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2024年3月7日 髪と自由


髪を切りに行きました。
早速、
3月の目標をひとつは達成できました。

かなり短く切ろうと思っていたのですが、長年お世話になっている美容師さんの提案で、ほどほどのカットになりました。
年齢、顔の形、顔のサイズ、季節などを考えて最も似合うのは、この長さということでしょう。
しかし、温かくなってきたら、さらに短くしたいと言い出してみるつもりです。
そういえば、子供の頃はずっとかなり短いショートカットでした。
「ずぼらで適当な人間が管理できる髪の長さは、ある程度の短さである」というのが、最近出した結論です。
コテで巻くとか、ワックスをつける、ヘアアレンジということをしないタイプの人間が、見栄を張って伸ばしても、管理できません。ただただ、傷んだ髪が伸びていくだけです。
それならば、短めにして、こまめにカットとカラーリングに行く方がずっと清潔に見える、という至極当たり前の真理に気づきました。
カラーについても、「もっと明るくするならブリーチをかけないといけない」と言われ、髪が細く、弱い上に、乾燥しやすい髪質を考えて諦めました。これ以上、髪の毛が弱るのは避けたいのです。市販のカラー材で痛む前はもう少し、髪も太く、ヘタレにくかったことを思い出すと、専門家にお願いするとはいえ、ブリーチは怖くて手を出せません。おそらく、髪はさらに細くなり、へなへなになってしまうでしょう。考えただけでも恐ろしいことです。
冒険できるほど髪質が強ければ、間違いなく、もっと奇抜な色(ピンク、真っ青など)を選んでいることは間違い無いのですが、背に腹はかえられません。
ブリーチをかけて、髪が弱ったり、大量に抜け毛が起きるとひどいストレスになることは確実です。大人になるということは、未来の自分を予想して行動を決められること、と言い聞かせて、カラーもいつものものを選びました。
それでも諦めきれない気持ちはあり、
ある年齢になったら、髪を全てブリーチして好きなカラーを楽しみ、そのあとで、髪を全て剃り上げてしまって、ウィッグにするという計画も心の中で温めています。
この春から、仕事を少なくしたら、髪質や考えも変わるかもしれません。
まずはこの長さ、このカラーでやっていこうと思います。
ところで
髪を切ってもらうという行為は本当に不思議なものだなぁと思います。
行くまでは、「まだ大丈夫かな」「もう少しこのままでも」などとと考えているのですが、終わってみると
「さっぱりした。あんな状態で、よくいたものだ。もっと早く行けばよかった」
「どうしてあの長さにこだわっていたのか、よくわからない」となるのが、常のことです。
髪を切った後の爽快感は格別です。
季節が、いつでも、やっぱり、すっきりします。
無造作に伸びた髪の毛に何らかの負の物質でもついていたのではないか、
そして髪を切ったことでそれがなくなったのではないか、と考える程度には、気分が変わります。
魔力が髪に宿るという迷信もありますが、あながち間違いでもないのかもしれません。
生きている間にたまる澱のようなもの、念のようなものが溜まったりするのでかもしれません。
平安時代のお姫様たちは、一生のうちほとんど髪を切らなかったでしょうから
この爽快感を味わうこともほとんど、なかったのかもしれないとふと思いました。
ただ出家する時には髪を切るはずです。頻繁に髪を切っている現代人とは比べ物にならないほどの感慨や意味があっただろう、と思います。
「軽い」と思ったでしょうか、それとも「心もとない、不安だ」と思ったでしょうか。
好きな時に、好きな長さの髪型、好きな色に変えられるということは、長い人類の歴史からすると異例のことなのかもしれません。
身なりは、身分を表すものでもあったわけだしな、などと考えてしまいました。
当たり前に思える自由、ひいては自由に選べる、権利が、何世代か前には、存在すらしていなかったことについて、時折、考えさせられます。
髪の長さ、色、スタイルを好きなように好きな時に選べることだけでなく、
服装の色やスタイルを好きなように、好きな時に選べること、
遠方までひとりで、でかけること、
ひとりで、外食をすること、
何かについて意見を表明すること、
仕事につくこと、勉強をすること、選挙に参加すること、
何より、文字を綴り、半ば公に発表すること。
今ではいずれも当たり前にできることです。
しかし、
「この先もずっと」でしょうか。
今我々が享受している自由は本当にずっと「ある」のだろうかと
不意に恐ろしくなります。
髪を自由に切ることができず、
カラーリングを咎められる世の中、
そう言う世の中が万が一にも到来しないようにするにはどうしたらいいのでしょう。
仕事を終えて、駅に降り立つと
切ったばかりの髪が、まだ肌寒い空気の中をそよいでいます。
一発逆転の素晴らしい解決方法は存在しないと言うことだけはわかります。
この世界に、完全無欠のヒーローが現れてくれればいいのですが、
現実にはそういう展開が起こりません。
普通の人間がたくさんいるばかりです。
それなら、今を守るために、何を、どうすればいいのでしょう。

少し露わになった、首元が、ただただ冷えていくのでした。



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