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【演劇】【稽古の仕方改革 草の根プロジェクトの検証結果発信_No.3】「すそ野拡大」が演劇界にもたらす効果について

(1)「すそ野拡大」とは


『当プロジェクトからの成果発信_No.1』にて、稽古改革が果たされた場合、演劇界に「すそ野拡大」がもたらされると言及しました。当発信にて、改めて「すそ野拡大」がもたらす効果についてまとめたいと思います。

[すそ野拡大とは?]
辞書サイトなどで調べると、「ある活動や共同体などに参加する、新たな人口または若い人口を増やすこと」を意味する語とあります。

◇「すそ野拡大」がもたらされた時のメリットとしては、次のような事が挙げられます。
▼その業界に携わる人口が増える事で、業界全体が拡大・活性化する。
▼業界全体が拡大すると、競争原理が働き、より質の高い成果が見込める。
▼多くの人が携わる事で、改善点や矛盾点などがより発見されやすくなり、業界の改善が見込める(当然、改善に実際に着手する人材も増える)

◇では、すそ野拡大が果たされると、その業界には具体的にどのような効果がもたらされるのでしょうか? ある業界の好例を、2つ紹介したいと思います。

(2)日本サッカー界の「すそ野拡大」

◇1990年代序盤まで、日本のトップリーグは「日本サッカーリーグ」という、(例外はみられるものの、)基本的にはアマチュア・社会人リーグの組織しか存在しませんでした。この時点まで、日本は一度もFIFAワールドカップには出場していません。
▼1991-1992シーズンの観客動員総数は約88万人

◇1993年、10チーム体制で日本プロサッカーリーグ=Jリーグが創設。
▼初年度の観客動員総数は約320万人

◇1998年、前年までの予選を勝ち抜き、日本代表が初めてFIFAワールドカップに出場。この年、Jリーグ(J1)は18チーム体制に拡大。
▼観客動員総数は約360万人に拡大(J1)

◇ 2019年になると、J1=18チーム、J2=22チーム、J3=15チームという、アジア最大級のサッカーリーグに成長。
▼観客動員総数はJ1で約630万人、J1~J3全体だと約1000万人にまで拡大

(3)日本プロ野球界の「すそ野拡大」

[2004年のプロ野球球団縮小騒動以降]
◇2004年当時、赤字経営が続いていた近鉄がオリックスに合併を打診、それを発端としてプロ野球(以後NPB)の球団数を12→10球団に減少させる案が持ち上がる。つまり、業界を縮小しようとする動きが画策されます。

◇NPB選手会のストライキを始めとする働きかけがあり、球団数減は回避。

◇上記再編問題が引き金となり、各地で独立リーグが発足し、むしろプロ野球選手の受け皿は拡大(年俸の多寡の問題はあるものの)。
▼2022年時点で、独立リーグは7リーグ・29球団まで拡大

◇NPBから大リーグへ挑戦する選手も多いですが、NPBのレベルが低下しているという話はあまり聞かれません。むしろ、選手のNPB記録は最近になっても更新されています。

◇即ち現況は、プロ野球選手が活躍する場が多くなったことにより競争原理がはたらき、レベルの維持・向上が図られている状態だと思われます。

(4)演劇界に待望される「すそ野拡大」

◇以上、2つの業界の「すそ野拡大」の好例を紹介しました。日本サッカー界について言えば、言わずと知れた現在の盛況ぶりですが、30年前までは実に小規模な業界だったことがわかります。

◇ここで改めて、演劇界に視点を戻したいと思います。すでに想像されている読者の方も多いかとは思いますが、演劇界に「すそ野拡大」がもたらされると、次のようなメリットが期待できます。
▼創る側の演劇人口が拡大する事で、競争原理が働き、より質の高い芝居を創る環境が醸成される。
▼より多くのお客さんが演劇を観に来ていただくようになる。
▼業界に存在する様々な矛盾や問題点などを、より適時・適確に発見し、解決しやすくなる(結果として、創る側の演劇人口やお客さんがより増加しやすくなるという好循環が生まれる)

◇しかしながら現状に立ち返ると、演劇の稽古の仕方は(実は)ごく限られた方しか対応できないもの、と言わざるを得ません。この現況はとりもなおさず、演劇界の「すそ野拡大」が見込みにくい事を残念ながら意味します。

◇業界の成長・発展という意味でも、稽古の仕方改革はとても必要だと強く思うところであります。

※(2)・(3)の情報は、Wikipediaなどにて調査しました。

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