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【第1夜・優先順位の妖精】くすぶり人間と3人の尻叩き


こちらは、星見当番さんのこちらの記事にインスパイアされ、ネタをお借りしたものです。
ぜひこちらの記事もお読みください。

【前回までのあらすじ】
子どもの頃は作文が大好きな上に得意だったのに、日々の仕事と生活に追われて、何も書くことなく長い月日が経ってしまった、人呼んで、くすぶり人間。心の奥底に書くことへの野心がくすぶっている己に無自覚な人間である。くすぶり人間は仕事に疲れてだらだらネットサーフィンをしている際に、はたと、自分の野心に気づく。そして、そんなくすぶり人間の目の前を以前から応援していた、ツタンカーメンの装束を着た白い妖精、星見当番さんのツイートが流れていく。そのツイートを目にした途端、「3人の尻叩き妖精」を送り込むと宣言するお嬢様言葉が、聞こえたのだ。

記事はこちらです↓

【第1夜の尻叩き・尻込みリストに順位をつける】
最初の夜にやってきた尻叩き妖精は黒ずくめの服装の男たちだった。そう、男たち、つまり、複数いる。いずれも屈強な体躯で、くすぶり人間はギョッとした。目出し帽をかぶっているものもおり、その出立ちは完全に泥棒である。彼らは低い声を揃えて「自分は『優先順位の妖精』だ」と名乗った。
「ええと、1人目の妖精だと言うことですか?でもたくさんいる…それに妖精っていうより犯罪者っぽいですけど…」
「自分はこれで1人だし、妖精なんだよ。細かいことはいい。まずはあなたの尻込みリストを見せてもらおうか」
くすぶり人間は持ち前のプライドの高さから、リストをなかなか渡せなかったが、男たち、否、妖精が醸しだす、重たい雰囲気に負けて、シワシワになったリストをようやく渡した。
その1 仕事以外で文章を書く(疲れてて面倒)
その2 創作についてのSNSをやる(ネタがない)
その3 ブログをやる(疲れてて面倒、途中でやめた経験がある)
その4 創作していることを家族や友達に言う(馬鹿にされたらどうしよう)
その5 創作物に感想をもらう(人の批評は怖い)
その6 小説のテーマや資料を探す(疲れてて面倒…どうすればいいのかわからん)
その7 小説を書く(オチまで書けない、量が書けない)
その8 完成した原稿を出版社に送る 応募する(怖すぎる)
番外編 仲間を増やすために音声コンテンツなどをする(仲間って??)

「えーと…お前は元ネタの人たちみたいに占い師になりたいわけではないんだな?」
「はい。占いは好きですけど、今回は占い師になるために尻叩き妖精を派遣してもらったわけではないと思います」
「ふーん。お前は何がしたいの?」
「…物書きに…なりたい…のだと思います」
消え入りそうな声でくすぶり人間は呟き、恥ずかしさのあまり、しゃがみ込んだ。尻叩き妖精はそういう人間に慣れっこなのか、一瞥もくれなかった。全員でシワシワのリストのほうを眺めている。
「おいおい、疲れてて面倒というのが多すぎないか?」と優先順位の妖精、複数に見えるが1人は、声を揃えて言った。くすぶり人間は言い訳をしようとしたが、口ごもった。
「この中でやれているのはあるのか?」くすぶり人間は声を発さず首を振った。情けなかったのである。
「本当に何もやれていないのか?」
くすぶり人間は、優先順位の妖精のドスの効いた声に慄きながら、一つ思い出した。
「5月からモーニングノートを書き殴ってはいました。えーとでもそれは本当に落書きみたいなもので、オチも何もなくてえーと」
「まてまて、言い訳はいい。それなら「1 仕事以外で文章を書く」実績解除じゃないか?」
見かけによらず、優先順位の妖精は甘めの基準のようである。
「ブログはやってたことがあるみたいだが、どうしてやめたんだ?」
「アフィリエイトを貼るという方針で始めたのですが、それが苦痛になってきたのとパソコンを立ち上げてかくのが面倒で…。アフィリエイトのバナーを探してきて貼るというのが性に合わないみたいです。それは本当に申し訳ないと思っていて…でも書いてたことがあるので完全に無理というわけでもなく…」
黒ずくめの男たち、もとい優先順位の妖精は、くすぶり人間に向かって手のひらを突き出し、ストップのジェスチャーをした。もちろん全員で。
「言い訳はそこまでだ。とにかく、お前の尻込みリストに『いちばん無理』から『いちばんマシ』まで順位をつけろ。そうしたら初手では『いちばん無理』と『二番目に無理』を免除する」と言った。

「…とりあえず、「その8 完成した原稿を出版社に送る 応募する」は無理ですね。書き上げてないものをどこかに送るわけにはいかない」
「そうだな、もっともな判断だ。それから?」
「今は表現力はもちろんのこと、量が書けないんですよ。少し書いたら飽きてしまって、オチまでいきません。だから「その7 小説を書く」はまだ無理な気がします」
「…続けろ」
「1番マシなのは、「その1 仕事以外で文章を書く」ですね。モーニングノートで3ヶ月やれましたし。尻込みレベルも順位も1って感じです。さっきのリストの順で下へ行けば行くほど尻が重たいですね」
「いいぞ。お前なりのリストが、完成したな」
「こうしてリスト化していくと、その「その2創作についてのSNSをやる」、「その3 ブログをやる」、「その5 創作物に感想をもらう」あたりは連動している感じもしますね。というか連動させることが可能なような…。何かいい案はないかな。一方で、「その6 小説のテーマや資料を探す」は免除されないわけだから、何とかやり方を探さないといけないけど思いつかないな」
くすぶり人間の独り言に、黒ずくめの男たちは、大きくうなづいた。
「その辺りについては明日以降の妖精たちに尻を叩いてもらおう。明日はお膳立ての妖精が来るぞ」
『優先順位の妖精』は、声を揃えて、そう言った。そして次の瞬間に、空気中に漂う黒い煙のとなり、消えてしまった。


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