見積書を完全無視するクライアント

個人で仕事をしている先輩のような人から、「付き合いきれないクライアントには、正当だけど相手が考えているよりもはるかに高い見積を送ると、めでたく断られる」と教えてもらったことがある。

さっそく実践してみた。すると、見事に成功した。

プライベートでは長いお付き合いの方(社長)だったので、その方の会社の社員の方からのさまざまな問い合わせにも一年ほど無償でお答えしていたけれど、問い合わせの内容が、

・Zipファイルを開けない
・PDFを印刷できない
・エクセルを開けない
・ダウンロードしたファイルがどこに保存されているのかわからない

など「まずはパソコン教室に行って聞いてください」と言わんばかりの質問が混じりはじめ、その状況を社長に説明しようにも、社長自身のITリテラシーがそもそも低すぎて、いろんなことを説明するためのメールを書くのに毎回最低でも2時間以上を要するようになったため、お問い合わせに答えることは、私の時間を奪う行為であり、「保守・サポート」という仕事として発注いただかないとこれ以上の対応は無理だと伝えたところ、理解する様子がまったくない。

しょうがないからこれまですべてのメールのやりとりを紙に印刷し、1通のメールにかかった時間を割り振って、普段、別のクライアントさんからのお仕事でいただいている報酬額から算出した時給ベースで見積書として提出したところ、ぱたりとメールが来なくなった。

いちおう、「私が提示している額は想定外だと思うので、交渉に応じます」と伝えた上で、「ご検討いただきますようお願いいたします」というメールを2回出したが、いずれも無視。あ、一度だけ、見積についてはスルーした状態で聞きたいことと言いたいことが書かれたメールが来たかな。

私が最後に送ったメールには、「このままお返事いただかなければ、今後一切のお問い合わせの対応をいたしません。社員の方から個別にお問い合わせいただいても、その旨を私からお伝えさせていただきます」と送っても、やっぱり無視…。

イエーーーーーイ!!!!!

私はこの状況を、実は心から歓迎している。やりとりがなくなってすでに二週間あまりが経つけれど、以前は2日に一回くらい来るメールの返信に、無駄に2時間以上費やしていたのにその必要がなくなり、しみじみ「よかった…」と感じている。その時間が、ついに自分のために使えるようになったのだから。

自分の時間を取り戻せたことに加え、そもそも嫌な相手からメールが届いているのを見た瞬間の、あのゾワゾワっとする独特な不快感を、もうこれ以上味わう必要がないことも実に嬉しい。

その人との長い付き合いはこれで終わりだろうけれど、ここまでこじれたら後悔も未練もまったくない。

私は日頃からお金のためだけには仕事していないので、これまで費やした時間の分の支払いがないことにも未練は一切ない。お金なんかより、時間の方が何倍も貴重だ。目的は、「問い合わせを止める」だったのだから作戦は大成功。それ以上に望むことなど何もない。

でも今後は、「高い見積」を武器として出さないでいいような相手と仕事をしようと思う。よかれと思って親切に対応するのが仇になるような相手はちゃんと見極めるべきだろう。イマドキのビジネスのあり方を一切知らず、情報はタダだと考え、長年殿様のようなマインドで業者に接してきた人間は、知り合いであっても要注意である。

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