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大学授業一歩前(第118講)

はじめに

今回は文芸批評家の高原到様に記事を寄稿して頂きました。大変お忙しい中作成して頂きありがとうございました。是非、今回もご一読くださいませ。

プロフィール

Q:ご自身のプロフィールを教えて下さい。

A:高原到です。主に日本の近現代小説を対象にした批評を書いています。二○二一年九月に、文芸誌に発表した文章をまとめた『暴力論』を講談社から上梓しました。テロ、人種差別、性差別、いじめ、戦争といった暴力に、文学はいかにして対抗しうるのかを考究したものです。テーマに興味をお持ちの方は、ぜひご一読ください。

オススメの過ごし方

Q:大学生にオススメの過ごし方を教えてください。

A:私は、大学時代には体育会のラグビー部に入っており、生活はほぼラグビー一色でした。学部は文学部、専攻は社会学でしたが、ほとんど講義には出ず、もっぱら部活の仲間とつるんで、下宿とグラウンドを往復する毎日でした。ですから、有益なアドバイスなどできた分際ではありません。
 ただ、一つでもいい、これを大学時代にやったんだ、と言えるほど打ちこむことができるものを探すのは大事だと思います。べつに学問でなくてもいい。バンドでもサークルでも、これをしなければ生きていけなかったと後で振り返って思えるような対象を見つけられればいいと思います。

必須の能力

Q:大学生に必須の能力をどのようなものだとお考えになりますか。

A:基本的なリテラシーがやはり重要だと思います。日本語の読み書き能力、そして外国語をしっかり学ぶことも大事だと思います。外国語を学ぶと、日本語の思考が相対化できます。
 私は上記のように、ラグビー漬けの毎日で、結局大学時代には一つの外国語も自分のものにできませんでした。それが悔いとして残っています。今は毎日、英語とドイツ語とフランス語を三十分ずつ読むことを日課として自分に課しています。ただ、これが大学時代にできていれば、もっと自由な考えを持てただろうと残念に思っています。

学ぶ意義

Q:先生にとっての学ぶ意義を教えてください。

A:学ぶことがなければ、自分をよく知ることもできません。自分を知らなければ、自分に合った人生を選ぶこともできません。
 使い古されたいいかたかもしれませんが、人生とは学ぶことに尽きると思います。大学生は、その学ぶということを特権的な形で許されている存在です。ぜひ存分にその時間を生かしてほしいと思います。大学内だけが学ぶ場ではありません。構えさえあれば、どこででも深く学ぶことはできます。それが、十年後二十年後に効いてきます。

オススメの一冊

Q:今だからこそ読んでおいてほしい一冊を教えてください。

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A:大澤真幸さんの『〈世界史〉の哲学』をオススメします。これはシリーズになっていて、ヨーロッパを中心に、インドや中国といった東洋やイスラム世界までをも含む壮大きわまりないプロジェクトです。どの一冊を選んでも間違いはないですが、私は「東洋篇」を興味深く読みました。考えるという営みのダイナミズムが凝縮された、すばらしい仕事だと思います。読めば自分の世界が広がることを請け合います。

メッセージ

Q:最後に学生へのメッセージをお願いします。

A:大学生の今こそ、学び、考えるということを、人生で一番享楽できる時期です。大学に残って研究者になるといった一部の人をのぞいて、社会に出てしまえば、もうこういう時間はなかなかとれません。精いっぱい読み、議論し、考えて、自分の土台を創ってほしいと願っています。

おわりに

今回は文芸批評家の高原到様に記事を寄稿して頂きました。お忙しい中、作成して頂き本当にありがとうございました。高原様の『暴力論』は世の中に暴力がはびこる今、文学には何が出来るかについて真正面から考えた一冊になっております。是非、こちらもご一読くださいませ。

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2022年一回目の投稿でした。まだまだ第150講までは長い道のりですが、引き続き皆様よろしくお願いいたします。次回もお楽しみに!!




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