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みたらしフェロモン

「みたらし団子」という食べ物がある。


日本に生活していればほぼ確実に一度は見たり食べたりしたことがあるであろう、極めてメジャーな「お団子」

お米でできたお団子に焼き目をつけてから醤油ベースで甘辛いとろりとしたタレをかけたもので、スーパーやコンビニでも手に入れられるありふれた「昔ながらのおやつ」である。


最近、ある出来事以来、どうもみたらし団子がうまそうに見えてたまらなくなりました。あの色、香り、味、全てがその記憶だけでわたしを強くかきたてるようになったのです…。


みたらしとわたし

年齢を経てくるとカロリーのありそうなものや甘いものを敬遠するようになっていきます。お団子なんかはまさにその代表格。糖質の塊。食べたら血糖値即ギュンギュンアップ!の代物です。例外でなくわたしもここ10年くらいは手に取らなくなっていました。横目でチラ見です。チラ見。

なんとなーく、あるのは確認しているぞ、といった程度の、そんな距離感。小学校の時の同級生が同じスーパーで買い物してるけど、そんなに仲良くなかったし、たぶんあのこだけど、声はかけるほどでも…程度の距離感。お互いちょっと意識はしてるし、認識はしてるけど、挨拶するほどのものでもありません。



ところが、それを覆すような大きい事件がわたしの元にやってきました。

人生の大事件。

妊娠です。

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腹が団子のようになるから親近感を持ってしまったのです(絶対違う


つわりとみたらしの奇縁とは

妊婦といえば「つわり」
つわりといえば「妊婦」

あまりにも有名な妊娠時の体調不良。

しかし、この「つわり」
ドラマや映画などでよくみられる
「うっ……(バタバタとトイレに駆け込む)」
「ミカさん……あなたもしかして!?」
「お義母さん!!」

みたいなものばかりじゃないと知っていましたか?

わたしは自分が妊娠するまでは知りませんでした。
「つわり」にはそういう有名な『吐きづわり』だけでなく、
なんらかの匂いに反応して気持ちが悪くなってしまう『においつわり』
ひたすら眠い『眠りづわり』
そしてわたしのような、常に何かを食べていないと気持ち悪くなる『食べづわり』なんてものもあります。

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食べつわりに呪われた

恐ろしいです食べつわり。

太っちゃいけないのにお腹も減りやすくなるし、
なにせ食べてないと気持ち悪くなるのです。

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しかも他のタイプと同じように食の好みが大幅に変わったり食への衝動がかなりトンガって来たりもしてしまい、あれが食べたい! どうしてもたべたい! と一度思うと止まらなかったり、なのに食べたい物がコロコロ変わってしまったり、食べたくてもにおいを嗅いだだけ、思い出しただけで吐き気に襲われてしまったりと、制御の難しくなった食への衝動にかなり振り回されます。

マックのポテトしか食べられなくなるとか、寿司とラーメンしか食べられなくなるとか、炊きたてご飯の香りが完全にダメになるとか、大嫌いだったものを一時的に大好きになったりするとか言う恐ろしい(?)話がたくさんネット上にも転がっていますが

そんな中、わたしには何故か「みたらし団子」がツボにハマり、それが食べたくて食べたくてたまらなくなってしまったのです。

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みたらし団子。

考えてみたらみたらしは醤油とみりんとお米と砂糖です。

炊きたてご飯は匂いがダメで食べられないし、親子丼も牛丼も煮物も無理。
なのにあの時期みたらし団子だけはわたしの脳内にベスト・オブ・うまいものとして君臨し続けたました。

ああ、みたらし、食べたい……と唸っていたあの時の感覚
今でも思い出せるあの焦燥感に似た食欲…。
体重制限と血糖コントロールの必要性もわかっているのに猛烈に食べたくてたまらなかった、あの、味と香り……。


食べたい!!

みたらしを想えば
まず、思い浮かぶのはテリテリのタレ

そして、香ばしく焦げたお醤油の匂い
お米のこんがり焦げた匂いとともに記憶の中に深く根付いている、あの香り……

続いて、お団子部分の濃縮されたお米の風味がふわっと蘇り…


そうなるともうたまりません。
もう、頭の中が「食べたい」でいっぱい。

すぐに脳内みたらしマップを紐解いてどこのを食べようかと妄想し始めます。
さあ、きょうはどこのみたらしにしよう…

買おうかどうかはもはや検討しません。すでに決定事項です。
みたらしはわたしの元にもたらされるべきなのです。


そうやって宇宙の絶対的決定のもとに食べたみたらしのうまさと言ったら……。

求めていたものを得て賞味して、満足する、その喜びは強大です。
なにせ、つわり中なのでそれくらいしか食べられないのです。
それくらいしかうまくないんです。そりゃ、もう、半端ないっす。


どら焼きのない世界に飛ばされたドラえもんもかくやと言わんばかりの渇望と達成感。
わたしの妊娠生活の記憶はみたらしの香りの記憶とともに今後も刻まれていくに違いありません。


みたらし、その真の姿は…

まあ、今回の例は特殊としても
「お醤油とお米の焦げた香り」は海外で日本シックに陥った人たちも口を揃えて懐かしんだり欲しがったりする風味のひとつですよね。

ちょっと嗅いだだけでも日本人なら『これは美味しいやつだ!』と、確信できるあの香り、そしてあの色。

日常的に煮物、照り焼き、親子丼、牛丼、天丼、炊き込みご飯、おひたしなどなど、これだけ様々な「醤油+みりん+砂糖+酒」味のものをばくばく食べている時点で、みんなよっぽど好きなんですよ絶対。超大好き。好きすぎて気づいてないレベルでみんな大好き。


だってみんなちょっと嗅いだだけでうまそとか、たべたいとか、腹減ったとかの反応を呼び起こすでしょ?

もうね、それ、強烈な誘引フェロモン。
染みつきまくってるから逃れようのないレベルで書き込まれちゃってるヤツ。

多分、わたしのあれは妊娠で嗅覚が鋭敏になっちゃって、フェロモン効果がめっちゃ上がりまくってガンギマリしちゃってただけなんだよ絶対。みたらしダブルピース状態。マジやばい。合法だと思えないレベルでの多幸感。フェロモンどころか!!みたいなあれ。

だってみたらし、よく考えてみたら1串の中に、お米と、醤油ベースの甘辛タレと、そのそれぞれが焦げた匂いとを全部ぎゅっと詰め込んだ和食の真髄ぶち込み濃縮食品みたいなもんじゃん!やばいジャパニーズテイストの権化じゃん。やだ、やばいの当たり前だった!!!うまさ基本セット全部載せじゃねえか!!今気づいた!!!

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そりゃあ、ハイにもなるし、病みつきにもなるし、習慣性も出るわな…
(出るの!??)


その後。正気に戻った後のこと

ときがたち、お腹の中に詰まっていた我が子も無事に外界へと放出されました

しかし、いまでもふとしたきっかけで
茶色に照り輝くとろとろのタレが、香ばしいおだんご部分が、それらが合わさった素敵な香りが、色がありありと思い浮かびます。


あのときほど狂おしくみたらしを求めるようなことはもうないのかもしれないけれど、その引力の記憶と染み渡るうまさの経験は決して消えることはないのでしょう。


さて、ここまで読んだあなたの中に、お醤油と砂糖の香りは、お米の焦げた香りは、テリテリのタレの色は、再生されましたか?

それはあなたの中にもみたらしが染み付いている確たる証拠。
長い年月に及ぶ食生活によりあなたの身体にみたらし汁が完全に染み渡っているのですから抗う術はありません。

きっといつかわたしのようにみたらし団子を求めてしまう来る日が来るでしょう


もし、みたらし団子としてやって来なくても、みたらしフェロモン反応細胞の暴走は親子丼やカツ丼の姿でやってくるのかもしれませんので侮れません。醤油とコメの誘惑が以上増殖するそのときは、きっと多分もしかしたらやってきます。やってくる気がします。いや、きっとやってくる。あの熱狂が私だけでいいはずがない!


そのときが来たら両手を上げて溢さぬようにしっかりお団子を受け取って、美味しくパクリといただきましょう! 

さすれば、「幸せな香ばしさ」が、「甘さ」が、「香り」が、あなたをきっと、骨の髄まで癒します。

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まあ、食べれば食べるほど記憶は強化されてしまうから、たべるほどに誘引力も強化されてしまうかもしれませんけどね!


きみたち

うん。きみたち多分みてるし知ってるよね
母が時々1人でなんか買って食ってるの

うん、そのくせ治らない自信ある。
母たまに食欲暴走する。うん。

糖尿?うん、なりやすいの知ってるし、妊娠中はなった。
うん…気をつけないといけないの、知ってる…よ?

まあ、それはいいとして
ぽんちゃん、ぽこちゃん。
きみたちは、今までたくさんいろんなものを食べてきたよね
大好きな食べ物もいっぱいあるはずだ
今のぽんちゃんは、にんじんとチーズ、のりたま、えび、みかんがおどるほど好きだし
ぽこちゃんは8ヶ月にして勝手にカップを掴んでコップから直飲みごくごくしてるし
君たちはきっと食いしん坊のままで生きて行くんじゃないかとかーさんは確信しているんだけど
それにしてもだ。
かーさんは君たちにわりと情け容赦なくいろんなものを食べさせているんだよ

ぽんちゃんは1歳2ヶ月くらいでパクチーをもりもり食べていたし(気に入った
2歳2ヶ月くらいでゴルゴンゾーラにハマった。本格ピザも、なんもかんも、極力そのまま食うなら食わせてるし、母の趣味でトルコ料理やらアフリカ料理やらも食わせてきたはずだ。


それはね、なんでかって言うと、世界には美味しいものがめっちゃたくさんあって、一生かかっても食べ切れないほどだし、もちろん全部知る必要もないのだけれどね、「食べ物の裏には人がいて文化がある」からでもあるんだよ。その土地、その風土があるからこそ培われた知恵や工夫、考え方は、笑っちゃうくらい食べ物に反映されてるって、かーさんは考えているんだ。


だからね、ぽんぽこちゃん

小さいうちは、できるだけいろんなものを食べて、出来るだけいろんな味を知って
できるだけ、いろんなところでいろんなものを食べられるような君たちでいてほしいとかーさんは思ってるよ。

「食べれないもの」は少ないほうがいいし
「食べたことないものを気軽にたべる勇気」
は常に持っていてほしいと思うから(勇気なんて出すほどでもない!ってなるのが一番だけど)

いろんな人と会って、いろんなものを食べて、いろいろな場所でたくさん喋って
そして、世界を自由に楽しくわたっていける、そう言う基盤に少しでも慣れればいいなとおもってるよ

まあ、コメ醤油砂糖酒コンボがあんまりにも強力すぎるからコワイヨ薄めたいヨ!っておもってるからでもあるけどね!!!!

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そんなことを言いながらもかーさんは、今晩のおかずに魚の煮付けを出そうとしているのでした…


醤油酒みりん砂糖! 醤油酒みりん砂糖! 醤油酒みりん砂糖! 醤油酒みりん砂糖!!

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