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リアルフィクション

タイトル:(仮)リアルフィクション

▼登場人物
●湯芽煮 澄人(ゆめに すみと):男性。40歳。真面目。妻帯者。2人の女性に裏切られる。
●湯芽煮ケイコ:女性。39歳。澄人の先妻。浮気性。
●加藤靖子(かとう やすこ):女性。32歳。澄人の会社の後輩。澄人の後妻だがその後浮気する。
●夢咲杏奈(ゆめさき あんな):女性。30代。澄人の理想と夢から生まれた生霊。

▼場所設定
●会社:澄人達が働いている。都内にある一般的な商社のイメージで。
●Imaginary Fort:都内にあるお洒落なカクテルバー。杏奈の行きつけ。本編では「カクテルバー」等とも記載。
●街中:必要ならで一般的なイメージでお願いします。

▼アイテム
●Bridge to the Void:杏奈が澄人に勧める特製のカクテル。これを飲むとその人は心が前向きになり元気になれる。ただし有効期限付き(その後のトラブルは自力で解決)。
●One way Ticket to Fiction:杏奈が澄人に勧める特製のカクテル。これを飲むとその人は夢の中で生活する事になりずっと幸せで居られる。

NAは湯芽煮 澄人でよろしくお願い致します。

イントロ〜

皆さんこんにちは。
皆さんは今、仕事に疲れてませんか?
プライベートは充実してますか?
一生懸命やってきたのに報われない…
そんな経験はありませんでしたか?
今回はそんな事に悩み続ける
ある男性にまつわる不思議なお話。

メインシナリオ〜

ト書き〈自宅〉

澄人「おいお前!俺に隠れてこそこそ浮気してるだろ!?」

ケイコ「はあ?何言ってんのよあんた!私がそんな事する筈ないじゃないの!」

澄人「嘘つくなよ!じゃあこれは一体何なんだ!?」

ケイコ「あ!ひどい!私の携帯、勝手に見たのね!?信じらんないわ!あんたの常識って一体どうなってんのよ!」

澄人「信じられないのはお前だ!お前の常識のほうこそ一体どうなってんだ!これから子供ができたら生活も大変になる…って言ってたところなのに、そのすぐあとに浮気かよ!一体何考えてんだお前は!」

俺の名前は湯芽煮 澄人。
今年40歳になる妻帯者。

とは言え、妻帯者と言ってられたのも
それから数日間だけの事だった。

(離婚)

ケイコ「はいあなた、これに名前書いて」

澄人「お、お前、これって…」

ケイコ「離婚よ離婚!もうアンタなんかと一緒にやってられないわ!私これからは1人で生きていきますから、アンタもそのつもりで今後の人生を歩んでちょうだい!じゃあね!」

澄人「あ!お、おい!?」

そう言って妻のケイコはある日、
突然俺に離婚届を突き出し出て行った。
あっと言う間の出来事だった。
これまでそれなりにも
ずっと仲睦まじくやってきた夫婦だったのに、
崩れる時は一瞬だ。

ケイコは俺に隠れて浮気していた。
これは本当の事。あいつ自身も認めた事だ。
それなのにあいつは俺の事だけを一方的に責め、
とにかく自分の非を認めず出て行った。

これまで一体、俺は何の為に働いてきたのか。
何の為に人生を生き、誰の為に生活したのか。
それらの事が一切わからなくなるほど、
俺の心は窮地に陥っていた。ひどい落胆だった。

ト書き〈カクテルバー〉

俺は結婚してからこれまで、ずっと懸命に働いてきた。
それも愛する人の為、自分の為、そして将来生まれてくる子供の為。
本当に身を粉(こ)して働き、自分の半分を犠牲にしてきたつもりだ。

その結果がこのザマだ。
一体、女と言うのは…。

俺は会社帰り、いつもの飲み屋街へ立ち寄った。
そのとき見た事もないカクテルバーがあるのに気づいた。
店の名前は『Imaginary Fort』。
「新装開店でもしたのかな?」
と思いつつ、俺はとりあえず入ってみた。

店内には幾何学模様の壁紙がいろいろ貼ってあり、
なんだか不思議な空間だった。
でも妙に落ち着いたので、俺はカウンターにつき
いつものように1人で愚痴を呟きながら飲んでいた。

するとその時…

杏奈「こんばんは♪もしお1人ならご一緒しても良いですか?」

といきなり1人の女性が声をかけてきたのだ。
彼女の名前は夢咲杏奈。

都内で恋愛ヒーラーのような仕事をしていたようで、
こういう店でも悩みを抱えてそうな人に声をかけ、
自分なりの仕事をしていたと言う。

彼女もなんだか不思議な人で、
そんな形で声をかけてくる女性なんて余り居ない。

でももっと不思議だったのは、彼女が、
「昔から自分と一緒に居てくれた人?」
のような気がしてきて、一緒に居るだけで心が休まり、
なぜだか自分の事を無性(むしょう)に彼女に話したくなる。
そんな衝動に駆られ、気付くと俺は今の悩みを全て彼女に打ち明けていた。

杏奈「そうなんですか。奥様が…」

澄人「ハハ、もう奥様じゃありませんよ。あいつはもう昔の妻で、僕の前にはもう居ないんですから…」

妻が浮気して出て行った事。そのすぐ後に離婚した事。
自分の夢も愛も将来も裏切られた事。
いちど裏切られたらそれはもう取り返しのつかない夢になる事。

そんな事をいろいろ話し、
俺はとにかく心の有りっ丈を彼女にぶつけていた。
でも彼女は親身になって聴いてくれ、そして…

杏奈「分かりました。こうしてここでお会いできたのも何かのご縁です。私に少し、あなたのお力にならせて頂けますか?」

澄人「え?」

そう言って彼女は指をパチンと鳴らして、
そこのマスターにカクテルを一杯オーダーし、
それを俺に勧めてきた。

杏奈「どうぞお飲み下さい。私の奢りです。それは『Bridge to the Void』と言う特製のカクテルでして、飲めば今のあなたの心をきっと癒してくれる事でしょう。それに新しい覇気を心の中に湧かせてくれて、あなたは第2人の人生を快く歩んでいく事が出来ると思いますよ」

澄人「…は?」

杏奈「フフ♪まぁ騙されたと思ってお飲み下さい。私の言ってる事が分かるでしょうから」

やはり彼女は不思議な人だった。
全く信じられない事でも彼女に言われると信じてしまう。
俺は勧められるままそのカクテルを一気に飲み干していた。

すると彼女はこう言った。

杏奈「きっとあなたの前に又、新しい女性が現れるでしょう。今私が勧めたそのカクテルは心の栄養剤。そのお相手との恋愛に必要な元気を与えてくれて、あなたのこれからの生活を助けてくれます」

澄人「え?ちょっと何言って…」(遮るように杏奈が話す)

杏奈「フフ、澄人さん。もし本当に幸せを掴みたいなら、自分と、これからやってくる自分の未来を信じる事です。信じる心は時に何より強く、新しい夢を引き寄せるのも、その信じる力によって成り立つもの。どうぞ私の言う事、そして自分を信じてみて下さい」

澄人「は、はぁ…」(素直に頷く姿勢で)

ト書き〈変わる〉

それから数週間後。
俺は杏奈が言った通り、本当に生活も自分も変わっていた。
なんだか心の中から活力が湧いてきて、
落ち込んでいた気持ちは消え失せ、仕事に精を出し、
自分の将来へ向けて心おきなく前進していたのだ。

そして更に杏奈が言った通り…

靖子「わ、私、湯芽煮さんの事、ずっと好きだったんです!もしよかったらあの、私と付き合って頂けませんか…?」

それまで会社の同僚としてずっと一緒に働いてきた
加藤靖子さんと言う女性から、俺はある日告白された。

ちょうど心が寂しく、誰かに慰めて貰いたい…
そんな気持ちになっていたのもあり…

澄人「あ、ああ、僕でよかったら…」

靖子「ほ、本当ですか!?」

と2つ返事で俺はOKし、それから彼女と付き合う事になったのだ。

彼女は本当に出来た人で、俺には勿体ない位の人。
前の妻のように浮気なんか1つもせず、貞淑で上品で、
俺は彼女とならずっと一緒にやっていける…!
そう思わされたのも本当だった。

ト書き〈カクテルバー〉

それから暫くした後。
俺はまた会社帰り、1人であのカクテルバーへ飲みに行った。

すると前と同じ席で杏奈さんが静かに飲んでいた。
俺は彼女を見つけるなりすぐに駆け寄って、
あの時のお礼…そして今のこの感謝の気持ちを伝えた。

澄人「杏奈さん!本当に有難うございました!僕、あなたのお陰で生活も将来もすっかり変わったんです!いいえ、まず自分が変わる事が出来たんです。これも全部あなたのお陰ですよ!本当に有難うございます!」

杏奈「そうでしたか♪それは良かったです。でもそれはあなたの努力が実を結んだだけの事です。私が特別何かしたわけじゃなく、あなたがこれまでその生活に積み上げてきたもの…それが結実した姿に過ぎません。どうぞこれからも自信を持って、自らの手でその新しい彼女さんとの将来を育み、ぜひ幸せな人生を送っていって下さい」

澄人「あ…杏奈さん…」(感動するように)

彼女は自分の事のように喜んでくれた上、
俺と靖子の事を心から祝福してくれた。
俺はもう杏奈の事を愛する程に感謝した。

でもそのとき杏奈は1つだけ、少し気になる事を言ったのだ。

澄人「え?そ、それってどう言う事です?」

杏奈「フフ、この前あなたにお勧めしたあのカクテルは一杯限り。もう今後お勧めは出来ないと言う事で、これからの幸せはあなた自身で心と生活を強くして、どんなトラブルも乗り越えた上で掴み取っていってほしいと言う事です」

澄人「あ、はぁ…」(聴き入る)

杏奈「あなたもご存じのように人生にはいろんな事があり、特に恋愛や結婚においては、なかなか理想通りに行かない事が多いものです。あなたがご経験された通りの事が、もしかすると今後も起きるかもしれません。その時でも彼女の事を信じ、そして自分を信じて、そのハードルを乗り越えて行ってほしい…私はそう思っています」

確かにその通り。
俺はその事を既に経験済みで、
とりあえずそれなりに乗り越えてくる事は出来た。

でもその時1つ大きな不安だったのは、
そのハードルを乗り越えられたきっかけは、
やはり今目の前に居る杏奈がくれた
あの一杯のカクテルのお陰。

アレがもし無かったなら、俺は今頃どうしていたのか?
それを思うと、少し今後に対する自信が無くなった気がした。

ト書き〈トラブル〉

それから数ヶ月…数年が経ち、俺と靖子は結婚した。
周りの皆からも祝福されて、それは幸せな結婚だった。

でも、結婚すれば女は変わるなんて事もよく言うが、
それは靖子も例外じゃなかった。

2人でずっと一緒に居るのが当たり前になった頃、
靖子の行動は少しずつ変わっていったのだ。

そして又、同じ事が俺に起きてしまった。
結婚して3年目。靖子は浮気した。

彼女は俺よりも5つ以上若かったせいか、
俺との生活にそれなりの退屈を覚え、
更なる刺激を求めた挙句、若い男に走ったのだ。

その事で靖子を責めると…

靖子「じゃあはっきり言うわよ!そうよ、あんたとの生活がほんとに退屈になっちゃって、私どうしても新しい刺激が欲しくなっちゃったのよ!何よ!私がこうなったのは全部あんたのせいなんじゃないの!?」

つまり、愛の営みに退屈を覚えた彼女は、
それを全部俺のせいだとし、自分は仕方なく浮気した…
外で発散し、家の中にストレスを持ち込まないようにしただけ…
そんな形に言って自分を正当化していた。

澄人「…で、出て行け…出て行けえ!お前の顔なんてもう2度と見たくねぇよ!いやお前だけじゃない…!世の中の女全部を恨んで、俺はもう今後絶対に…」

靖子「…フン!ならそうしてあげるわよ!あ〜あ!あんたなんかと一緒になるんじゃなかったわ!時間損しちゃったみたい!じゃあね!」

そんな感じで靖子と大喧嘩して、彼女は結局出て行き
その後、戻る事はなかった。

ト書き〈オチ〉

それから数日後。
俺は疲れた心と体を引きずって
またあのバーへやってきていた。

すると又いつもの席で杏奈が飲んでいた。
やはりこんな時でも彼女は不思議な人。
女に対する嫌悪が膨大にあったのに、
杏奈に対してだけはその気持ちが一切湧かない。

そして俺はそれまでの事を全て彼女に伝えた。

杏奈「そうでしたか。…でもどうか気を落とさないで」

澄人「ハハ…いやもう無理ですよ。もう女という女がとことん嫌になっちゃって、将来に結婚の希望を持つ事はもうありません。ハハ、一体これまで何の為に一生懸命やってきたのか…」

そんなドン底に居た俺に、杏奈はそれまでの姿勢を少し変え、
冷静に向き合ってこう言った。

杏奈「分かりました。それでは最後にあなたをもう1度だけお救いしましょう。私の言う事をどうかその心の中に受け入れて下さいね」

そう言って彼女はまた前と同じようにして
指をパチンと鳴らし、
一杯のカクテルをオーダーしてそれを俺に勧めた。

杏奈「それは『One way Ticket to Fiction』と言うカクテルです。これも私の特製で、そのカクテルは今のあなたを必ず救ってくれるでしょう。どうぞお飲み下さい。今度はそのカクテルに有効期限など無く、効果は永遠です。さぁどうぞ…」

これまで確かに彼女にいちど救われた経験があったので
俺は彼女を疑わず、そのカクテルも勧められるままにして飲んでいた。

ト書き〈自宅でベッドで寝ている澄人を眺めながら〉

杏奈「フフ、これであなたも夢の住人になったのよ。あなたの夢だから、あなたの思い通りに全て事が運ぶ。その世界を邪魔する人はもう居ないわ」

杏奈「私は澄人の理想と夢から生まれた生霊。その願いを叶える為だけに現れた。本当は現実の世界で夢を掴んで欲しかったけど、彼はもうこの世に絶望し、その夢を追い駆けるのを諦めていた。だからこそ本当の夢の力を借りて、現実で追い駆けてきたその夢を叶えて貰う。そう思ってみれば、これはとても合理的な事。彼も夢の中できっと納得してるでしょうね」

杏奈「あなたはこれまで一生懸命働き、その貯蓄は今後しばらくの生活を潤す程ある。だからこうして眠ったままでも、その貯蓄をした分、暫く生活に困る事もないわ。私がこうしてちゃんとお世話してあげるから」

杏奈「夢の中で生活し、やがては良い人を見つけ、恋愛し、結婚もして、今度は本当に幸せな夢の生活を掴んでね。フフ♪今笑ったわね。どんな幸せな夢を見てるのかしら…」

動画はこちら(^^♪
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