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無名人インタビュー:オーストラリア在住日本語教師の人

時々おりますが、60過ぎたりとかで日本人の奥さんと別れて若いアジアの女性と結婚してまた子供を作っちゃう系おじさんから聞いた話ですが、その若い奥さんともめたりすると、奥さんと子供が、自分の知らない奥さんの言葉で二人でこそこそ話はじめるそうです。
たぶん、内容は俺の悪口なんだよと、子供作っちゃうおじさんは言ってました。
オーストラリア在住日本語教師、国枝さん回です!
日本語教師として10年のキャリアを持ちつつ、最近コーチングの要素も取り入れて、特に国際結婚をして海外子育てしているママ向けのプログラムを開発、提供しよう、という方です。あ! 中野さん案件です! ほんと中野さんのコミュニティは幅広い。
で! 国枝さんですが、私の大好きな言語学の方ということもあって、最初はマー海外での日本語学習というようなお話から、ラスト間際で言葉の理論と実践の話になり、めっちゃくちゃ個人的に面白かったです! そう、ふだんは読者の面白さを優先しているときもあるんですよ私は!
ということで国枝麻衣子さん回、楽しんでいただければ勿怪の幸い!!

今回ご参加いただいたのは国枝麻衣子さんです!
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1、子供をバイリンガルに育てるにはね

qbc:どういうインタビューにしましょう?

国枝:どこから話したらいいのかしら、と思ってるんですが。

qbc:では、今、何をやられているのかってあたりからお伺いできれば。

国枝:オーストラリアのシドニーに住んでいて、日本語教師として主にオーストラリア人の大人の学習者に10年くらい教えています。
それから、去年コーチングを自分が学んだんですが、このコーチングのスキルが教師全般にも必要だなと考えまして、それを日本語の先生方に広めていくような活動も始めたいなと思ってます。

qbc:いいですねコーチング。

国枝:今年、自分が受けたコーチングスクールの認定コーチになりました。対象は、特に日本語の先生と考えていますが、それ以外に、私のように海外在住の日本人のお父さんお母さん方も入ってます。
そういう親御さんって、やっぱり自分の子供に日本語の学習を続けてもらいたいと考えるのは自然ですが、ついつい日本語のお勉強を強要してしまいがちなので。お子さんの日本語教育ご相談会を開催し、自己肯定感を育みながら日本語の学習を続けられるようにして、そこにマザーズコーチングをご紹介し、親御さんがどう関わっていくことが大切かというのを伝えています。

qbc:なるほど!

国枝:日本語のバックグラウンドがあるオーストラリアで生まれ育ったお子さんたちに、土曜日に日本語を教えるクラスの担任を3年ほどやっていたこともあるのですが、子どもたちって楽しくないと全然やる気出さないことをイヤっていうほど感じたので。
今8歳の息子がいますが、日本語の勉強はあまり強要せず一緒に楽しむようにしていたら、自分で勝手に漢字も勉強するようになりましたね。

qbc:オーストラリアに行かれたきっかけは何だったのでしょう?

国枝:私、当時日本の大学の外国語学部所属で、英語とスペイン語と日本語教育専攻でしたが、英語もスペイン語も話せます!って自信持って就活できる気がしなかったうえに、新卒で日本語教師になるべきか相当迷っていて。それで、卒業する前に、海外に出て英語の勉強して、日本語教える経験もしてみたいなと思ったんですよね。
オーストラリアは来たことなかったんですが、当時スキューバダイビングのライセンス持っていたのでグレートバリアリーフ潜ってみたいなぁと思って。
で、休学してオーストラリアに来て、結局英語の勉強と英語を教えるためのサーティフィケートを取って、その過程で土曜日学校のボランティアに行ったり、外国人の人に無償で日本語を教えるようなことをやってみたり。そういった経験をその時にしました。

qbc:はいはい。

国枝:そこで最初の語学学校で今の夫に出会ってしまって。

qbc:あー。

国枝:それで一旦日本に帰って普通に就職もして、日本で3年ほど大学職員の仕事もしていたんですけど、やっぱりまた大学院留学して大学で日本語教師になりたい気持ちが消えなくて。お金貯めて、またこっちに戻ってきました。その間も今の夫と続いてたから決心できたのもありますけど。

qbc:シンプルに、好きな人と生活するためにオーストラリアに行き、もともと勉強してた流れで日本語教師を職業にしたと。

国枝:そんな感じですかね。もし今の夫と続いてなくてもとりあえず来ていたと思うんですけど、そこから永住するっていうところまでは、自分1人の力じゃできなかっただろうなと思います。

qbc:愛の力。ちなみに、日本語をお子さんに学ばせたいと思っているお母さんたちがいるって需要、どこで気づかれたんですか?

国枝:自分が土曜校で働いていた時も、クラスが定員オーバーしてしまうような感じで応募はあったんですよね。
で、自分が子供を産んで、周りで「日本語どうするー?」と、どうやって日本語の環境を家で作るかとか話はじめたんですよね。日本語の家庭保育園や日本語のイマージョンクラスがある公立校とかもあるんですけど、そういったところにどうやって入れるかとか。わざわざその近くに引っ越すとか。

qbc:へええ。

国枝:その気持ちは私も大いに分かります。バイリンガルにしたいって気持ちもあるし。あとは母親である自分の母語だから、子供がそれを話さないっていうのは寂しい気持ちもあるし。それから日本に住んでる自分の親とコミュニケーションが取れるぐらいには喋れるようにさせたい、というのがみんなだいたい考えることだと思います。

qbc:そういうトピックを話す時っていうんですかね。自分が子供に日本語を学ばせたいという気持ちを感じて、それを周りの人も持ってる、同じ悩みを持ってる、ていうのはどんなタイミングで気づくものなんですかね?
私が海外での日本語コミュニティを体感したことがないから生じてる質問だと思うのですけど。

国枝:やっぱりママ友と話をする時ですね。ご主人が日本人じゃなく日本語もわからない場合、家庭では英語で話す環境になりがちなんですよ。
で、子供が学校に行き始めるとより英語の環境が強くなるので。だんだん家でも日本語話さなくなる。そうするとお母さんが日本語で話しかけても、全部英語で返ってくる。実際に起きるんですよね。

qbc:日本語で話しかけても英語で返ってくるのか。なるほどね。

国枝:国際結婚で海外在住者の、共通の悩みだと思う。自分の教えていた土曜校の保護者さんからも面談で、自然とお悩みを伺ってましたし。「carじゃなくて、車でしょ!」と直していいのか? 何か国語も聞くと混乱しないかとか…

qbc:太平洋センス前後の海外居住者のエッセイで、子供の頃にロシアで暮らしていたら、日本語もロシアも中途半端におぼえちゃって、言語がぐちゃぐちゃになるっていうのを読んだことがありますね。
ロシアで生まれて、小学生ぐらいで日本に戻って来たらしいんですが、ロシア語でも日本語でもちゃんと会話ができない。

国枝:そういう状態のことをダブルリミテッドって言うんですけど。

qbc:はー言葉があるんですねなるほど。

そのエッセイはこちら!

国枝:そうなんですよ。どちらの言語も普通に話せない状況になる可能性もあります。それはどういう状況で起こるかっていうと、今おっしゃったみたいに環境がコロコロ変わってしまって、言語発達がある程度まで進んだところで環境が変わり、その言語に触れなくなれば、一旦発達がストップしてしまう可能性が大きい。
ただずっとオーストラリアに住んでいる状況で、親が同じ言語を常に話してる、例えばお母さんはずっと日本語を話している、お父さんはずっと英語を話している、という両方の言語のインプット・アウトプットが常にできていれば、バイリンガルにきちんとなれる可能性はグッと高くなります。

qbc:あ、同時に覚えるんだ、へえええー!

国枝:同時で大丈夫です。私が大学院行っている間に聞いた話だと、四言語ぐらいまでは同時に入れてても子供は頭の中で同時に処理をして、四言語を分けられるようになるんです。3歳ぐらいになったときにこれは英語、これは日本語っていうのが分かってくるんです。それをできれば、コミュニケーションのツールなので、きれいに分けられるんですね。

qbc:きれいにっていうのは?

国枝:例えばお母さんとは日本語、お父さんとは英語っていう感じで頭の中できれいにスイッチが切り替わる。それが、例えばお母さんが常に英語も日本語も話してる、お父さんはカタコトの日本語と英語で話してるみたいな感じだと、その言語がどっちの言語かっていう判断がつきにくくなってしまうんです。ルー大柴さん状態みたいになりがち。あれも言語習得の過程なので、全然悪いことじゃないんですけど。

qbc:はいはいはい。

国枝:でもそのままだと、どちらもしっかり発達しないように聞こえてしまうんですよ。実際こっちに住んでいれば現地の学校に行くので、そこは英語環境で、学習言語としてきっちり学ぶのであんまり問題ないです。英語の発達が多少子供の時に遅くても、絶対にその環境に引っ張られる。
逆に母語というか、こっちのマイノリティの言語をキチンと発達させることってけっこう努力が必要です。家庭での努力が必要になってきます。
週に一度の土曜校に行かせたからって、それだけだと厳しいです。

qbc:マイノリティ言語というのは?

国枝:オーストラリアだと周りは英語の環境で、それ以外の言葉はマイノリティで家庭でしか話されないことが多い。家でお母さんと話す時にだけ使う言語って、「ママ―、お腹空いたー」みたいなことしか言わなかったりするんです。それを大人になっても使えるほどの語彙力とか、日本語の場合は特に読み書きが大変なので、読み書きの力をつけさせるには、相当な努力が必要です。

qbc:めちゃくちゃ面白いトピックです。言葉が好きなので。

2、学習は楽しくないと続けられないよね

国枝:これから発信しようと思っているんですけど、海外在住者が自分の母語を子供に学習させるには動機づけが必要だと考えています。なぜそれを勉強しないといけないのかを明確にしてあげる。

qbc:はい。

国枝:「将来のためよ」とか漠然としたことではまったく響かないから、私がいつも伝えたいなと思っているのは、日本語を一緒に楽しむ、おじいちゃんおばあちゃんと話す機会を増やすとか、お手紙を書くようなコミュニケーションツールとして使うとか、ですね。
うちの子の場合は、マンガ大好きにさせちゃったので、マンガを読み漁ってます。それで語彙力がすごい増えてる。文字の認識とかも読んでいるうちにいつの間にかできるようになってます。
今8歳なんで、日本の二年生なんですけど、わりと三、四年生の漢字ぐらいまでは読めます。全部の読み方を知ってる訳じゃないけど「この言葉はマンガのこれこれに出てきた」とか「誰々の名前だ」とかそういうことで何回も見てると覚えるんですよ。

qbc:おおー。どんなマンガを読んでるんですか?

国枝:今は、ハイキュー‼とか

qbc:2年生でそんなの読めるんだ。

国枝:高校生の内容だけど、楽しいみたいですね。あとは、最近は黒子のバスケ。その前はキャプテン翼読んでました。

qbc:え、ボールは友達?

国枝:今やってる、翼が大人になってからのオリンピックの話。キャプテン翼を読んで、サッカー少年になって、最近バレーボール練習しだして、今度はバスケやりたいって。
すごい単純なんですけどw

qbc:同じ。スラムダンク読んだ中学生の私の周りと同じ。

国枝:私もその世代ですよ。

qbc:そう、スラムダンク世代だから、野球部じゃなくてバスケ部多かったですよね。

国枝:うちの夫は香港人なんですけどスラムダンク大好きで、それでバスケ始めたらしいです。日本のマンガってすごい影響力があって。スポーツマンガはいいですよね。変に暴力的なこともないし。

qbc:そー。日本のマンガは基本暴力きついですからね。

国枝:ハイキュー!! は爽やかなストーリーだし、みんな個性があって私も好きです。

qbc:海外コミックって確かにスポーツものないですね。ヒーローものはバットマンやらレジェンドがたくさんいますが。

国枝:スポーツものって健全じゃないですか、ストーリーがね。戦いものとかより。

qbc:そっかー。なるほどねえ。

国枝:繰り返し読んでたら漢字も覚えるし、書きたければ、自分で調べて書こうとする。学校の宿題だと嫌がってやらないんですけど、自発的にハイキュ‼ーのメンバーリストを作るとか言って漢字で書き出したりとか。
なるべく自分からやりたい気持ちにさせるっていうところを伝えていけたらなって思ってるんですよね。日本の私たちが受けてきた日本の教育ってのが、先生から一方的に受けてきた教育が多いじゃないですか。みんながそうだった訳じゃないかもしれないですけど。

qbc:そうですね。海外在住者インタビューでわりと話題にあがります。コーチングは、そういう教え方にならないですよね。

国枝:そう、コーチングは、双方でやり取りしながら生徒やクライアント自身に考えさせていく方法なんですよね。
先生が一方的に伝える感じで育ってきた人にとっては、なんとなくそれが正しいと思いこんでいて、そういう風にさせなきゃいけないと思いがちなんですけど。
オーストラリアの教育って、結構自由なんですよ。子供のそれぞれの個性を尊重してというか、みんなレベルが違って当たり前なので、個々に合わせている。言語のバックグラウンドの子もみんなそれぞれだし。

qbc:なるほどねー。オーストラリアの言語状況ってどうなってるんですか?

国枝:みんなが英語を話すってわけではないですね。私が住んでいる地域はアジア人がすごく多いです。都心なので移民が多くて、家では英語を話していないのが普通。
うちの子も英語のレベルがどうかって言われたら、話せるしコミュニケーション取れてるんですけど、文法とか完璧じゃないんですよ。でも学校行くとそういう子ばっかりなんですよ。先生もそれに慣れてるから、そこを別に注意したりしないし。その子自身が一年間の中で成長できればOKっていう風に評価をされるんですけど。

qbc:あーなるほど。それは感覚が違うわ。

国枝:日本人の考える日本の教育って、二年生ならこのレベルに達しなければいけないとか、二年生の漢字なら全部覚えさせなければいけないとか。そうじゃないと次の学年に行った時についていけないとか、みんなを一定以上にしていかなければいけないって、先生も親も思いがちなんですよね。
そこが子供にとってすごくストレスになるんじゃないかなって。こっちの環境では特にそうですね、そこをもう少し柔軟に考えていきましょう、ってお話しできたらなと思っています。

qbc:日本で行われている、日本の教育かあ。

国枝:ママ友の話を聞いてると、日本の教育を感じますよ。漢字は何十回も書いて覚えるものとか。

qbc:ああ。それはありますね。会社でもそういう感覚で仕事を覚えようとしている人がいる。

国枝:毎日宿題をやらないといけないとか。やった方がいいんですけどね。それを子供を泣かせながら無理矢理やらせてるとか聞いたりすると…

qbc:うわ。本当にあった怖い日本の教育w

国枝:日本語学習が辛い思い出になってしまったらすごく心苦しいじゃないですか。
外国語として日本語を学ぶ成人の学習者たちに教えてきた経験からいうと、言葉の勉強がずっと続けられる人って、やっぱりその言葉が好きなんですよね。
アニメとかマンガが好きな人がいっぱいいるんですけど、好きな人たちは放っておいても勝手に勉強するようになるんですよ。ストレスたまらないんですよ。
私の子も、学校の宿題をやらせるのではなくて、一緒にアニメ見て、ゲームとかして日本語を学習する方法に変えました。そうしたほうが親としての自分も怒らなくてすみます。

qbc:面白いタイミングだなあ。ちょうど昨日、中学校の先生にインタビューだったんですよ。育休中なんですけどね。
先生自身も、ああやれこうやれって言われてるんですって。先生もそれがストレスになってる。で、その先生は復帰するつもりだったんだけど、もう学校には戻らない。辞めるって。
ああやれこうやれにはもう戻ってやらないぞと。

国枝:いいですね、いいと思います。

qbc:あと、青年海外協力隊でドミニカ共和国に行った人のインタビューですね。その人ははドミニカ共和国で環境教育を行うんですけど、みんな授業中にそわそわしちゃって落ち着かないんですって。それを見て。日本の教育はやっぱり正しいんだと再確認したと言っていて。

国枝:正しいと思ったんですね。

qbc:そうそう。で、それってどうなんだろうと思ったんですよ。
なので、その人と、小学校の先生を10年近くやってる私の友人に話をしてもらいました。対談型インタビューですね。そしたら、小学校の先生も、「日本の教育はやりすぎだと思ってますよ」って。

国枝:日本の先生が言ってるんですね?

qbc:そうです。大人しくしてるけれども、心が授業に向いてるわけじゃない、むりやりやらせてるしつけだ、って。
行政のことだから簡単に変えるのは難しい。難しいでオッケー。でも、意見がオープンにあんまなってないよなーっていうのは感じますね。

ドミニカ共和国と日本の教育のお話はこちら!

国枝:Twitterとかで私がフォローする人って、教育関係の人が多いんですね。学校の先生とか。でも、そういった方はたぶんこっそりSNSをやってるんですよ。ツイートを見てると、大変!って思います。オーストラリアの先生とは比べ物にならないほど仕事量が多いと思います。

qbc:そうなんだーやっぱり。

国枝:こっちはちゃんと休みとかあるし、ちゃんと線引きしてる。親のやるべきこと、先生のやるべきこと、部活とかの専門でやるべきことを、ちゃんと人を雇って分けてます。
あまりに専門が増えすぎると先生もみんなを見れなくなっちゃう。

3、コーチングは心を軽くするよね

qbc:ちなみに、コーチングを始めたきっかけってなんだったんですかね?

国枝:最初にコーチングという言葉を目にしたのは2年くらい前で、自分のキャリアに悩んでいたんですよね。日本語教師そのものはすごく好きで、当時は大学で7年くらい非常勤講師をしていました。けど、非常勤講師って経済面ですごい不安定なんで、非常勤講師+プライベートレッスンをちょこちょこやりながら。子育ての時はいい働き方だったんですけど、子供がちょうど学校に入ったくらいのタイミングで、空いてきた時間を「どうしようかな」と考え始めたんですね。

qbc:なるほどね。

国枝:そこでたまたま目についた言葉がコーチングだったんです。自分の強みを考えたりしている時に、オーストラリアにいらっしゃるコーチのブログを見つけて、体験を受けてみたのが最初です。
コーチングってこういうことなのかって、その時やっと分かったんですよね。もうちょっと指導される感じなのかと思ってたんですけど、自分の中から潜在意識を深堀りするみたいな感じだったから。その流れで、マザーズコーチングと、トラストコーチング講座を受けました。

qbc:コーチングを受けて、どんな感じでした? 開放感とか、ふわっとするとか、そういう感覚で言うと。

国枝:私の場合、コーチングを受ける前の自分は、ネガティブ思考に陥るとスパイラルにはまってしまってなかなか抜け出せなかったんですよ。
で、その要因が自分の家族、夫とか両親に感じていた不満やわだかまりだったというのが気づけて、ちゃんと許せて、スパイラルから抜けられるようになりましたね。
で、そういう胸のつかえがなくなってくると、自然と自分の目標に向かっていけたりするわけです。

qbc:それはビジネスコーチングですか?

国枝:ビジネスコーチングと言い切っていいものか…? 後半のアドバンス講座は部下がいるような指導する立場の人向けに作られている感じは確かにありますが、前半のベーシック講座はめちゃくちゃ自分と向き合います。
その中で、心の重荷になってるものは何かを見るっていうワークがあって、そのせいで目標が達成できないって繋がっていくんですよね。私の場合は、起業をすると母親に何か言われるんじゃないかとか、夫にこう思われるんじゃないかとか、そういうひっかかりというか、思い込みが根底にあるのが分かりました。

qbc:なるほどね。

国枝:なので、まずその人たちと話してみることが大事なんじゃないか、と。導かれる感じです。こんなことを起業してやりたいと思っているんだけど、いいかな?と聞いてみたら、家族は応援してくれていると、実際にわかったんですね。

qbc:なるほどね。そういうステップが入るんですね。

国枝:私も最初は目標達成の仕方とかを学ぶのかと思っていたら、結局は自分の心と向き合うことなんです。そこをおろそかにしていたら、どこかでつまづくんですよね。
で、向き合ううちに、心が軽くなっていく。そうすると、自分がやりたいと思っていたこともあんまり躊躇せず行動できるようになってきた。

qbc:軽くなる、ですね。

国枝:そう! 軽くなる軽くなる。
自分の心の状態が調うことで、相手にかける言葉とかが変わってくる。後半部分で実際のコーチングスキルを学ぶんですけど、自分の心の状態が悪い時はこういうことを言えって言われても言えない状態だし、話も上手に聞けない。
だから自分の心の状態を自分で分かっておくっていうのが最初の部分にありますね。

qbc:そういうところから始まるんですねー。

国枝:うん、そうですね。ビジネスコーチングっていうと、敷居が高いと思われがちですが、私が今提供させていただいている講座は自分と向き合って、周りの人間関係をまず改善して心を軽くしましょうって内容ですね。お時間もお値段も他のコーチング講座に比べると、そんなにかからないし。

qbc:エッセンスってわけですね。

国枝:そうそう。みんな心が軽くなって、みんなちょっと人間関係良くなるよねっていう。最初の敷居をすごく低くしてる感じらしいです。全ての人がコーチングを学んだら、もっと世の中は優しい世界になれるのではと感じてます。

4、海外移住者の日本語教育

qbc:未来について聞きたいですね。この先5年後10年後、どういう状態にしていきたいですか?

国枝:ちゃんとイメージしてなかったかも。日本語を教える仕事をやっぱり続けたい。今やってるコーチングはそこに組みこみたい。日本語だけ教えられますっていう人よりも差別化をして、そのプログラムを他の先生やりたい人にも伝えられるようにしたい。
あとはやっぱり海外在住者のお子さんの日本語教育。これからますます国際結婚増えると思うので。

qbc:増えるでしょうねー。

国枝:日本語で継承語、英語でHeritage Languageという言葉があるんです。
第二世代までは何とか伝わるけど、第三世代には消えちゃうことが多いんですよ。日本の良いところがいっぱいあるし、複数の言語と文化を学ぶことで広い視野を持てるし、何より親と深く繋がれるツールになる。子どもの将来のためというより、そこを伝えていくための日本語教育なんですよっていうのを、これから海外でお母さんになる人たちにうまく伝えていきたい。
海外での子育てって孤独なんだけど、そういったお母さんたちがマザーズコーチングを学んで、孤独感を薄められて、子育てを楽しくしてもらえたらいいななんて思っていて。それこそ美紀子さんに触発されて、私も電子書籍とか書きたいと思ってるんですけど。

qbc:おー面白そう。

国枝:バイリンガルにするにはどうしたらいいかというハウツー本はいっぱいあるんですよ。でも、そういう本って私はプレッシャーを感じちゃうんですよ。そうじゃなきゃいけないみたいに思って。
日本でも、小学校で英語教育が始まって、親は必死になって英語教室に赤ちゃんから通わせるとかやってるじゃないですか。それが間違ってる訳じゃないですけど、それ以前にマザーズコーチングっていうものを知ってもらえたら、お子さんとの関わりをまず見直せるんですよね。細々と自分のできる範囲内で伝えていくっていうのではなくて、本を書いたりしながら広げていきたいなと思って。

qbc:「文化の間にいる」時点でもう面白いですよね。

国枝:面白いですか?

qbc:面白いですよ。他のインタビューした方でも、フランスで生まれた日本人で、ご結婚されるんですが、相手がドイツ生まれの日本人なんですね。

国枝:ドイツ生まれの日本人?

qbc:そう。ドイツ生まれの日本人。二人とも日本人で子供の頃に日本にきて日本で出会ってるけど、フランスの自由恋愛カルチャーとドイツの契約主義カルチャーが合わないみたいで、そういうの面白いよなって。

これがそのインタビューです!

qbc:こういうカルチャーの違いについてのエッセイって面白いだろうなって。でもまあ、実学寄りのノウハウ本、ハウツー本のほうが需要がある、間口が広くなるってのは分かりますけどね。
ただそういう実効力を求めるって結果を求めるってことだから、広い視点が持てなくなっちゃうんですよね。視野が狭くなっちゃう。ノウハウ作りには広い視野が必要ですよ、でもノウハウを使うっていう時は、余計なことを考えずにこれをやりなってことだから。
そういう時には、ノウハウの背景となった考え方自体を示す、エッセイみたいなもんのほうが重要で。

国枝:そうですね。それぞれの家庭ごとにやり方も何もかも違うので。お母さんがストレスたまらない方法というのが、一番合ってる方法なんですよって。
最終的に言いたいことはそれなんです。

qbc:子供にストレス伝わっちゃいますからね。

国枝:お母さんがしっくり来ててストレスたまらない方法なら、子供もそれをスッと受け入れてくれる思うし。
言語学を学んできた者としては、このやり方がうまくいくと言われていますとか一応はお話しはできます。でも一番大事なのは、お子さんの心を置いてけぼりにしないようにってことですよと。

qbc:あくまで理論と実践の関係なんですよね。現実に対して100%うまくいく理論なんてない。

国枝:いろんなシチュエーションがあるし、いろんなお子さんの学習タイプがある。だから、アプローチの仕方を変えるとうまくいくかもーとか、そういうのも伝えたい。

qbc:お医者さんのインタビューを思い出しますね。西洋医学は対処療法しかない。病気になった時しか病気じゃない。一方、東洋医学は病気になる前の未病の段階まで対象にしている。
東洋医学のほうは個々でめちゃくちゃ環境が変わるから、対処する方法もけっこうあやふや。言い換えると怪しげ。間違いもある、西洋医学だって間違うけど。でも、病気になってから対応するよりかはいいよねって。

お医者さんインタビューはこちら!

国枝:子育ても思い通りにいかないですからね。大人相手だったらある程度ルールがあって、みんなそれに従っていったらそれなりに秩序が保たれるとかあると思うけど。
子供相手ってなかなか本当に。

qbc:コントロールするのをいつ諦めるのかって話なんですかね。

国枝:どれだけ諦められるか、どれだけ辞められるか。親がやり過ぎてるのをどうやって辞められるかとか。そこに尽きる気もします。自分のストレスコントロールもね。

qbc:諦めが肝心。

国枝:でも日本語教育・バイリンガル教育に関しては諦めたくない、という人もいるんですよね。ダメです!諦めてくださいっていうのは突き放しなので、じゃあこんなアプローチの仕方をやってみて、お母さんがハッピーで子供もハッピーならやってみて、って。
そんなところが伝わったらいいかな。その辺はまだぼやーっとはしていますが。

qbc:ぼやーんとしたものをぼやーんのままで追いかけるとか、分からないものを分からないままでおくっていうの力も必要ですからね。明確でもないし、失敗も許容するし。

国枝:コーチングそのものが受けた後にぼやーっとして終わっちゃうんですよ。正解がない物をいろいろ考えて、で、正解が出ない。
でも、普段意識してないことを意識して見ることで視点が変わってきたりとか、フレキシブルに考えられたり、許容できることが増えたり。

qbc:私はコーチングって釣りだと思ってて、一か所に留まって動かなくなった心をぐっと釣りあげるみたいな。
あとEducationって外に引き出すっていう意味らしいんですよね。日本のいわゆる教育のイメージって型に押しあてるっていうのをイメージするんですけど、広げていくイメージ。その人の可能性を最大化するっていう。

※ごめん! これはあるある間違いで否定されてるみたい。

国枝:日本語教育の世界、ちょっと体質が古いところもあるみたいで。割と知識ばっかり教えるのに終始しちゃいがちなんですよ。
でも、最近アクティブラーニングなど、自律学習が注目されてきてるので、それをもうすこし広められたらなと思います。教わるだけじゃなくて、ちゃんと自分で考えて自主的に学ぶっていうか。私も自分のティーチングの中にもうすこし取りいれていけたらなと思っています。

qbc:そうですね。ティーチング、カウンセリング、コンサルティング、コーチングとかでしたっけ。

国枝:そうですね、全部ちょっと違います。ファシリテートとかも入れて。

qbc:こういう技術がゆるいですよね。どうやって人に伝えるか系テクノロジー。

国枝:島国だから?

qbc:そうそう。もやかして意味を伝えるっていうのは革命的に優れた言語だと思うんです。はっきり言ってないのに伝えるって文化。それはすごいことだと思うんですけど、それって言葉だけじゃ成立しないじゃん、生活風習も含めてやんないとって。

国枝:そうですね、そうですね。それが思いこみを強くしてるところもあるのかも。

qbc:特殊技術だと思う。

国枝:相手にゆだねる。いい部分もあるけど、相手の判断によって、うまく伝わらない場合がある。

qbc:で、さらにそれで世の中が回ってるのもすごい。

国枝:すごいですね。空気読む。日本人が空気読むのはある意味すごいです。いい部分もいっぱいあると思います。

qbc:そう。めっちゃ気が利く、心地良いですよ。あと、主語が消えるのもそのせいだと思ってるんですけどね。

国枝:あぁー主語消えますね。主語も目的語も消えるんですよね。

qbc:異常事態ですよね。普通に考えたらね。

国枝:中級レベルの生徒さんから「なんでこれはこの人がやったことになってんの?」みたいな感じで「どこにそれ書いてあるの?」って。「書いてないんだよって」w

qbc:「明文化されないんですよ」って。

国枝:「前の文を読んだら分かるから書いてないんだよ」っていうと「えぇー!」って言われます。

qbc:確かにね。「えぇー!」ですよね。

国枝:あとはその人の口調とかで誰が言ったか判断したりとか。日本人はそこから性別とか判断できるから面白いんですけどね。
社会言語学とか実用論って学問もあるんですよ。どの場面でどの言葉を使って、どういう風に使うかみたいな。主語を言わないとか最後まで言わないとか、日本語には実際あるじゃないですか。そういうのもコーチングとちょっと重なる部分がありますね。

qbc:あー分かりますね。私、小説を書くから。理論の医学と臨床の医学みたいな関係性ですね。言語学が理論で、コーチングが実践。小説も実践。

国枝:そうなんですよ。奥深くて面白い。

qbc:実際に自分が使うし、言葉は。

国枝:どうやって褒めると効果的かとか、でもそれは実はこの人には効果的じゃないとか、そういった視点ですよね。

qbc:あー楽しくなってきたのに時間が! ありがとうございました!

国枝:ありがとうございました!

あとがき

いかがでしたでしょーか国枝さん回。
一般の問題として、
これは今後、海外在住者座談会みたいなのをやりたいんですよね。あと無名人スクールとかいって、誰かに先生になって勉強するのもやってみたい。まーでもそうなったらサロンとかのプラットフォーム借りることになるんだろうなあ。いやあやること多いわ。
まあよい。
国枝さんのお話聞いて、Heritage languageというのを聞いて、面白いなーと思いました。二世代目はいけるけど、三世代目はダメなんだよって。で、言葉の中に日本の良いところが入ってるってのも注目すべきところですよね。私たちは国家に住んでるじゃない、国語の中に住んでるんだ、でしたっけ?
まあともあれね、言葉をないがしろにする人の心は、どんどん動物に近づいてしまうんですよ。
かわいらしさはあれども人間みはすくない。
みんな、未来へ向かっていこうぜ。

編集協力:えつこさん

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