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昔の恋人

タイトル:(仮)昔の恋人

▼登場人物
●加古野 好夫(かこの よしお):男性。27歳。真面目。絵美の事をずっと引きずっている。
●上司:男性。50代。好夫の会社の上司。一般的な上司のイメージでOKです。
●鶴崎絵美(つるさき えみ):女性。好夫の学生時分の彼女。既に他界していた。
●春菜(はるな)ユメミ:女性。20代。好夫の理想と夢から生まれた生霊。

▼場所設定
●某商社:好夫が働いている。都内にある一般的な商社のイメージでお願いします。
●カクテルバー:好夫の行きつけの飲み屋街に新装開店する様に建っていた。お洒落なイメージ。
●好夫の自宅:都内にある一般的なアパートのイメージでOKです。

▼アイテム
●Dream Lover:ユメミが好夫に勧める特製のカクテル。思い出の人と出会える効果を秘めたお酒。
●Dream Husband:ユメミが好夫に勧める特製のカクテル。その思い出の人の夫となって夢の中だけで生活していく力を与えるお酒。効果は永遠で2度と夢から覚めない。

NAは加古野 好夫でよろしくお願い致します。

イントロ〜

皆さんは、昔の恋人を思い出したりしますか?
思い出によって美化されて、
その人はとても理想的な人…になって居たりしないでしょうか。
あるいはもう2度と会いたくない人も居るでしょうけど、
思い出と言うのはそれら全てを上手く包み込み、
文字通りに思い出のアルバムの1ページにしてしまうもの。
今回は、そんな昔の恋人に出会ってしまった
ある男性にまつわる不思議なお話。

メインシナリオ〜

ト書き〈会社〉

上司「加古野君、加古野君」

好夫「あ、はい!何です課長?」

上司「今度の企画も君に任せて良いか?この前の仕事の成績は抜群だったね。その調子で今度もお願いしたいんだが?」

好夫「え?ホントですか??有難うございます!分かりました、今度も精一杯やらせて頂きます!」

俺の名前は加古野 好夫。
ここ某商社で働き始めてからもう数年が過ぎている。

俺は元々コツコツタイプの真面目人間で、
その成果が最近になって漸く認められ始めたのか、
いろんな仕事を任されるようになり、
明るい将来もこれで約束された?
みたいな感じになっていた。

好夫「ようし!今度もやるぞ〜」

仕事が好きで没頭していたのだが、
でも1つだけ俺には人に言えない悩みがあった。

それは結婚。
やっぱり元々奥手な性格が影響していたのか、
なかなかコレと言う人に巡り会う事ができず、
未だに独身のまま、恋愛や結婚などそんな兆しもなかった。

ト書き〈会社帰り〉

「お疲れ様で〜す」

そしてある日の仕事帰り。
俺は久しぶりに飲みに行く事にした。

仕事は充実していたのだが、プライベートがどうも寂しい。
その寂しさを晴らす為に飲みに行く。

そしていつもの飲み屋街を歩いていると…

好夫「あれ?こんなお店あったんだ」

そのとき初めて見たお店。
お洒落なカクテルバーで、中は落ち着いていた。
そこに入ってカウンターにつき1人飲んでいると…

ユメミ「こんばんは、お1人ですか?もしよければご一緒しません?」

と1人の女性が声をかけてきた。

彼女の名前は、春菜ユメミさん。
都内で恋愛ヒーラーのような仕事をしていたらしく、
こんなお店でもちょっと悩みを抱えてそうな人に声をかけ、
キャッチセールスのような事をしていたらしい。

好夫「あはは、ヒーラーの方って本当に居るんですね?なんかブログとかでよく見たりしますけど」

ユメミ「フフ♪ええ、最近ではそれを本業にされている方も結構多いようです。まぁ私もその1人で、少しでも悩める心を安らかにできれば…なんて、このような場所でもお客様を探している次第です」

それから暫く談笑していた。
でもそうして話している内に少し不思議な気もしてきた。

なんだか彼女と居ると、
「昔から自分の事をよく知ってくれていた人」
のような気がしてきて、心が和み、
自分の悩みやなんかを全部彼女に打ち明けたくなる。

それにまた不思議と彼女に対しては恋愛感情が湧かず、
その代わりにただ彼女を心の拠り所にしたい…
そんな思いにさせられるのだ。

そして世間話から、段々悩み相談のようなものになっていく。
そして俺は本当に、
今自分が抱えている悩みを全て彼女に打ち明けていた。

ユメミ「なるほど。お仕事のほうはとても充実しているけれど、プライベートがどうも寂しくて、一緒に人生を歩いていけるパートナーを探しておられる…と言う事ですね?」

好夫「え、ええまぁ。初対面のあなたにいきなりこんな事を話すなんて、ちょっと恥ずかしいですけど」

ユメミさんは真剣に俺の悩みを聴いてくれ、
それから丁寧にアドバイスなんかもくれたりしながら、
こう言った。

ユメミ「分かりました。それでは私が少しご協力して差し上げましょうか?」

そしてカクテルを一杯オーダーしそれを俺に勧めた。

好夫「え?こんなの頂いて良いんですか?」

ユメミ「ええ、私の奢りです。ですがそれはただのカクテルじゃありません。『Dream Lover』と言う特製のカクテルでして、それを飲めばきっとあなたの夢は叶えられるでしょう」

好夫「…は?」

ユメミ「好夫さん。あなた、昔に好きな人がおられませんでしたか?」

好夫「え?」

ユメミ「フフ♪お顔を見てますとそんな気がして。おそらくその彼女、とても素敵な人だったんでしょう。きっとその人の事が忘れられず、その後、いろんな女性に出会われてもその彼女がどうしても心から出て行かないで、新しい出会いに自ら躊躇している。…そうではないですか?」

正直、驚いた。
確かにその通り。

俺には中学から高校時代に付き合ってきた
鶴崎絵美と言う彼女が居たのだ。

絵美はとても優しくて朗らかで、それに何より
俺にとってはこの上なく可愛らしく綺麗で、
将来もし出来れば彼女と結婚したい…
そうずっと思い続け、彼女もその気で居てくれた。

でも彼女は父親の仕事の都合で遠くへ引っ越してしまい、
当時学生だった俺達はなかなか思うように会う事ができず、
そのうち連絡も途絶えがちになり、
結局、別れ別れになっていたのだ。

それ以来、彼女がどこでどうしていたのか
俺には全く分からなかった。

だからユメミがこのとき言った事に俺は心底驚き、
「なぜそんな事を君が知ってるんだ…?」
と言う気持ちがまず湧いた。

でもユメミはそれについてははぐらかすばかりで、
「何となくそう思ったからそう言っただけ」
としか答えなかった。

でも俺は自分の事が何となく見透かされているような気にもなり、
ちょっと不思議な気もして、ユメミの事を無意識にも
心の中で信頼し始めていた。

そして俺は今ユメミが勧めてくれた
その『Dream Lover』と言うカクテルを手に取り
一気にその場で飲み干した。

ト書き〈数週間後〉

それから数週間後。
俺の人生に、本当に驚くべき転機がやってきたのだ。

好夫「え…えぇ!?キ、キミまさか、つ、鶴崎!?え、絵美!?絵美なのか!?」

提携先の会社で知り合ったある女性社員だが
彼女が余りにも想い出の人に似ていた為、
俺はつい彼女の元へ駆け寄り、少し挨拶してみた。

すると彼女は俺の思っていた通り、
なんとあの時に別れた俺の彼女、鶴崎絵美本人だった。

絵美「ウソ…よ、好夫?本当に好夫ちゃんなの!?」

学生時分と同じ呼び方で俺の事を呼んでくれた。
間違いない。

彼女は実は、あれからまた家の都合でいちど海外へ引っ越し、
それからまた日本へ戻ってきて生活を始めたが
身内や家族にいろいろ不幸があったようで、
それですっかり心が閉ざされてしまい、
いっときは自らこの世を去ろうとした事もあったと言う。

それでもなんとか人生に希望を見出し、
心に元気を取り戻し生活にメリハリをつけ、
今こうして都内に戻ってOL生活をしていた。

そして今でもやはり独身で居るらしい。
彼女もあれから恋愛する気にはなれなかったようで、
まるで俺と同じような人生を送ってきたと言う。

もう俺は心の底から喜んでいた。

彼女と再会できた事。
彼女がまたこうして無事に俺の前に現れてくれた事。
今までの自分の事を包み隠さず俺に話してくれた事。

いろんな喜びがあったが、
とにかくまた再会できた事が本当に嬉しく、
俺の恋心はまた回り始めた。

ト書き〈交際スタート〉

そして俺達は改めて付き合ったのだ。
実に10年越しの恋である。

好夫「絵美、また君とこうして付き合う事が出来てオレ本当に嬉しいよ。精一杯働いてお前を絶対幸せにしてやるからな」

絵美「ウフ♪嬉しいわ。私も好夫ちゃんと又会えて、本当に幸せよ。あれからひと目でも会えたらってずっと思ってたのよ」

絵美はあれからやはり成長したのか。
なんだかとても落ち着いていた。

でも中身は変わってない。
俺の事を本当に心の底から愛してくれて居て、
再会できた事を本当に喜んでくれて居た。

「ひと目でも会えた事が本当に嬉しかった」
この言葉を何度も言いながら。

好夫「ハハ、『ひと目』って、これからずっと一緒に居るんじゃないか。ひと目どころか、これから生涯をずっと一緒に歩くパートナーになるんだぜ?」

絵美「…うん♪」

絵美は俺の肩に顔をうずめ、暫く泣いていた。
やっぱりこうして会えた事が本当に嬉しかったんだろうか。

ト書き〈数日後〉

それから数日後。
俺は又1人であのバーへ来ていた。
するとまたユメミさんがいつもの席で飲んでいた。

俺はユメミさんの元へ行き、また暫く談笑。
あれから俺の身に訪れてくれたこの嬉しい事を
彼女に伝えて、一緒に喜んで貰おうとした。

ユメミさんも少し驚いたように喜んでくれ、
これから俺たち2人の将来を祝福してくれた。

でも同時に1つ、それとは全く真逆の事、
信じられないような事を俺に言ってきたのだ。

好夫「え?それ本当なんですか?」

ユメミ「ええ本当ですよ」

なんとユメミがやってるヒーラー教室に、
もう随分前から絵美が通っていたと言う。

何たる偶然だろうか。

そして又バーで偶然出会った俺からいろんな事を聞き、
「もしかして」…と言う思いから昔の彼女の話題なんかを引き出し、
あのとき俺にああ言ってきたと言う。

好夫「そ、そうだったんですか」

ユメミ「世間は狭いものですね」

そしてこのあとユメミは、
今の俺が絶対受け付けられないような事を言ってきた。

好夫「わ、別れろってどう言う事ですかソレ!?」

ユメミ「いえ、別れろとは言ってません。ただ彼女と本気で付き合う場合、今のあなたではおそらく付き合い尽(き)れない…正確に言えば、余りにも立場が違い過ぎるから、たとえ一緒になっても幸せになる事は出来ない…と言う事なんです」

好夫「な、なんですって…」

「立場や境遇の違い」
と言うのを彼女はやたらと念押ししてきた。

好夫「何ですか!?その立場の違いとか境遇の違いとか言うのは!」

ユメミ「良いですか好夫さん。あなたも彼女のこれまでの事を聞かされたんなら、何となく、彼女が今心に負っている悩みのようなものにも気づいたでしょう?」

ユメミ「その悩みはあなたが今思っている以上に大きなもので、ちょっとやそっとの覚悟じゃなかなか超えられない壁…そんな壁があなたと絵美さんの間にはあるのです」

とても静かに言ってきたが、
余りに一方的に言われてるような気もして、
しかもせっかく再会してこれから一緒にやっていこう
としていたその絵美と別れろなんて、
何がどうでも納得する訳にいかない。

俺は煮えくり返るような怒りを覚え、
その時の思いの丈を全部ユメミにぶつけた。

それから少しして
彼女も漸く自分の言った事を反省したのか。

ユメミ「すみません。あなたを怒らせるつもりは無かったんです。分かりました。あなたはそれほど本気で、心の底から彼女の事を愛してらっしゃる。私もさっきは少し言い過ぎたかもしれません」

そう言いながら指をパチンと鳴らし
またカクテルを一杯オーダーして…

ユメミ「それは私からのお詫びの印です。それは『Dream Husband』と言ってまた特製のカクテルでして、それを飲めば昔の恋人と再会できたのと同じように、その彼女と新しい生活の土台を得る事が出来るでしょう。どうぞお飲み下さい…」

もうすぐに席を立ち帰ろうとしていたのだが、
そこでもやっぱり彼女は不思議な人だ。

彼女が面と向かって冷静にそう言うと
なぜだか心の波が静まってきて、
彼女の言う事に心と耳を傾けるようになる。
そしてやはり言われた事を信じてしまう。

俺は今勧められたそのカクテルを手に取り、
またそこで一気に飲み干していた。

ト書き〈好夫の部屋でベッドに眠り続ける好夫を見ながら〉

ユメミ「フフ、今頃夢の中で好夫と絵美は新婚生活でもしているかしら?実は絵美はもうこの世の人ではなく、ずっと前に事故で他界していた。その彼女の霊を私が引き寄せて、もう1度だけ好夫に会わせてあげた」

ユメミ「好夫はその事を、心のどこかで感じ取っていたかもしれないわねぇ。その上で彼女と一緒になる事を望み、今まで現実で積み上げてきたステータスを全て捨て、彼女の為に自分を捧げる事まで覚悟していた」

ユメミ「私は好夫の『過去に出会った本当に愛した彼女にどうしても会いたい』と言う理想と夢から生まれた生霊。その夢を叶える為だけに現れた。本当はあの機会をバネにして、現実の生活で幸せを掴み取って欲しかったけどやっぱり無理だったわね」

ユメミ「『Dream Lover』は思い出の人と出会える効果を秘めたお酒。そして『Dream Husband』はその名の通り、その思い出の人の夫となって、夢の中だけで生活していく力を与えるお酒。その効果は永遠で、好夫はもう2度と夢から覚める事もない。だから私がずっと世話をして、あなたを守ってあげるわ」

ユメミ「…笑ってるわねぇ好夫。このぶんだと、彼にとってはこちらの人生のほうが幸せだったのかしら?もう誰も邪魔する人は居ないわ。夢の中で、お幸せにね…」

動画はこちら(^^♪
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