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第4回 膵臓がんの予防 ーどのように防ぐか、何が大切なのかー

【5回シリーズ】 Face-off against Pancreatic Cancer -膵臓がんと向き合う-

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第1回 膵臓がんを知る 膵臓がんの基礎知識
第2回 膵臓がんの診断 何故見つかりにくいのか?期待される診断法は?
第3回 膵臓がんの治療 現在の治療選択肢、そして限界と希望
第4回 膵臓がんの予防 どのように防ぐか、何が大切なのか
第5回 あまり知られていない、喫煙が膵臓がんのリスクであること

第4回となりました。いよいよ大事な膵臓がんの予防方法についてご説明します。
これまでに膵臓がんは診断も遅れやすく難しいこと、また治療にも現時点では限界があることをお話ししました。

つまり、早期発見・早期治療は出来れば最高ですが、発見には運も必要であり、手遅れとなる前の早い段階で発見出来たとしたら、その時点でラッキーだと言えるでしょう。

では、診断と治療でまだまだ満足できるものが無い中で、我々に何か出来るでしょうか?

それは、膵臓がんにならないように心掛ける。

つまり、膵臓がんの予防を行うということです。予防といっても、どのようにすることが膵臓がんを予防する適切な方法なのでしょうか。

それでは、膵臓がんの予防方法についてご説明致します。

1. 膵臓がんのリスクを知り、自分に照らし合わせる

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当然ではありますが、そもそも一般の方の膵臓がんについての適切な知識はまだまだ浸透していないです。我々医療従事者からの啓蒙活動も十分なものではないと自覚しております。

まずは、みなさんができることで大切なことは、膵臓がんのリスクをしっかりと把握して、自分自身に該当する点があるかどうか自己分析されることです。

そして、膵臓がんのリスクがある場合、まずは出来ることから始めることです。

・太っている方はダイエット
・喫煙者は禁煙
・連日過量の飲酒をされている方は飲酒量を減らす
・お肉が好きな方は食べる量を配慮する など

これら全てが膵臓がんの予防となります。

2. 肥満症、慢性膵炎、糖尿病、IPMNなどの持病の良好な管理

膵臓がんのリスクとなる病気をお持ちの方は、その持病をしっかり管理することが膵臓がんの発症リスクを抑えることにつながります。

Body Mass Index(BMI)と呼ばれる、肥満度を表す体格指数があります。

体重(kg)÷身長(m)×身長(m)

BMIが25以上の方は肥満症です。
肥満症の方も膵臓がんのリスクが高いことが分かっていますので、適正体重(BMI 22前後)まで減量することも膵臓がんの予防となります。

慢性膵炎は多くの場合、アルコールの多飲が原因ですので、当然、禁酒が慢性膵炎の再燃を抑え、膵臓がん発症の抑制につながります。

糖尿病の方は食事制限や適度な運動に加え、必要があれば適切な治療を受けることで糖尿病の良好な管理をすることが膵臓がんの予防にとても大切です。

急に糖尿病の数値が悪くなるのも膵臓がん発症サインの1つであり、その場合はすぐに精密検査をされて下さい。

IPMNについては、第2回の検査のコーナーでも記載しましたが、IPMNの適切な管理指針を規定した国際的なガイドラインがありますので、それを遵守することが膵臓がんの予防となります。

3. どんな食事内容がいいのか -欧米食を背景に患者数が増えている-

一般的に全てのがんに対して免疫力を高める食事として、キノコ類があります。
その他、にんじん、かぼちゃなどの緑黄色野菜やトマトなどには抗酸化作用を持つ成分が含まれており、酸化ストレスという組織を障害して発がんを促進する因子を抑制し、がん予防になると言われています。

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そして、アメリカの国立衛生研究所(通称NIH)によると、高カロリー食、高脂肪食(特にトランス脂肪酸を多く含むもの)の食生活を改善することで約15%程度膵臓がんの発症を抑制できると報告されています。

4. 緑茶とコーヒーに関して

緑茶には前述の抗酸化作用があることが分かっており、実験レベルでは膵臓がんを含む様々ながんを予防する可能性が確認されています。

ただ、ヒトを対象とした臨床研究の結果では良いデータは得られておらず、お茶をよく飲むことによって膵臓がんの予防につながるかどうか結論は得られていません。

コーヒーについては、日本の国立がん研究センターの報告によると、男性でコーヒーをよく飲む人は、ほとんど飲まない人に比べて膵臓がん発症リスクが低くなる傾向が見られたとのことです。

しかし、コーヒー以外の生活習慣や体質などの影響も考慮する必要があり、緑茶と同じく本当に膵臓がんの発症リスクと関連があるのかについてはまだ結論づけられないと思われます。

5. 魚の脂肪酸について

日本の国立がん研究センターなどの研究チームが主導した「JPHC研究」によると、魚介類などに含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などのn-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)を多く摂取したグループでは、あまり摂らなかったグループに比べて膵臓がんの発症リスクが約30%低下することが分かりました。

これは膵臓がんの発生に慢性の炎症が関与しており、魚介類由来のn-3 PUFAには炎症を抑える作用や、免疫を調節する作用があるため、n-3 PUFAを多く摂取することで膵臓がんの発生も抑制出来ると考えられています。

これまで膵臓がん発症に対する食事の影響については、なかなか科学的根拠を伴って証明されたものがなく、実際には何を食べればいいか明らかになっていませんでしたが、具体的に食事の成分による膵臓がんリスクへの影響を示した素晴らしい研究だと思います。

これからもっと同じような研究成果が出てくることが期待されます。

6. 何かあれば早めに専門医に診てもらう

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やはりこれが一番です。

来院時に「ずっと我慢していたんですが、全く良くならないので来ました」と仰る方がよくいらっしゃいますが、私に言わせるとこれでは遅過ぎるのです。

我慢しないで、何か不安なことや自覚症状があったら躊躇わずにすぐに来るくらいでないと、膵臓がんについては話になりません。

そういった患者さんは、残念ながら十中八九ステージ4の診断となり、治療も後手後手になってしまうのです。

何かあれば、まず専門医に相談することを強くお勧めします。

今回は、膵臓がんの予防についてお話ししました。

生活習慣の中で膵臓がんのリスクとして何が良くて何が悪いのか、少しずつ解明されてきています。

是非、そういった情報を正しく勉強して頂き、皆さん自身に活かして頂ければと思います。

この医療記事を執筆した医師からご挨拶

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高倉 一樹(Dr. Kazuki Takakura)
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