はしませんが、具体的な目標はあった方がわかりやすいですね」
「そしてこれを出来るだけ達成しやすい方式にしてみましょう」
「達成しやすい方式…??」
「基本的にはあなたが書きやすい形式で書くと設定しておくのです。無事に出来るようになったらその設定を外せば良い」
くすぶり人間は、困惑して、眉間に皺を寄せた。
「どういうことでしょう」
「妖精調べでは、あなたは不特定多数の人間に向けて商品のおすすめだとか、そういうおべんちゃらを書き続けるのに向いていないようです。かと言ってまだ毎日創作小説を書くのは厳しいでしょう」
「…そうですね。おすすめできるものが毎日あるわけでもなし、前向きな話を書き続けるのも辛いです」
「あなたはもともと日記文学や手紙文学がお好きでしょう。最近見た中であなたがもっとも楽しそうに書いていたのは、お手紙、言うなればジーン・ウェブスターの「あしながおじさん」のように、特定の相手に対して近況を報告する形式でしたよ」
「!!確かに。あれは楽しくてぐんぐん書き進められましたね」
「そうであれば、手紙を書き続ける基本形式としましょう。相手は先日の相手と仮定します。あの方にわかるように出来るだけ、簡潔に、わかりやすく日常を書くのです。それを続けましょう。それなら、毎日1,600文字も書きやすいのでは?」
「まあ、そうかもしれません…。ちょっと格好悪い気もしますけど…」
お膳立ての妖精は片眉をあげたものの表情を変えずタブレット越しに、くすぶり人間を眺めて言った。
「あなたが毎度引っかかっているところについては、私より発信の妖精が適任でしょう。
今晩は、お膳立てを完了することが先です。
「毎日、1,600文字をアップしやすいSNS」を選びましょう」
「はあ…」
「あと、あなたは通勤時間が長いですから、通勤中に文章を書いてあげられるSNSがいいでしょうね」
「確かに、前回のブログはパソコン更新が面倒になっていました。スマホで更新できる方が現実的ですね」
「今のところは、エッセイのような、日記のようなものが主となるでしょうから、小説発表系にしなくてもいいかもしれません。とにかく、書く練習のためですからね」
「書く練習…」
「そうです。書く練習と割り切って、SNSをやってください」

【その4 創作していることを家族や友達に言う】【その5 創作物に感想をもらう】

「と…とりあえず、書く練習をするのはnoteにしてみます。きっかけとなった星見当番さんもnoteに避難先を作っていますし、文章を書く系のアカウントの皆さんをわりと見かけるので」
「そうですか。でしたら、今晩中にアカウントを習得し、プロフィールを設定してください。【鉄は熱いうちに打て】です。ぐずぐずしているとまたやる気がなくなりますよ」
お膳立ての妖精は初めて、にっこりと笑った。
「…はい」
「リストのその4とその5については更新していくうちに叶う可能性が高いですね。…というか今稼働しているX(Twitter)と連携すれば、かなり早い段階で達成できると思いますよ。フォロワーは少ないものの、しっかり交流をとっているから、反応してくださる方もいるでしょう」
くすぶり人間は、顔をくしゃくしゃにして首を振った。
「勇気が…出ません。まだ何も書けてないですし、下手ですし」
「…また「格好悪い」ですか?」
お膳立ての妖精は、淡々と確認した後、一呼吸おいて、思いもかけないほど優しい声で次のように言った。
「まあ、まず書いてみましょう。そして書くことが続けられたと思ったら連携してください。きっと反応があるでしょう。自信がない時は、自信が出るような行動をするしかありません。行動だけが、自信をもたらします」

【その6 小説のテーマや資料を探す】

「その6についても、SNSを運用していけば、可能でしょう。もともと読書は好きなのですから、気になった本は資料として買うことにしてはいかがですか?漫然と読むのではなく、資料として読む。加えて、その感想を書評として書くのも良いでしょう。書く練習にも、資料探しにも、仲間探しにもなります」
「はい。本を買う大義名分ができるのは嬉しいですね。純粋に」
「その調子です。楽しんでやりましょう」

【お膳立ての妖精(本家)からすべての尻込みちゃんへ宿題】
・尻込み順位リストに順位の変動があれば並べ替える→リストの内容を再検討し、さらに具体的にした。
・やれそうなお膳立てをひとつでもいいから、今日何かやる→noteを利用することにして、アカウントを開設、プロフィールを設定した。
・どんなお膳立てをしたか、日付入りの記録を残しておく→日付入りの記録は残していなかったが、現在こうしてnoteの記事にしている。

「明日は発信の妖精が伺います。私より、手強いですよ」
と言い置いた後、にっと微笑んで、お膳立ての妖精は立ち去っていった。


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