地獄のフリーアドレスオフィス
私は自営業者だが、あるクライアントさんのお仕事で、週三日オフィスに出勤している。
昨年、いや、一昨年前に、私がお世話になっている部署は新築ピッカピカの建屋に入った。
黒基調の壁に、イマドキのお洒落な雰囲気の食堂に、通称「人をダメにするソファ」で寛ぎながら会議ができるスペースなど、みなが羨むようなオフィス空間で、私もしばらくはご機嫌に過ごしていた。
さらに部署内はフリーアドレス、間仕切りナシのオープンなタイプのオフィスで、毎日違う席に座り、隣りの席の人も変わる状態。 逃げ場はどこにもない。
キレイなオフィスは快適なように思っていたけど、どういう訳か、ちっとも生産性が上がらない。以前と比較すると集中力があからさまに低下し、パフォーマンスは悪化。とにかく物を考える仕事がぜんぜんできなくなった。
あまりに酷いから、
「なんかのビョーキかコレは???それとも老化か?」
とまで思ってたけど、デジタルノイズキャンセル耳栓をしてみたり、YouTubeでホワイトノイズを聞きながら仕事したり、カフェテリアの窓際ぼっち席で仕事してみた結果、外界からの遮断対策でパフォーマンスがやや回復することが判明したことから、生産性の低下はどうやら環境要因が大きい事が徐々にクリアになった。
決定的な出来事は、今週から、なんと新社屋ではなく昭和感あふるる古い建屋に部署ごとお引っ越しがあったこと。それがきっかけで、ついに「イヤイヤ」の正体が、言語化された理由になって意識の表面まで浮かんで来た。
まず古い方のオフィス空間に入って気づいたのは、圧倒的に「静か」ということ。着席後にノイズキャンセル耳栓つけて、「あれ?そんなに変わらんやん」と思ったので、実際に空間に溢れている音の量が少ないんだろう。
次は「狭い」ということ。黒基調の洒落乙でだだっ広いフロアから、白い防空壕へようこそという感じ。妙に落ち着く。閉じた空間がサイコーに心地いい。
立地の都合上、昼も外に出やすい。みんなと過ごすのがキライな訳ではないが、自分だけの妄想タイムが昼間に一回挟めるのは良い。
つまり、私の場合、想像力や創造力は、必ずしも人とのコンスタントな関わり合いや会話の中からは生まれない。外界と自分の脳の交信、というか対話、もしくはそんな個人的な刺激の吸収の後に、完全に外と遮断された自分100%の世界に篭れるかどうかにかかっている。
おそらくは、私と同タイプの「自分の空間でじっくり物を考えたい」人は結構いるんじゃないだろうか。オフィスがオシャレな雰囲気かどうかなんてハッキリ言ってどうでもいいから、ただただ「一人にさせて」ほしい。
例えばAir bnbのオフィスとか、凄いなと思うけど、もしも「他人からの隔離」をできる場所がないとなると、私みたいな人間だったら脳が3日で壊死する。(注:Air bnbのオフィスが悪いとか言って否定しているのではありません)
ちなみに妄想膨らむ「空間」は、私にとってはオシャレな物理空間よりも、見ていて脳内空間でアイデアが湧いてくるような図録とか、とにかく仕事とは無関係の分野の本の中に入っていくことだったりする。だから、マーケティングの部署だからって、最新のマーケティング手法の本なんて置いてくれなくていい。
「QUIET 内向型人間の時代」に書いてあったように、内向型の人の感覚は日常の場であまり尊重されないし、理解もされない。四六時中「協調性」を求められれば、これまでは郷にいれば剛に従えで無意識に耐えてきたけど、本当はしんどいシーンは結構ある。解決策を提案するという形でもっと声をあげてみるのもアリかな、と最近は思っている。
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