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純粋な彫刻

タイトル:(仮)純粋な彫刻

▼登場人物
●小作玲長太(こさくれ ちょうた):男性。45歳。彫刻家。スランプ中だった。
●宇沙戸芽羽(うさど めう):女性。30歳。目が綺麗な美人。長太のモデル。
●最上佳奈美(もがみ かなみ):女性。25歳。長太の新しいモデル。美人。
●博物館長:男性。57歳。美術館長や骨董商など含め一般的なイメージでお願いします。
●栗津益代(くりつ ますよ):女性。20代。長太の理想と欲望から生まれた生霊。

▼場所設定
●アトリエ:長太がいつも愛用している。まぁまぁ広いイメージで創り上げた彫刻像の置き部屋も隣接している。
●バー『Carved Person』:お洒落なカクテルバー。長太と益代の行きつけ。
●街中:必要ならでホテルなど一般的なイメージでOKです。

NAは小作玲長太でよろしくお願い致します。

イントロ〜

皆さんこんにちは。
皆さんには今、心から愛する恋人がいますか?
それとも独り身を貫き通される覚悟ですか?
最近ではシングルライフも流行っており、
何が何でも結婚!…なんて風にはならないようです。
でもこの世に男女がいる以上、
理想的な恋愛から結婚を希望する人はあとを絶えません。
今回はそんな経過を踏まえ、ある男性にまつわる恋愛エピソード。
少し不思議な事も起こったようです。

メインシナリオ〜

ト書き〈アトリエ〉

長太「う〜む…ダメだ!やっぱりダメだ!こんなんじゃ、俺の造形美には全く程遠い。こんなのを掘りたかったんじゃない!もっと、もっとこう、生き写しのような、理想の女神像を俺は掘り起こしたいんだ!くそう!」

俺の名前は小作玲長太。
都内で自分のアトリエを持っており、俺の仕事は彫刻家。

タピオ・ビルカラやフリーデン・スライヒ、
エドガー・ドガやドナ・テロなどに憧れ続けてきた俺は、
どうしても彼らのような偉大な傑作、ちゃんと歴史に残るような
自分だけの作品を世に知らしめたいと、
日夜、創作漬けの日々を送っていた。

でも、どれもこれも誰かの二番煎じのような作品になり、
俺は自分の描きたかった・掘り起こしたいと思う造形美を、
どの作品にもまだ表現できていない。

彫刻家の道に入ってこれまで云十年間、
もう今年で45歳になるが、まだまだ未熟で修行が足りぬのか。

長太「あ〜クソ!!ダメだダメだ!俺は理想を見失ってるのか!クソウ!!」

俺は今作家として、絶不調のスランプだった。

ト書き〈カクテルバー『Carved Person』〉

長太「しょうがない。ちょっと気晴らしに飲みにでも行くか」

こうやって煮詰まれば、俺は近くのバーへ飲みに行く。
そこは行つけの『Carved Person』というちょっとお洒落なカクテルバー。

長太「はぁ、やっぱり俺にはもう才能がないのかな。昔は溢れるほど創作意欲も湧いてきたのに」

俺は一応プロとしてやっており、様々なクライアントから注文を受けていた。
しかし今こうなってしまってはその仕事も続かない。

本当にそろそろ潮時を考えねばならない時期なのか。
俺は少しやり切れない気持ちになっていた。

その時…

益代「こんにちは♪お1人ですか?もし良ければご一緒しませんか?」

と美人が声をかけてきた。
彼女の名前は栗津益代さんと言った。

都内で経営コンサルタントを本業としていたようで、
そのサイドビジネスではメンタルコーチや、
彫刻分野の仕事にも携わってきたと言う。

長太「へぇ。あなたも彫刻の仕事を?」

益代「フフ、私の場合はまだ素人ですが、最近少しくらいはその道の事も分かってまいりました」

長太「ほう。なかなか向上心溢れる人ですねぇ。いや素晴らしい事だと思いますよ」

そうして喋っている内に気づいたが、
彼女には何やら不思議なオーラのようなものがある。

喋ってるだけで何か安心できる所があり、
「もしかして以前にどこかで会った人?」
のような印象も突きつけてきて、
その点で何か自分の事まで話したくなってくる。

久しぶりにそんな人に会ったせいか、
俺は今抱えてる悩みを殆ど彼女に打ち明けていた。

益代「そうですか。本当に作りたいものがなかなか作れず、少し精神的にまいっていると?」

長太「ええ、まぁ。若い頃はこんな事もなかったんですが、やっぱり歳のせいか、才能も尽きてくるんでしょうかねぇ」

益代はそんな愚痴のような俺の悩みを親身に聞いてくれていた。

益代「いえいえ、そんな悩みは作家をしていれば誰もが1度は持たれるモノのようで、いわゆるスランプの時期を通って皆さん、それなりに成長されるようですよ?」

長太「はぁ…」

益代「分かりました。それでは今のあなたのそのお悩み、少し軽くして差し上げましょうか?」

そう言って彼女は、1人のモデルを俺に紹介してくれた。

益代「宇沙戸芽羽さんという方で、その方はとても美しく、そういったモデルを何度もされてきたような方です。そして不思議な事に、彼女をモデルに絵を描いたり彫刻をされたりした方は、創作意欲をそれ迄に無いほど掻き立てられる傾向があり、大抵の人がそれをきっかけにスランプを脱出し、またその創作分野で成功を収めていける強い人になれるようです」

長太「…は?な、何ですかそれw?そんな人が居るってんですか?」

益代「ええ。小作玲さん、あなた今のスランプを本気で脱出したいのでしょう?でしたら、そんな僅かな可能性に賭けてみるのも、作家としての仕事ではないですか?まぁ強制は致しませんが、その気がおありならご紹介して差し上げますが?」

彼女はやはり不思議な感覚の持ち主だった。
普通ならそんなこと信じないのに、
彼女に言われると何となく信じてしまう。
俺は結局その彼女を紹介して貰う事にした。

ト書き〈3日後〉

それから3日後。
バーでまた益代さんと会っていた。
その時彼女は、約束していたモデルの女性を連れてきてくれていた。

芽羽「初めまして。どうぞよろしくお願いいたします」

長太「あ…よ、よろしく…お願いします…」(一目惚れする感じで)

何と言う目の美しい美人…第一印象がそれだった。
そのとき俺は彼女に一目惚れしていたようだ。

益代「どうです?彼女、美しい人でしょう。絵画や造形というのは、本当に美しいものを見れば心が感化され、その感覚をもって創作意欲にも火をつけてくれるものです。あなたはきっと彼女を通して創作意欲にもう1度火がつけられ、想像していた以上の再起を図る事ができるでしょう」

確かに彼女の言う通り、
「ぜひとも彼女をモデルに仕事させて欲しい!」
と俺は益代さんと芽羽さんにお願いしていた。

ト書き〈仕事上の成功〉

それから数ヶ月後。
俺は仕事で成功した。

本当に不思議だったが、彼女をモデルに掘り続けると、
まるで生気が漲る作品が幾つも仕上がる。

骨董商「いやぁ素晴らしいですねぇ!往年の力が戻ってきたんじゃないですか?」

博物館長「ぜひこの作品をウチで引き取らせて下さい!これ程の造形美、今まで本当に見た事もありません」

美術館長「この美しさこそ、うちの館内に飾るにふさわしい」

本当に凄いものだった。
あっと言う間に俺は売れっ子になってゆく。

長太「ハ…ハハwまさか俺の作品がまた世に認められるとは!」

ト書き〈バー〉

長太「いやぁ〜本当に有難うございます!全部あなたのお陰ですよ!彼女を紹介して頂いたお陰で私、すっかり作家としての自信を取り戻す事が出来ました。これからはもっと価値のある作品を幾つも造っていきたいと思います」

益代「フフ♪そうですか、それは本当によかったです。私も彼女を紹介した甲斐がありました。…でも小作玲さん。このように成功された時こそ初心を忘れず、作家としても人としても真っ当な道を歩む…その心をもう一度しっかり心に留め、足場を固めなきゃならないものです」

長太「え?」

益代「良いですか小作玲さん。あなたに紹介差し上げた彼女・芽羽さんは、ああ見えて結構センシティブな性格の持ち主なんです。ですから何かのきっかけで、これまであなたに尽くしてきた彼女を捨てる事だけはしないであげて下さい」

長太「は?…捨てる?」

益代「ええ。実は少し白状しますけど、芽羽さんはあなたのモデルの仕事を引き受けながら、どうやらあなたの事を1人の男性として好きになってしまったようなんですよ」

長太「ええっ!?」

益代「フフ♪彼女も普通の女性ですからそんな事、自分の口からはなかなか言い出せません。本当に愛した人に告白するなど、女性にとっては勇気が要るものですもの」

長太「…ほ、本当に?」

心底驚いた。
そんな事、本当に一言も彼女の口から聞いていなかったから。

でも俺はこの時、同じく心底から嬉しく思った。
もともと俺は彼女に一目惚れした身。
そんな事を言われて拒否する筈もない。

長太「ハハw本当に何と言って良いか、まるで天にでも昇るような気持ちですよ。益代さん、僕が彼女を捨てるような事は絶対にありません。いや、寧ろ僕の方から彼女にそう告白して、一生共に居て欲しい、結婚したいって思ってるぐらいです!」

益代「本当ですか?」

長太「ええ勿論です!こんな事、冗談や嘘では言えませんよ」

俺は本音を言った。

益代「それは本当に良かったです。彼女、凄く喜びますよ♪それでは改めて約束して下さいますね?どんな事があっても絶対彼女を捨てたりしないと?」

長太「くどいですよ益代さんw僕に限ってそんな事は絶対にありませんからどうかご安心下さい。それと益代さん、改めて有難うございます。彼女をこんな形でも紹介して頂き、僕は本当に幸せです」

と言う事になり、俺はその日から芽羽と本当に
結婚を前提にして交際する事になったのだ。

ト書き〈トラブル〉

しかしそれからまた数ヶ月が過ぎた時。
俺の身にトラブルが起きたのだ。

長太「え?ど、どういう事ですかそれ!もう僕の作品を受け付けてくれないなんて!」

博物館長「いやぁ、そう毎回同じような作品を造られてもねぇ。もっといろんな作品を造って頂けると思ってあなたにお仕事をご依頼していたのですが、あなた、あの芽羽さんですか?彼女をモデルにした作品しか作られていないじゃないですか。それでは鑑賞する方としてもやっぱり飽きてしまうんですよ」

長太「そ、そんな!あの時はあれほど絶賛して頂けたのに…」

博物館長「いやですからね、ウチでもお客様あっての商売ですから、方針が変わる事も普通にあるんですよ。あなただってその辺の事はご存知でしょう?これは私どもの所だけじゃなく、他のクライアント様の所でもやっぱり同じ事なんですよ?」

本当に愕然とした。
その時初めて気づいたが、
俺はどうも盲目的になってしまっていたのだろうか。

その日から俺は少し芽羽をモデルに仕事をするのをやめ、
別のモデルをどんどん使い、それをメインに仕事をしていった。

佳奈美「どうぞよろしくお願いいたします」

長太「あ、ああ、こちらこそよろしく…!」

そんなある日、俺の元に
最上佳奈美という人がモデルとしてやってきた。
彼女もかなり美しかった。

それに彼女は芽羽とは違い、かなりオープンな性格で、
モデルに就いたその日から、俺に様々な形でアプローチしてきた。

(ホテル)

そして俺達は…

佳奈美「ほんと?本当に私と結婚してくれる?」

長太「ああ、もちろんさ♪君がずっとそばに居てくれたら俺、君をモデルにして、もっと凄い作品を造り上げてみせるよ♪」

佳奈美「本当!?嬉しい!」

と言う関係にまでなってしまった。

ト書き〈長太のアトリエ、オチ〉

それから数日後。
また俺はいつものように自分のアトリエに篭り、仕事に精を出していた。

すると急に背後から…

益代「長太さん」

長太「うおわ!?なっ…ま、益代さん?!」

思いっきりびっくりしてしまった。
それまで全く人の気配もなく、アトリエのドアも開いてないのに、
益代がいきなり俺の背後に立っている。

長太「あ、あんた、ど、どうやってここへ…!?」

益代「長太さんあなた、私との約束を破りましたね」

長太「え…?」

益代「あなたには今から、その事の責任を取って貰わなきゃなりません。本当に残念です。…ねぇ、芽羽さん…?」

彼女がそう言うと、俺がこれまで造り上げた
何体もの彫刻を保管していたアトリエ横の部屋から、
芽羽が静かに現れた。

長太「な…なんで君がここに?」

芽羽にはまだ佳奈美との浮気の事を言っておらず、
あれから普通にこのひとつ屋根の下で同棲していた。

そして芽羽は今、買い物に出かけていた筈。
朝から出かけて今この家に居る筈もなかったのに。
この時俺は初めて恐怖した。

そしてその恐怖はそれだけで終わらない。
もっと悲惨な末路が俺を待っていたのだ。

芽羽「私、あなたの事を許さない。あなたはずっと私をモデルに仕事をしてきた。今度は私があなたを彫刻するわ…」

そう言った瞬間、芽羽の美しい瞳が恐ろしく光った。

長太「う…!うわ、うわあぁあぁあ!!」

その直後、俺の足元から頭にかけて、一瞬で石化したようだ。

ト書き〈石像になった長太を見ながら〉

益代「ふぅ。結局こうなったか。私は長太の純粋な夢と欲望から生まれた生霊。その夢の方だけを叶えてあげたかったけど、結局ムリだったわね」

益代「長太は作家を気取っていたがその実、人としてはかなり我儘だった。口先だけで人の心を弄び、結局自分の事しか考えていない。作家は生来ワガママ、なんて言葉も聞いた事あるけど、その我儘が度を越すと想像以上の不幸がやってくる」

益代「実はね、私が紹介した彼女…この芽羽の正体は、あの伝説上の呪われた美女。女神アテナより美しいとされたその人だったの。その彼女に嫉妬の目で睨まれてしまえば、こうなるのも仕方がないわね」

(ここで芽羽はフッとその姿を消す)

益代「それにしても長太、本当に見事な石像になったわねぇ。まるで生き写し。こっちの方が長太が造り上げてきた彫刻より、高く売れるかもしれないわ。まぁそりゃそうか。生き人(びと)だった長太をそのまま彫刻作品にしちゃったんだから」

動画はこちら(^^♪
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