unknown.-誰も知らない答えを探してる-⑨-
Aさんと約束した当日。
都内で待ち合わせをした。
A「ここだよ。」
ん?なんだここ?
見た目からしてめちゃめちゃエジプト感のあるお店。
A「こんちわ〜。」
店員「あ、どーも!」
どうやらAさんはそこそこ常連さんらしい。
A「日本でおれが一番いいと思ったシーシャのお店だよ。」
おお、シーシャのお店か。
店内は4畳くらいのとてもとても小さいお店。
外のテラス席は2席ほどだけあり、
多くても1度に10人くらいまでが限界だろう。
こんな小さい店が日本一…?
店内には先に数名がいた。
A「あ、どーも。」
客「どーも。」
向かいのがたいのいいお客さんも顔見知りらしい。
A「今日ゴールデンマスカットあります?」
店員「あるよー。」
A「じゃあそれとホットコーヒーで。」
ゴールデンマスカット!?
なんか普通に気になる。
自分「あ、じゃあ同じので。」
この前行ったお店よりまあまあ高い。
日本一だからか?
15分くらい待っていると、
前回のお店よりも大きいシーシャが出てきた。
そして作りもごつごつしていて年季が入っていた。
A「ありがとうございます。」
Aさんによるとどうやら店長さん1人で運営していて、
実際にエジプトで10年もシーシャの修行をしてきたらしい。
とんでもない職人だった。
自分「何が日本一なんですか?」
A「まあ単純に美味いっていうのもあるけど、ここのシーシャは3時間くらいもつね。」
自分「長いのがいいんですか?」
A「美味い状態で長く持たせるには技術がいるんだよ。」
シーシャはかなり回転率の悪いビジネスだと思ったが、
それも中東の文化なのだろうと受け入れた。
私は前回の体験を思い出し、
腹式呼吸で吸ってみた。
「(ゴボボ)コホッコホッ!」
あれ…?
完全にむせた。
へたになったか?
A「あははは。」
またこの人事前に説明せずに楽しんでいる。
A「煙すごいでしょ。」
ニヤニヤしながら説明してくる。
A「煙が多いのも技術なんだよ。」
またやられたー。
でもなんか煙が多いって面白い。
客「お兄ちゃんシーシャ初めて?」
向かいのお客さんが話しかけてきた。
自分「いや、実は2回目です。」
恥ずかしながら2回目なのにまだ上手く吸えない。
客「ここは日本一のシーシャだよ。」
Aさんと同じこと言ってる。
がたいのいいそのお客さんは、
当たり前のように吸って大量の煙を吐いている。
すごい。
Aさんも隣で大量に煙を出している。
客「お兄さんよく会うよね。」
A「はい、Aです。」
2人は初めて話して、初めて握手をしたそうだ。
そのがたいのいいお客さんの隣には奥さんが座っていた。
Aさん含めて3人で何やら話が盛り上がっていた。
どうやらそのがたいのいいお客さんは有名人らしい。
だがその人がこのお店にいることがバレると人がたかってしまい、
お店も困るしその人も行きつけのそのお店に通えなくなるから、
他言無用でと厳格にお願いされた。
もちろんここでも名前は伏せるし、場所も伏せる。
そして衝撃的な話を聞いた。
客「実はおれはムスリムなんだけど、妻はクリスチャンなんだよ。」
えっ!?
そんなことってありえるの!?
衝撃だった。
今まで家庭内で違う宗教なんて考えたこともなかった。
自分「それって家庭内で問題にならないんですか?」
当然誰もが気になる疑問だろう。
奥「もちろん生活上揉めることはあるけど、誰が何を信じるかは自由だし、お互い尊重はしてるから私たちは全然やっていけてるよ。」
ほぇぇえ〜。
これはとても面白い。
そんなことが成り立つのか。
さらに衝撃的な話を聞いた。
奥「彼は元々クリスチャンだったんだよ。」
えーーーーーーーーーー!!!!!!
Aさんもさすがに驚いていた。
客「そう、俺はエジプト生まれだけどクリスチャンの家系で育ったから元々はクリスチャンだった。だけど、日本に来てから宗教観のなさを疑問に持つようになって、同時に自分がクリスチャンであることにも疑問を持つようになったんだよ。」
ほうほう。
客「それで、自分自身で信じるものを改めて探そうと思って何年か探し続けて今はムスリムになったよ。」
…新しい。
日本の宗教観のなさが逆に彼にとっては人生を変えるきっかけになった。
自分「奥さんとはどのタイミングで出会ったんですか?」
奥「彼がクリスチャンだった頃からだよ。でも疑問に持って信じるものを改めて探そうとしている彼に興味が湧いて惹かれたの。」
とんでもない夫婦がいたもんだ。
Aさんはすごい貴重な機会をくれたと思っていたが、Aさんも驚いていたから偶然だったらしい。
Aさんはただ、
私を日本一のシーシャの店に連れてくるだけの予定だったそうだ。
この日は解散し、
後日、私は友兄に会いに行くことにした。
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