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2024年2月24日 今の気分は英国

読書というのは不思議なものです。
昔の本でも最近、刊行された本であっても
読むタイミングというものがあります。

「今はその時ではない」本の読みにくいことと言ったら、
ありません。
軟水に慣れた日本人が、初めて硬水のコントレックスを飲むようなものです。
飲んでいるのだけれど
ちっとも体にしみこんでいかない感じ、
これは本当に、水なのかと思うほど持ったりした口当たり、
飲み干す際に、ごりごりと音がするような飲みにくさ。
あの感じととても似ています。
読んでも読んでも頭に入らないのです。

あれはいったい何の呪い、もしくは魔法なのでしょう。
本は無機物だけれど
どこか有機体のような不思議なところがあるように思います。

タイミングと相性が良ければ、一日で読めてしまうのも
本当に不思議なところです。
本屋で手に取って、ぴんときた本が相性が良い本なのかと言えば
そうとも限らないのもますます不可思議です。
読み始めて、「あわない」と思うことも結構あるのが
読書というものです。

本の内容、テーマはもちろんのこと、
それを書いた作家との相性というものは
かなりあるなぁと思います。
個人的に、ヴァージニア・ウルフが好きですが
だからといって万人受けするとも思いません。
彼女の文章は素晴らしいですが、それが鼻につく人もいるだろうし、
彼女が書こうとしたテーマに興味がない人もいるでしょう。
それは、逆もまた同じなのです。
恋愛を主題にした日本文学はあまり面白いと思えないのが正直なところです。
海外の作品であれば、見たこともない海外の情景や文化などの
興味を持って読むことができます。
しかし、主題となっている恋愛については
誰が誰とくっつこうが、誰と寝ようが
そこには、あまり興味がありません。
手練手管を知りたいわけでも
切なく甘い恋心を追体験したいわけでもないのです。
しかし、それが読書の目的となる人も、もちろんいるでしょう。

あまたの数、作家がいるということは、
読者の興味や関心もそれ以上にあるということなのでしょう。
もうすでに亡くなっている作家、
遠い外国の作家とも
一度も会わないのに、相性があるというのは不思議なものです。
でも
確かに、作家と読者の間には相性というものが発生するのです。

最近の読書の悩みは、
アメリカ文学を読むのに、非常に苦労するようになったことです。
以前は、アメリカ文学ばかり読んでいて
そこから南米文学にも手を伸ばしたくらいなのですが、
この数ヶ月は、アメリカ文学より、英国文学の方が
吸収しやすいのです。

Audibledeで聞く作品を続けて英国ミステリにしたせいなのか
先日、アメリカの作品を選んで聞いてみたのですが、
ちっとも頭に入りませんでした。
悩んだ結果、アガサ・クリスティの作品にすると、
問題なく楽しめます。
英語で書かれた文章を、翻訳して、
その上で日本語で朗読しているという部分は、同じなのに何が違うというのでしょう。
数か月前、「プロジェクト・ヘイル・メアリー」は楽しめたのですが
今回の作品は、ダメでした。
アメリカ文学がダメなのではなく、ジャンルの問題なのでしょうか。
その可能性はあるかもしれません。
ミステリ要素があるものは英国が舞台の方が、入りやすいということかもしれません。
「アメリカ、SF」で検索して再チャレンジしてみましょう。

いずれにしても、今は、英国の本が気分のようです。
たまたまそういうタイミングなのかもしれません。
先にも上げたように、読書には作家との相性に加えて
タイミングがあるのです。
その本を読むべき、タイミングというものが。

小野不由美先生の十二国記シリーズや
京極夏彦先生の京極堂シリーズを読むべき時期は
あの頃しかなかったと思いますし、
ヴァージニア・ウルフを必死で読んだあの時期以外に
読み通せなかっただろうと思うのです。
そう考えると、
今、改めてアガサ・クリスティを手に取ったということにも
何らかの意味があるのでしょう。
小中学生時代に、それなりにアガサ・クリスティを読んだと思うのですが
まだまだ知らないタイトルがあって、
驚かされます。
現在は、「春にして君を離れ」というアガサ・クリスティが
メアリ・ウェストマコット名義で出した長編小説をAudibleで聞いています。
アガサ・クリスティの描写の的確さときたら、
肌が泡立つほどです。
「自分は決して間違わない」「自分はいつでも正しい」と思っている人間を
そういう言葉を遣わずに様々な言動だけで
読者にわからせることができる文章の力に圧倒されます。
どうもミステリではないらしいのですが
それでも、様々に不穏な伏線が張り巡らされていて
読者はそれぞれに思案を巡らすように書かれています。
まだ、結末までは至っていませんが
どこにも無駄な描写がありません。
これを、3日で書き上げたのか…と思うと
アガサ・クリスティの偉大さを感じます。

今の気分は英国文学のようなので
しばらく、とことんアガサ・クリスティを楽しもうと考えています。
彼女の多作、そして作品を書き上げるスピードにあやかりたいものです。





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